「ゴミを強力に吸い取る掃除機は欲しいけど、音が大きいのは困る……」という人に朗報です。シャープの新しいコードレススティック掃除機「RACTIVE Air POWER(ラクティブエアパワー)EC-SR8」は、独自の構造によって実感音を従来モデル比で約36%も減らしたという新モデル。実際に触ったところ、強モードでも音が小さくて驚きました。メディア向けセミナーからお届けします。
パワーと音の小ささを両立
新モデルのEC-SR8(以下、SR8)は9月8日発売。スティック時の本体サイズは221×267×1,030mm、標準の重さは1.7kg、集じん容量は0.3Lです。掃除モードは強・自動・標準の3通りで、最長運転時間は強が約15分、自動が約35分、標準が約45分(標準吸いみ口を使わない場合は90分)となりまう。価格はオープン、推定市場価格は99,000円前後です。
SR8は「強モード時でも低騒音」という点が特徴です。シャープの調査によると、在宅の時間が長くなったことで掃除の運転音が気になるという人が増えているそうです。そうした社会的背景が、今回の新モデルの開発につながりました。
セミナー会場で従来モデルと新モデルの運転音を聞き比べましたが、新新モデルは思った以上に低騒音でした。
低騒音を実現したポイントは構造の改良です。本体のモーター音、排気音、駆動音を抑える「ノイズリダクション設計」を開発し、人間が実際に感じる音を従来モデルと比べて36%ほど低減しました。
36%減と言われてもピンときませんが、従来モデル(強モード)の場合、掃除をしていると「テレビの音が聞こえない」と家族に言われそうな音の大きさです。一方のSR8は、掃除をしながら会話ができる程度の感覚でした。
ここで、低騒音を実現した仕組みを詳しく見ていきましょう。
まずはモーター部。モーター音と排気音を低減させる工夫を凝らしています。モーター部には、円錐状のカバーでモーターを覆った「ファンネルサイレンサー」を搭載。モーターをカバーで覆うことでモーター音を遮音しています。さらに、モーター振動の吸収材をカバー内に配置し、音が出口の方向へ出ていかないようにする高密度吸音材も採用しています。
ゴミを吸うときに気になる排気音も、ファンネル形状で低減しました。モーター部から出てきた風の流れをファンネル形状のカバーで集約し、格子状のパーツを通して風の乱れを整えてから吸音材へと流す仕組みです。
これらの工夫によって、しっかり吸った空気をしっかり出せるので、吸引力をそのままに低騒音を実現したというわけです。また、モーター音の質にも注目。音の大きさを抑えるだけでなく、不快に感じる甲高い音を減らしています。
ヘッドの振動を抑制。自走感はゆるやか
ヘッド部分にも工夫を盛り込んでいます。ヘッド部分は、ブラシやモーターの振動、床と吸い込み口の振動など、音が出やすい部分です。SR8では、ヘッド部分のおもな震動源に防振材を配置した「ダンピングコントロール」を採用。こうしてヘッド部分から出る動作音も低減しました。
動作音は小さくなりましたが、従来モデルと比較するとSR8のヘッドは自走感がゆるやか。従来モデルのほうがスイスイと前に進む感覚です。これは、ブラシ形状の違いからくるもの。
「従来モデルでは、ブラシ部分にゴム製のブレードを配置していました。ブレードによって床との摩擦が生まれ、推進力が出て自走感がありました。反面、このブレードがあることで駆動音が出てしまいます。SR8は低騒音を特徴にしたモデルなので、今回はブレードの搭載を見送り、そのぶん自走感はゆるやかになりました」(シャープ 国内スモールアプライアンス事業部 清潔企画開発部 半谷知久氏)
ヘッド部分をよく見ると、片方の端のキワまでブラシが配置されていることに気がつきます。これ、壁際のゴミをしっかり吸い取るための工夫なんです。その名も「端までブラシ」。
