筆者は、サムスン電子の折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Fold3」を愛用しています。日本では、折りたたみスマホの選択肢が比較的少ないのですが、実は海外では発表されているのに日本では販売されていない折りたたみスマホがいくつかあります。その1つが、中国OPPOの「OPPO Find N」。いまのところ日本での販売予定はありませんが、通信機能が使えない中国版の機材をお借りしたので、Z Fold3ユーザーとしてチェックしてみました。

  • サムスン電子の「Galaxy Z Fold3」(左)とOPPOの「OPPO Find N」(右)

画面の大きさでZ Fold3、スマートフォンの使いやすさでFind N

Find Nは、OPPOが2021年12月に発表した折りたたみスマートフォン。「開くとタブレット、閉じるとスマートフォンとして使える」というZ Fold3と同じタイプです。開いたときの画面サイズは7.1型。Z Fold3は7.6型なので、パネルサイズは少し小さくなっています。

  • 折りたたんだ状態から開くと、Z Fold3(左)は画面が縦長、Find N(右)は横長になります。画面自体はZ Fold3の方がやや大きいサイズです

  • 両方とも横向きにして重ねてみると、Z Fold3(下)は横がはみ出ますが、Find N(上)はやや縦方向が長くなっています

ディスプレイを内側に折りたたむと、片側ディスプレイが現れて一般的なスマートフォンのように使えます。Find Nのサブディスプレイは5.49型で、Z Fold3の方が6.2型と大きくなっています。

Z Fold3は、サブディスプレイの解像度が2268×832ドットというかなり細長いタイプ。端末を開くと、その細長いディスプレイがほぼ並んだような形でタブレットになるので、タブレットとしては縦持ちになります。この時の解像度は2208×1768ドットとなり、ほぼ3:4のアスペクト比になります。

  • 折りたたんで手に持ってみたところ。こちらは、画面は大きいけれどかなり細長いZ Fold3

  • Find Nは、画面のアスペクト比が一般的なスマートフォンに近く、使いやすい

これに対して、Find Nのサブディスプレイは988×1972ドット、アスペクト比は18:9と、一般的なスマートフォンよりもちょっと幅広なぐらいです。この画面が2枚分となるので、開いた状態では1792×1920となり、正方形に近いもののやや横長。結果として、開いた状態は横持ちになります。

つまり、開いた状態が縦長か横長になるか、という違いになります。加えて、スマートフォンの状態で細長い画面と細長い画面のどちらが使いやすいか。これはもう、Find Nに軍配が上がります。

  • 開いた状態で手に持ったときのZ Fold3

  • こちらはFind N。角度にもよりますが、折り目はZ Fold3の方が目立つように感じます

ただ、Z Fold3に比べてFind Nは画面が小さいのが難点。逆に、Z Fold3をFind Nと同じ方向に折り曲げるとすると、折りたたんだ状態でかなり幅広のスマートフォンになってしまいます。なかなか難しいところです。

それにしても、Z Fold3は折りたたんだ状態だと画面が細長すぎるというのが正直なところで、その意味でFind Nはスマホモードでも使いやすいのがメリットです。

快適に複数のアプリが利用できる

Z Fold3が備える折りたたみスマートフォンとしてのメリットは、おおむねFind Nにも搭載されています。ディスプレイを途中まで折り曲げた状態で保持できるので、ノートPCのように画面を起こして使うこともできます。

  • 折りたたみの途中で固定できます。カメラを使うときにも、三脚代わりに使えます

ディスプレイが正方形に近いアスペクト比なので、この状態でもディスプレイの縦幅が広めなのは嬉しいところ。それに比べると、Z Fold3はやはり縦が短く、画面が狭く感じます。

広い画面を生かしたマルチウィンドウ機能は当然として、2つのアプリを同時に起動する方法も優れています。何らかのアプリが起動した状態で、2本指でタッチして画面上部から下部に向かってスワイプすると、起動していたアプリが画面左半分に、右半分にホーム画面が表示され、アプリを選択できます。Z Fold3の場合は、画面端のランチャーからアプリを探して起動しなければならないため、操作性も視認性もFind Nが優れています。

