50代になると老後のお金が気になり出し、60代に入ると老後資金の問題が現実味を帯びて迫ってきます。特に「おひとりさま」の場合は、老後に頼るべき相手がいないことから、介護になったときに施設に入れるように、少しでも多く貯金をしておこうと考えるのではないでしょうか。
そこで、50代・60代の単身者の貯蓄額や金融商品の種類など、老後の準備~入り口世代の「おひとりさま」の貯蓄事情を紐解いてみたいと思います。
■50代・60代の貯蓄額
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(令和3年)」から、50代・60代単身世帯の平均貯蓄額を見てみます。
50代の貯蓄額の平均は1067万円、中央値は130万円となっています。
60代の貯蓄額の平均は1860万円、中央値は460万円となっています。
年齢が上がっている分、60代の方が平均値も中央値も増えています。平均は、一部の高所得者の貯蓄額に引き上げられて高めに出るため、貯蓄額が低い世帯から順に並べてちょうど真ん中にくる世帯の貯蓄額を表した中央値の方が実態に近いでしょう。
これについては貯蓄額を段階にして表した次のグラフを見るとわかりやすいと思います。
50代は金融資産を保有していない世帯が35.7%と非常に割合が高くなっており、それ以外の階層では突出して高いところはありません。平均の1067万円が位置する1000万円~1500万円未満は5.3%なので、平均を見てもほとんど参考にならないことがわかるでしょう。
60代の場合は、金融資産を保有していない世帯が28.8%と一番多くなっていますが、3000万円以上ある世帯も17.7%と2番目に割合が高くなっており、極端な結果となっています。50代と比べて、平均値も中央値も高くなっているのは、退職金が入る影響があると思われます。
金融資産を保有していない世帯の割合が圧倒的なのは、50代・60代に限らず、単身世帯のどの年代でも高い割合になっています。
■保有している金融商品の種類
次に、どんな方法で貯蓄をしているのか、保有している金融商品の種類を見てみたいと思います。
50代も60代の預貯金が大きく占めますが、60代の方が預貯金の割合が少なくなっています。代わりに60代は株式の比率が高くなっているのが特徴です。一般的に資産が多いほど投資に積極的であることから、保有している金融資産の平均額が60代の方が多いことで、預貯金の割合が減り、株式の割合が増えていると考えることができます。
■手取り収入からどのくらい貯蓄しているか
貯蓄がある50代・60代の単身者は手取り収入からどのくらい貯蓄に回しているのか気になるところです。こちらも同調査から、年間の手取り収入に対しての貯蓄割合をグラフにしてみました。
割合が一番多かったのが、「貯蓄しなかった」で、50代で43%、60代で50.4%になります。この割合は金融資産を保有している世帯における割合になります。2番目に多いのが「10~15%未満」で、50代で15.9%、60代で12.6%になります。このあたりが現実的な割合ではないでしょうか。
たとえば、年間手取り収入が300万円であれば、年間の貯蓄額は30万円~45万円になります。10年間、この割合で続ければ300万円~450万円になります。50代・60代の現役世代であれば、これからまとまった老後資金を作れる可能性は充分にあります。
■おひとりさまの老後の生活費
総務省「家計調査 家計収支編2021年」によると、65歳以上における単身者の1カ月の生活費(消費支出)は13万7210円となっています。
これに対し、老後の主たる収入となる公的年金の平均年金月額を見てみると、厚生年金受給者は14万6,145円、国民年金受給者は5万6,358円となっています。厚生年金であれば、余裕はないもののマイナスにはなりません。国民年金だけの場合は、およそ8万円不足することになります。これはあくまでも平均値であり、受給額は人それぞれですが、一人暮らしの生活費は参考になるのではないでしょうか。
■まとめ
50代の平均貯蓄額は1067万円でしたが、貯蓄ゼロの人が35.7%いるため、中央値が130万円となり、50代の貯蓄額の低さが見て取れました。60代では、平均貯蓄額が1860万円、中央値が460万円と増えましたが、貯蓄ゼロの人も28.8%と依然として多くなっています。一方で60代では3000万円以上貯蓄がある人の割合も目立っており、二極化した状態となっています。
おひとりさまの老後を考えたとき、介護問題がのしかかってきますが、これは家族を持っていても問題は変わらないと思います。老後資金があれば選択肢が増えることは間違いありません。50代・60代の今からでも老後資金は作れます。年金生活に入る前に計画的に貯めて老後の安心につなげましょう。