ビジネスシーンや日常生活の中でよく見聞きする「ありがとうございました」という言葉。しかし目上の人に使えるのかや、使用時の注意点まで理解している人は、意外と少ないかもしれません。

本記事では「ありがとうございました」の意味やシーン別の使い方と例文を紹介。目上の人に使えるかや漢字表記の「有難う御座いました」は正しいか、由来や言い換え、「ありがとうございます」との違いもまとめました。

「ありがとうございました」の意味とは

  • 「ありがとうございました」は「ありがとうございます」の過去形です

    「ありがとうございました」は「ありがとうございます」の過去形です

私たちが普段何気なく使っている「ありがとうございました」という言葉について、まずは基本的な意味をご説明します。

「ありがとうございました」は「ありがとうございます」の過去形です。つまり過去の出来事、完了した出来事に対して、感謝の気持ちや思いを伝える言葉です。

なおそもそもの「ありがとうございます」という言葉は、2つの要素で構成されています。形容詞である「ありがたい」の連用形「ありがとう」と、補助動詞「ある」の丁寧語の「ございます」で成り立っています。

漢字表記の「有難う御座いました」は正しい?

「ありがとう」の部分を「有(り)難う」と漢字表記することは誤りではありませんが、現代ではあまり一般的ではないでしょう。読めない人がいる恐れもあります。

また「ございました」は「(して)ください」「(して)いただく」などと同様に補助動詞であるため、「御座いました」と漢字にするのではなく、ひらがな表記がいいとされています。

よって、一般的には「ありがとうございました」と全てひらがなで表記するのが無難だと言えるでしょう。

「ありがとうございました」の由来

  • 「ありがとうございました」の由来を見ていきましょう

    「ありがとうございました」の由来を見ていきましょう

「ありがとうございました」を構成する「ありがとう」の漢字表記が「有(り)難う」であることからもわかるように、このもともとの形は「有(り)難い」であるといわれています。

「有(り)難い」とは「有ることが難しい」、要するに「めったにないこと」を表しているのです。

そこから「人の好意などに対して、めったにないことであると感謝する」というニュアンスが生まれ、現在の意味になりました。

なお「有(り)難い」を感謝の意味で使う例は、室町時代には既にありましたが、当時は「かたじけない」の方がより一般的で、江戸時代前期ごろから逆転したようです。

「ありがとうございました」と「ありがとうございます」との違い

  • 「ありがとうございました」と「ありがとうございます」は時制が異なります

    「ありがとうございました」と「ありがとうございます」は時制が異なります

続いて「ありがとうございました」と「ありがとうございます」の2つの言葉の違いについて解説します。

違いは語尾が過去形か現在形か

「ありがとうございました」と「ありがとうございます」の違いは、語尾の時制の違いによるものです。

「ありがとうございました」は過去や完了した出来事に対して感謝の気持ちを伝えることに使い、「ありがとうございます」は現在進行中の出来事に対して使われることが多いです。

現在進行中の出来事に対して「ありがとうございました」と言ってしまうと、違和感があるため注意しましょう。

「ありがとうございました」の使い方と例文

  • 例文を参考に「ありがとうございました」の使い方を学びましょう

    例文を参考に「ありがとうございました」の使い方を学びましょう

「ありがとうございました」は、どのような使い方をするのでしょうか。ここでは2つのシーンに分けてそれぞれ例文をご紹介します。

ビジネスシーンでの使い方

【取引先や上司とのミーティング後】
「本日はミーティングにご出席いただき、ありがとうございました」

この場面では、ミーティングが既に終了しているため「ありがとうございました」を使うことができます。過去の出来事について感謝の気持ちを表します。

しかし、ミーティング開始前やミーティングの途中で「ありがとうございました」を使用すると違和感を与えてしまうため、注意が必要です。

大勢の人が集まるイベントなどでの使い方

【卒業式や退職時などの挨拶にて】
「5年間、本当にありがとうございました」

この例文のように、物事が完了した場面でも「ありがとうございました」を使用できます。ただし勤めていた職場や学校での人間関係が終わるというニュアンスも少なからずあるため、「今後一切の関わりがなくなる」ととらえられてしまう可能性もあります。

もし終了や別れのイメージを与えたくなければ、「今後とも末永くよろしくお願いいたします」などの言葉を付け加えることで、この先も関係を続けていきたいという気持ちを伝えられるでしょう。

「ありがとうございました」の使い方の注意点

「ありがとうございました」という言葉を使うときは、使用する場面や状況、地域や環境などに気を付けましょう。

なぜなら、「感謝の気持ちや関係性に終止符を打っている」「今はもう感謝していない」と受け取られる可能性があるからです。場合によっては終わりや別れのニュアンスで伝わるかもしれないことを念頭に置いておきましょう。

不安なときは「(いつも)ありがとうございます」と現在形で表すといいでしょう。

「ありがとうございました」は敬語表現?

  • 「ありがとうございました」は目上の人に使えるのでしょうか?|

    「ありがとうございました」は目上の人に使えるのでしょうか?

「ありがとうございました」の「ございました」は丁寧語にあたるため、「ありがとうございました」も丁寧語となり、尊敬語ではありません。

丁寧語も敬語の一種であるため、上司や取引先などの目上の人に対して、感謝の気持ちや思いを伝える表現として使うことができます。

しかしながらより敬意を強めた表現にしたい場合は、「ありがとうございました」の前に「誠に」などと付け加えるといいでしょう。さらに丁寧な感謝の意を伝えられる表現になります。

「ありがとうございました」の類語・言い換え表現

  • 言い換え表現も併せてマスターしましょう

    言い換え表現も併せてマスターしましょう

よく使われている「ありがとうございました」の言い換え表現をご紹介します。

心より感謝いたします

感謝の気持ちをストレートに伝えられる言い換え表現です。頭に「心より」を付け加えることで、お礼の気持ちを強調できます。「心から」「深く」などを用いてもいいでしょう。

「いたす」は「する」の謙譲語のため、目上の人に使用可能です。

厚く御礼申し上げます

「厚く御礼申し上げます」は、特に手紙やメールで使用されることが多い表現です。

頭に付いている「厚く」は、御礼の気持ちを強めるための言葉です。「御礼申し上げます」の「申し上げる」は「言う」の謙譲語にあたり、こちらも目上の人に対して使用できます。

恐れ入ります

「恐れ入ります」には、相手に敬意を表しながら、感謝や謝罪などの気持ちを伝える意味があります。単独で使うのはもちろん、「◯◯していただき恐れ入ります」などの形で、具体的な内容を付け加えて使用することも可能です。

目上の人や取引先に対して使え、汎用性のある言葉です。相手への敬意や謙遜を表現したいときに使いましょう。

「ありがとうございました」で感謝の気持ちを伝えよう

相手に感謝の気持ちをしっかり伝えるためには「ありがとうございました」という言葉の意味や使い方をしっかりと理解した上で、使用することが大切です。

また「ありがとうございました」の言い換え表現を使いこなせるようになれば、表現の幅を広げることにもつながります。今回ご紹介した表現を繰り返し使って、ぜひ習得しましょう。