  • Find Nの画面。2本指で上からスワイプするだけで画面分割できるのはとても便利

  • Find Nの画面。1つのアプリを起動中に分割画面になると、片側にホーム画面が表示されるので、普段通りにアプリを選べます

  • Find Nの画面。スマートサイドバーは、画面側面から内側にスワイプすると表示されます。タッチするとアプリがウィンドウモードで起動します

  • Find Nの画面。ウィンドウモードで起動したアプリ。最大3つのアプリが起動します

  • Find Nの画面。スマートサイドバーからドラッグすると、自動的に画面分割モードになってアプリが起動します

  • Find Nの画面。スマートフォンに比べて大画面なので、マルチウィンドウも実用的

  • Find Nの画面。そのほかにもさまざまな表示設定があります

Androidアプリは、タブレット向けUIに対応していないものも存在しています。スマートフォンの縦持ちUIにだけ対応して、横持ちにしてもアプリが回転しないものです。スマートフォンだけならともかく、タブレットにもなる折りたたみスマホでは不便なアプリです。

特にFind Nの場合、タブレットモードでの標準が横向きに設定されているので、回転非対応のアプリだと、いちいち端末を回転させる必要があります。Find Nの場合にどうなるのかはアプリをインストールできないために不明ですが、そうした場合は少し不便かもしれません。

Z Fold3は、指定したアプリを強制的に回転させる機能があって、いちいち設定する手間こそありますが、不便は減ります。全画面表示にできないアプリもありますが、分割表示だと大過なく動作しますし、アプリのアスペクト比率を変更すれば不具合はほとんど発生しません。このアスペクト比変更機能自体はFind Nにも搭載されていました。

  • Find Nの画面。アプリのアスペクト比を変更できます。表示に問題があるアプリがあれば対策できます

相性がいいのは電子書籍アプリ。Z Fold3とは異なり、開けばすぐに横持ちなので、見開き状態になります。といっても、通信ができないためデフォルトでインストールされているアプリで試しただけなので、実際に電子書籍アプリでちゃんと活用できるかは分かりません。

ただ、スマホモードで片面表示での読書、開けば2画面になる、というのは使いやすそうです。Z Fold3の場合、スマホモードでは電子書籍を読むのが難しいほどの細長さで、端末を開いても回転させないと見開きにならないのが難点でしょう。

Z Fold3で試した限り、マガポケ(講談社)などの一部を除いて、多くの電子書籍アプリは横持ちでのアプリ表示、見開き表示をサポートします。ただ、スマホ向けの縦スクロールマンガは不向き。広い画面で見開きマンガを見られるのはメリットですが、Find Nの場合、画面サイズとして細かい吹き出しを読むのはギリギリでしょう。

実際は、文庫本よりも縦が長く、横がわずかに短いという形状ですが、真ん中で少し折って持つと書籍という感じが強くします。これもZ Fold3だと、横持ちで折りたためないため、Find Nの利点とも言えます。

  • Find Nにプリインストールされていた電子書籍アプリのようなもの。本文はネット接続が必要なようでしたが、このように見開きで表示されます。少し折りたたんで持つと文庫本のようです

  • こちらはZ Fold3。細長いので、あまり文庫本のようには感じません

Z Fold3は、Sペンに対応してペン入力ができる点がメリットですが、Find Nはよりスマホのように使える点や、端末を開いた時点で横持ちになり、扱いやすいことがメリットです。

もっとも、「タブレットだから横持ち」というのは先入観で、縦持ちの方が使いやすいことも多いかもしれません。アプリの対応状況も考えると、基本が縦持ちのZ Fold3の方がいちいち端末を回転させる手間は少ないかもしれません。

いずれにしても、Find Nは中国市場限定にするにはもったいない完成度で、使いやすい折りたたみスマホに仕上がっています。Z Fold3よりも画面サイズが小さい分、持ち運びやすく手軽に扱えます。

ただ、やはりもう少し画面サイズが大きいと嬉しいところ。逆に、Z Fold3は閉じたときのスマホモードでは画面が長細すぎる点が弱点で、Find Nに触れてみるとそれを改めて実感します。

お互い異なる性格の製品であり、折りたたみスマホのバリエーションとして、Find Nの存在は重要だと感じます。次期モデルの開発や、日本市場を含むグローバルでの販売を期待したいところです。