そろそろ夏休みも終盤。まだ自由研究のテーマが決まらず、焦っているキッズたち(あるいは親御さんたち)もいるのではないだろうか。そんな皆さんには、自動車技術会が開催した体験学習型イベント「キッズエンジニア」の内容が参考になるかも? マツダ、スバル、ホンダのブースを取材したので、レポートしたい。

  • 「キッズエンジニア2022」の様子

    公益社団法人 自動車技術会が主催する体験型学習イベント「キッズエンジニア」の様子

マツダが「ロードスター」の音の秘密を大公開!

マツダブースのカリキュラムは「自分だけの『マフラー』をつくって音のひみつを探ってみよう!」。ダンボールやストローなどの身近な材料を使ってクルマのマフラーを作り、音の測定や分析、解析をするという内容だ。

  • 「キッズエンジニア2022」の様子

    子供たちが作ったマフラーのサンプル。この中にグラスウールの代わりにティッシュペーパーを詰め込んで、詰める前と後で音がどう変化するかを体験する

マツダ担当者による解説は以下の通りだ。

「構造としては非常にシンプルなんですが、普段の経験や子供たちが勉強していることが実際のクルマ作りにも使われていることを知ってもらい、もの作りをできるだけ身近に感じてもらいたいんです。そのために、身近な現象と本格的なもの作りを紐づけることをコンセプトとしました。材料も、どこにでもあるものをチョイスしています」

例えば、布団の中で叫ぶと音が小さくなったり、こもって聞こえたり(吸音)する。ペットボトルの口に息を吹きかけると「ボーッ」と音が鳴る(共鳴)。こんな経験は誰にでもあるだろう。こうした身近にある現象も、クルマ作りと関係がある。マツダのプログラムは材料こそシンプルだが、内容は濃密そのものだ。

  • 「キッズエンジニア2022」の様子

    マツダブースに展示された「ロードスター」(ND=現行型)のマフラー。子供たちが作るマフラーも、音の原理は変わらないという

「ロードスターではマフラーの音を小さくするのに吸音、共鳴、拡張という原理を実際に使っています。今回のマフラー作りでも、その3つの原理を使ってロードスターと同じ原理のマフラーを子供たちに作ってもらっています」(マツダ担当者)

  • 「キッズエンジニア2022」の様子

    説明書を見ながらオリジナルマフラーを組み上げていく参加者

箱の中を隔てる穴の空いた仕切りが「拡張」、ペットボトルが「共鳴室」の役割を果たす。グラスウール代わりのティッシュペーパーは「吸音材」だ。

  • 「キッズエンジニア2022」の様子

    マフラーを組み上げた後は、実際の開発現場でも使われる器具を使って音を検証した

プログラムの内容自体は自宅でも再現可能になっているとのこと。休み明けの学校では、クルマのマフラーを題材にした自由研究の発表が相次ぐかもしれない。

スバルが二駆と四駆の違いをわかりやすく解説

スバルブースでは、同社の特長である四輪駆動と二輪駆動の違いを学ぶ「二駆と四駆のちがいって何? モケイを作って走らせよう!」を実施していた。

「今回の狙いのひとつは、スバルの特長である四輪駆動の理解を深めてもらうこと。もうひとつはクルマづくりの達成感を体感してもらうことで、少し複雑な模型を完成させてもらいます。作った模型を走らせてみて、そこでどんなことが起こっているのかを自分の目で捉えてもらうところが実験の最も重要なところです。起きている現象をどう捉えて、そこから何を導き出すのか。エンジニアとしての基本的な考え方を学んでもらい、四駆に限らず、何らかの現象を基に自分で考える力を育ててもらいたいと思っています」(スバル担当者)

  • 「キッズエンジニア2022」の様子

    子供たちが完成させた模型。モーターを駆動させると前輪だけが回る二駆仕様だが、プーリー(滑車)に輪ゴムを装着すると四駆に切り替わる

今回のプログラムでは、簡単に二駆と四駆を切り替えられる模型を製作した。駆動形態をブラックボックス化せず、それぞれの走りの違いを考えてもらう仕組みだ。

「四輪駆動は二輪駆動に比べて倍の駆動力が出せます。まずは2倍の力を出せるということを理解してもらってから、どうして階段が登れるのかなどを見ながら仕組みを勉強してもらいます。これは大人でも目からウロコ的なところがありますね」(スバル担当者)

  • 「キッズエンジニア2022」の様子

    製作した模型をコースで走らせて、走りの違いを実験する子供たち

製作した模型を坂道や階段で走らせる子供たち。自分で作ったという愛着があるからか、どの顔も真剣そのものだ。作った模型は子供たちに持ち帰ってもらい、家庭での学習に役立ててもらいたいとのことだった。

ガソリンじゃなくてもクルマは動く?

ホンダは「水素でクルマを走らせよう」というプログラムを実施。ブースには異なる燃料電池スタックを組み込んだ小さなクルマのキット2台を用意した。これに水素を送り込み、燃料電池で電気を起こし、モーターを駆動させて走らせるという少々難解な内容だ。

ホンダ担当者によれば、「今回は小学校6年生までを対象にしていることもあり、キットの中身はすごく複雑」なのだという。

  • 「キッズエンジニア2022」の様子

    キットはホンダが開発した燃料電池自動車(FCV=水素で走るクルマ)の「クラリティ」と似た構造。搭載する燃料電池の容量が異なっており、これにより走行時にどのような違いが出るかも検証できるようになっていた

FCVを取り上げたホンダの狙いは?

「今後は選択肢として水素自動車も増えていくので、ガソリンじゃなくてもクルマは走るというところに気づいてもらいたいというのがひとつです。ただ、今回は小学生全般が対象なので、低学年の子がその仕組みを理解するのは難しいと思います。なので、まずは自分が手を触れたものが動くことを体感してもらい、それが楽しいということだけを持ち帰ってもらえればいいと考えています。まずは興味を持ってもらうことが大事ですから」(ホンダ担当者)

  • 「キッズエンジニア2022」の様子

    燃料となる水素はチューブを介し、注射器のような器具とクルマをつないで送り込む仕組み

  • 「キッズエンジニア2022」の様子

    それぞれのクルマを同時に走らせると、容量の大きい燃料電池を積んだクルマの方がより速く遠くまで走っていった

なおホンダは、オンライン(録画)プログラムにも2本の動画を公開している。そのうち1本はコイルで電気を起こして物を動かすというもので、「自由研究にもすぐに使える内容になっている」とのこと。こちらは8月31日まで公開されているので、もしまだ自由研究が終わっていないという小学生は参考にしてみてもいいかもしれない。