日本Nrealは8月24日、発売中のARグラス「Nreal Air」とiPhoneを接続するための新製品「Nreal Adapter」を発表しました。iPhoneのアクセサリとして販売されているHDMI変換アダプタ「Lightning - Digital AVアダプタ」(アップルストア価格7,980円)と一緒に使用することで、iPhoneからNreal Airへの映像出力が可能になります。
メーカー希望小売価格は8,980円で、9月末に発売予定。あわせて9月中には、現在Android OS向けに展開されている専用アプリケーション「Nebla」のMac OS版がリリースされることも明らかにされました。
一見サングラスなARグラス、ついにiPhoneにも対応
「Nreal Air」は一見すると普通のサングラスに見えるほど、軽量、コンパクトなARグラスです。ソニーのマイクロLEDを採用し、USB Type-Cケーブルで映像出力可能なデバイスと接続すると、4メートル先の約130インチの高精細なARスクリーンが広がります。
さらに一部対応するハイエンドのAndroidスマートフォンでは、専用アプリの「Nebla」が利用可能。ミラーリング出力モード「Air Casting」のほか、6メートル先に最大201インチの大画面表示や、さまざまなARアプリケーションが使える「MR Space」の2モードが利用できます。
「MR Space」では、目の前に広がるインタラクティブなメニューから、スマートフォンをポインター代わりにして、ARアプリや3Dコンテンツ、ゲーム、動画再生などをマルチスクリーンで楽しめます。
9月中にリリースされるMac OS版の「Nebla」では、このうちマルチスクリーン機能が利用できるようになるとのこと。MacBookと接続すれば、目の前に最大3つのARスクリーンが広がり、スクリーン間でウィンドウをドラッグ移動できるなど、効率的な作業が可能になるとしています。
「Nreal Adapter」は高さ61.4×幅43.4×厚さ23.3mm、重さ74gと手のひらに収まるコンパクトなアダプターで、充電および「Nreal Air」と接続するためのUSB Type-C端子のほか、HDMIオスコネクタを備えています。
このコネクタに「Lightning - Digital AVアダプタ」を接続し、iPhoneとつなぐしくみ。付属のHDMIオス→メス変換アダプタを使用すればNintendo Switchなど、iPhoneのほかにもHDMIケーブルで出力可能なデバイスから、最大1080p、60fpsの映像をミラーリング出力できます。
対応のAndroidスマートフォンと直接接続する場合は、スマートフォンから「Nreal Air」へ電力が供給されますが、「Nreal Adapter」を使用する場合はアダプターから電力を供給するしくみ。充電式で約3時間(ストリーミング動画再生時)の連続駆動が可能となっています。
NeblaのiPhone提供は未定だが「努力していく」
「Nebla」対応のAndroidスマートフォンと比べると、「Nreal Adapter」を使った映像出力はミラーリングのみと、できることが限定的ですが、Nreal副社長で日本Nreal代表取締役のJoshua Yeo氏によれば、iPhoneへの対応はユーザーからの強いニーズに応えたものとのこと。「Nreal Air」に寄せられた声で「ワイヤレス対応」を抑え、最もリクエストが多かったのが「iPhone対応」だったと言います。
日本で高いシェアを持つiPhoneユーザーに向け、「Nreal Airや(上位モデルの)NrealLightで、80%以上と最も多く使用されているのがミラーリング出力。iPhoneでミラーリング出力ができるようになれば、多くのニーズを満たせると考えています」とYeo氏。
iPhoneへの「Nebla」提供は未定としながらも、「努力はしていく」とも。また「Nebla」で利用できるARアプリの開発にも注力していて、米国に次いで多いという日本の開発者ともさまざまなコミュニケーションを行っているそうです。
開発が進められているアプリケーションは、コンテンツ視聴やビジネス効率化といったものから、観光や教育、耳の不自由な人向けの字幕表示まで多岐にわたっていますが、「特に日本ではARを用いたガイドなど、観光分野での活用に期待しています」とYeo氏。
「Nreal Air」は現在、家電量販店や大手通販サイトのほか、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3キャリアでも取り扱われています。マーケティングマネージャーの下高原沙也佳氏によれば、すでにこうしたキャリアを通じて、観光地での体験イベントや美術館、博物館のARガイドなど、利用も広がってきているとのこと。
「日本には豊富な観光資源があり、コロナが落ち着けばまた賑わいが戻る。そうなったときに密にならないよう距離をとって観光を楽しんでもらうためにも、ARを用いたバーチャルなナビゲーションは役立つはず」とYeo氏はいいます。
「Nreal Air」の販売はこれまで、開発者の多い日本で先行して行われてきましたが、今後は米国や中国へも展開されます。すでに完全ロボット化した工場を用意するなど量産体制は整えられていて、iPhoneへの対応とあわせて今後ユーザーが一気に拡大するのは間違いありません。そうなればコストダウンが進み、ARグラスがさらに身近になる可能性もあります。
「よくARの時代はいつ来るのかと聞かれるのですが、それは想像よりも早く来ると思います」というYeo氏の言葉も、伊達ではないかもしれません。