絵を見たとき、画家の姿を知らなくても「この絵はこんな人が描いているんだろうな」などと、なんとなく想像することはありませんか?

いい意味でこうした想像を裏切った存在として、画家のあおいけいさん(@Abspko)の“画風と作者のギャップ”が注目を浴びています。

画風と作者のギャップ選手権あったらいい線いけると思うんよね(@Abspko)

  • (@Abspkoより引用)

まるで目の前にこの光景が広がっていると錯覚してしまいそうなほど、リアルでほのぼのとした2人の少年の絵。そして、その前に座って写真に映っているのが、赤い髪をしたクールな雰囲気の女性。この絵を見た人が想像するであろう「作者像」とは、かなりギャップがありますよね。

リプライや引用リツイートでは、「こんな美女が描いてたとは」「絵師様クールビューティーで更にビックリです!」など、「意外」というコメントが続出。

「ええ? なんで道路に座ってないのか疑問に思ってたけど、全て絵なの?! 凄すぎる……」「どこまで絵かわからんかったぞ、、、、」など、「全部写真かと思った」「絵に見えない」という人も多く、あおいさんの画力にも大きな注目が集まりました。

その結果、この投稿は8月20日時点で12.1万件もの「いいね」を獲得。ちなみにこの絵に登場している少年たちは、あおいさんの息子さんなんだそうです。

多くの人を「写真」だと錯覚させたこの絵には相当なこだわりが詰まっているはず。このツイートをした画家のあおいけいさんに投稿のきっかけや制作エピソードをうかがいました。

「画風と作者のギャップ」投稿者に聞いてみた

――あおいさんの見た目のクールさと、イラストのリアルでほのぼのとした雰囲気のギャップが激しいお写真ですね。投稿のきっかけがあれば教えてください。

千葉県千葉市に「ホキ美術館」という写実専門の美術館があり、この絵はホキ美術大賞展の2次審査(8月下旬)に出展する予定の絵です。そのため毎日加筆を行っており日々の進捗をSNSに載せていました。

この日はちょうど美容院に行って髪の色をガラッと変えたことと、よく「名前だけだと性別分からない」という意見をいただくので、絵と自分を一緒に撮って載せてみました。

――どこか懐かしい雰囲気のこちらの絵画、3年かけて制作されているとのこと。なぜここまで時間をかけて描かれているのですか?

もともと「ホキ美術館に展示していただきたい!」という夢があり、ホキの公募用に描き出した絵でした。描き始めの頃は公募は3年後(今年)でした。

途中個展が2回あり、それらの展示が近づくたび加筆して1度“完成”という扱いにしてきましたが、やはり時間がたつにつれ私の画力も上がり、修正部分が見つかるたび加筆して今に至ります。

――今回注目を浴びたツイートに登場した「時はゆるやかに」の全景。こうして見ると、ますます写真のようなリアルさが際立ちますね。

こちらは、この絵の加筆の様子。よく見ると、左のビフォーに比べ、右のアフターは描き込みがさらに細かくなり、より立体感が増しているのがわかります。

――制作時に心がけていることがあればお聞かせください。

世の中のリアル、目に見えるものから見えないものまである現実世界についてよく考えています。

絵画の世界に限らず、なぜ人は「美しい」と思ったり「汚い」と思ったりするのか、そこには感覚的で数学的な答えがあると思っています。それらを模索し絵に落とし込むことと、二次元の中に三次元空間の錯覚を生み出すという“二次元ハンデ”を楽しむことです。


「画風と作者のギャップ」のツイートがこれほど注目を集めたのも、作品に命が宿っているからこそ。ぜひともホキ美術館で「時はゆるやかに」が展示されている光景を見てみたいものですね。