片方の端までブラシを配置することで、ブラシの幅は約17%アップ。壁際ってゴミが残りやすい部分なので、掃除機(ブラシ)の向きを変えたりながら何度も同じ場所を掃除していましたよね。
SR8の「端までブラシ」は、端に配置されたブラシがゴミをかき出しながら吸い込むので、壁際のゴミもしっかり取れるとのこと。実際に試したところ、一方向に動かすだけで端のゴミを吸い取れました。しかも強モードではなく自動モードでこのパワー。
ヘッドの四方を厚く覆って吸い込む従来モデルと比べて、新モデルのSR8はヘッドの一方向(端までブラシの側)が薄くなっているため、最初はゴミが逃げてしまわないか疑問でした。実際に体験してみると、壁際の掃除力が大きく向上していることを実感します。ヘッドに横長のパーツを二重に配置して、真空度を高めることでゴミをしっかり吸い込む構造になっているそうです。
「端までブラシでゴミをかき上げる点が重要なんです。ゴミをかき上げないと、壁際のゴミを吸い込むために高い圧力をかけなくてはいけないのですが、かき上げることでゴミが浮き上がり、しっかり取れます」(半谷氏)
ハンディ切り替えのイライラ……「パイプが倒れる」を解消
ラクティブエアシリーズは、パイプを外すとハンディクリーナーとしても使える掃除機です。床を掃除したあとはソファなど、家の中を掃除していてハンディクリーナーと床掃除を切り替えるシーンは少なくありません。そこで地味にイライラするのが、スティック型からハンディ型にするときパイプが倒れることなんですよね。
今回の新モデルでは、ヘッド上部にパイプを装着した状態でも、ヘッドからパイプにかけての部分が自立するようになりました。スティック形状からパイプを外してハンディ形状にしたとき、残されたパイプからヘッドの部分が倒れません。着脱がサッとできて、これは便利。
もともとシャープのラクティブエアシリーズは、ヘッド側の短いパイプ部分が自立する仕組みでした。すき間を掃除するときにヘッドを外したあと(ヘッドを足で軽く踏みながら外せます)、ヘッドを再び装着するときも楽にパイプを取り付けられるしかけです。今回は、その自立する範囲を長いパイプを付けた状態に広げました。
この仕組みなら、パイプを付け外しするときも屈まなくていいのでスムーズですね。付属のアタッチメントは、「ハンディノズル」と「すき間ノズル」、ふとんやソファを掃除するときに使う「コンパクトふとん掃除ヘッド」、エアコンなど高いところの掃除に便利な「はたきノズル」です。
バッテリーパックは着脱式で充電器が同梱されています。目立たない場所でバッテリーパックを充電しておけますが着脱の一手間があるため、掃除機本体のスタンドで充電するタイプとどちらが使いやすいか、ここは評価が分かれるところでしょう。
掃除機本体では、掃除可能な残り時間がスイッチ部に表示されるので、それにあわせて掃除する順番や時間を変えるなど、使い勝手を高めている部分です。本体のボタンは3つで操作はシンプル。
SR8のほか、下位モデルとしてHR8とAR8も同時発売。価格はオープン、推定市場価格はHR8が85,000円前後、AR8が73,000円前後です。
ノイズリダクション設計、ワンタッチゴミ捨て「そこポイ」、充電の残時間表示は非搭載です。本体内部に髪の毛が絡みにくくした「からみにく~いサイクロン」もHR8とAR8は持っておらず、最上位のSR8のみ搭載しています。アタッチメントのコンパクトふとん掃除ブラシ、はたきノズルもSR8のみ付属です。
HR8は軽さとパワーを両立させたバランスモデル。運転時間は強モードで約14分、最長約90分です。AR8は本体の重さが1.2kgと、軽さを重視する人向き。運転時間は強モードで約11分、最長約60分となります。
掃除機の音が小さいと、なんとなくパワーが弱いようなイメージがありますが、SR8はしっかりとゴミを吸い取り、ストレスなく使えそうな第一印象。テレワークで家族が家にいる時間が多い、集合住宅に住んでいて生活音が気になるという人は、ぜひチェックしてみてください。