RaaSによって、コストが下がり、CXは上がる
クラウドサービスと同様、RaaSにはコストとリスクに関するメリットがあると先に述べたが、メリットはこれだけにとどまらない。
これまでロボットのメンテナンスを行う場合、現場に人が出向いて対応する必要があった。しかし、RaaSであれば、プラットフォームを用いて、遠隔からデバッグやアップデートが行える。その結果、ベンダーの社員が客先に出向く頻度はグッと下がる。人が介在する作業が減るということは、コストの削減にも直結する。
さらに、遠隔による顧客対応は「CX(Customer Experience:カスタマーエクスペリエンス)向上にもつながります」と森氏は語る。遠隔でメンテナンス作業が可能であれば、問題解決のスピードが上がり、顧客側もベンダーに対応する手間を省くことができる。
遠隔操作は、サービスの改修やアップデートにも大きく貢献している。森氏によると、同社は四半期に1度サービスのアップデートを行っているそうだが、ソフトウェアだからこそなせる業だろう。
なお、クラウドサービスは利用期間が長くなるとコストメリットがなくなってくるという話もある。かといって、自社でロボットシステムを構築した場合、ロボットのメンテナンスまでできるだろうか。森氏に尋ねたところ、「ロボティクスのエンジニアは少ないため、採用が難しいです」と話す。加えて、IT機器以上にロボットのメンテナンスは煩雑そうだ。となると、最新の技術を安全な状態で利用可能という点でも、RaaSはITのクラウドサービス以上にメリットがありそうだ。
ここまでRaaSのメリットばかり並べてきたが、敢えてRaaSにデメリットはないのか、森氏に聞いてみた。「ベンダー側からすると、RaaSはお客様に使えないと思われるとすぐに契約を解除されてしまうという怖さはあります。ですが、RaaSはお客様からフィードバックが得られるチャンスを持っており、それに応えられる技術力を含めた体制があれば、製品が改善されると考えています」と話す。
同社のRaaSで提供しているロボットは、同社がデザインを行って、信頼関係のあるパートナーに製作してもらっているそうだ。
目指すは海外進出、エンジニアによるソリューション開発
最後に、森氏に今後の展望について聞いた。同氏は、「やりたいことをすべて一気にやろうとするとうまくいきません」と前置きした上で、まずは、「倉庫物流のソリューションを拡充していきたいです」と述べた。例えば、現場に求められていながらも、普及していないソリューションを開発することで、物流現場の省人化をしていきたいという。
「他の企業と横の連携を図ることで、倉庫の入りから出までの一連の流れを自動化することができるはずです」(森氏)
また、ソリューションの拡充を図りながら日本市場で足場を固めた後は、海外進出も視野に入れているそうだ。「もともと、製造業でロボットアームが開発されて注目を集めるなど、ロボット市場において日本のエンジニア力のプレゼンスは大きいです。ハードウェアが絡んでくるジャンルは日本がこれまで長い間かけて育んできたお家芸でもあります。RaaSであれば、日本の企業が国としての強みを出すことができます」と、森氏は力強く語ってくれた。
海外は物流現場の生産性が低いほか、デベロッパーが多く、コミュニティもあることから、商機は大いにあるそうだ。
さらには、エンジニアの人たちに、「rapyuta.io」を活用して優れたソリューションを作ってもらうことを期待しているという。ロボットエンジニアは少ないと前述したが、森氏は「われわれのプラットフォームを使ってもらうことで、Web系のエンジニアの方たちもロボットソリューションを開発できるようにしていきたいです。Androidの世界をロボットの世界に作りたいと思っています」と、目を輝かせていた。
日本はさまざまな調査で、「生産性が低い」「デジタル競争力が先進国で下位」など、ネガティブな結果が出ており、国を挙げて「どうにかしなければ」という機運が高まっている。物流現場の課題解決にとどまらず、日本の国力の挽回という点からも、ラピュタロボティクスの健闘を期待したい。