藤井聡太王位へ豊島将之九段が挑戦する、お~いお茶杯第63期王位戦七番勝負(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)の第4局が8月24・25日(水・木)に徳島県徳島市の「渭水苑」で行われました。結果は95手で藤井王位が勝利し、七番勝負の成績を3勝1敗として、王位防衛まであと1勝としました。
■角換わりシリーズ
本局は藤井王位の先手で角換わりに進みます。今期の王位戦はここまで全局角換わりのシリーズとなっています。角換わりといっても色々ありますが、本局の序盤は前例が多そうな最新型の進行でした。
ところが39手目に藤井王位が玉を真っ直ぐ引いて前例が無くなりました。角換わりではありがちな、最善のタイミングでの仕掛けを実現するための手待ちの一環と言えそうで、藤井王位の用意の作戦であると予想されます。その後は両者が玉の位置を調整して間合いを図ったところで藤井王位から銀をぶつけていって戦いが始まりました。銀交換となり、藤井王位は三段目に玉を押し出して、中段玉の形で待ちます。対して豊島九段は持ち駒の角を手放してこの玉上がりを咎めに行きました。形勢は何とも言えませんが、この辺り藤井王位はやや指しにくさを感じていたようです。
■驚愕の銀捨ての封じ手
じりじりした展開になると予想されていた封じ手の局面、豊島九段の封じ手は先手の歩の頭に持ち駒の銀を打つという驚きの一着でした。歩で取られて一時的に銀損となりますが、その代償に8筋の突破を見ています。豊島九段は角を手放したわりには戦果が得られていないと考えていたようで、駒損を覚悟で局面を一気に動かそうという意図の封じ手でした。 藤井王位は8筋の突破は許すものの自陣に攻防の角を設置し、駒得をキープしながら豊島九段の攻めを受け流しにいきます。
■銀捨ての決め手
豊島九段は3筋の歩を突いて、先手玉の挟撃を図りましたが、藤井王位はこの歩突きを逆用して、後手のもう一枚の銀を取ることにも成功しました。最後はこの銀を一枚捨てて後手玉に詰めろを掛ける順が決め手となりました。先手玉も危ない形ですが詰まないことをきっちり見切っており、95手で豊島九段の投了、藤井王位の勝利となりました。
快勝の藤井王位が防衛へあと一勝と迫りました。第5局は9月5・6日(月・火)に静岡県牧之原市の「平田寺」で行われます。このまま藤井王位が一気に防衛を決めるか、豊島九段の逆襲が成るか、第5局にも注目です。
相崎修司(将棋情報局)