「家族が亡くなったら、費用はいくらかかるのだろう」と、ふと考えたことはありませんか。また、「悲しみに暮れている時に、お金のことまで頭が回るだろうか」と不安になる人もいるかもしれません。

そこでこの記事では、家族が亡くなったら、何にどのくらいの費用が発生するのかまとめました。葬儀や相続などにかかる費用をあらかじめ知っておき、いざという時に慌てないようにしておきましょう。

■亡くなってからかかるお金とその金額

家族が亡くなった時には、主に「葬儀」「お墓や仏壇」「相続」に関してお金が発生します。具体的にはどのくらいの費用が必要なのか、確認してみましょう。

<葬儀費用>

家族が亡くなると、まずかかるのが葬儀費用です。葬儀の相場はいくらなのでしょうか。株式会社鎌倉新書が実施した「第5回お葬式に関する全国調査(2022年)」によると、葬儀費用の総額は平均110万7,000円でした。その内訳は、基本料金67万8,000円、飲食費20万1,000円、返礼品22万8,000円です。

なお、今回の110万7,000円という金額は、過去最少となりました。同じ調査の過去の結果を見てみると、第1回(2013年)の平均は202万9,000円です。つまり、葬儀費用は10年間でおよそ半分に減っていることがわかります。

また、第4回(2020年)の平均は184万3,000円でしたので、この2年間で、一気に73万6,000円も下落しています。その要因としては、コロナ禍により葬儀の主流が一般葬から家族葬へと変化し、葬儀の規模が小さくなっていることが挙げられます。

小規模なお葬式で構わない、また、できるだけ葬儀費用を抑えたいという場合は、比較的費用のかからない家族葬を選択するといいでしょう。家族葬でしたら、2022年の平均に近い100万円程度で葬儀ができる可能性があります。

その他にも、葬儀をせず火葬だけで済ませる「直葬・火葬式」も経済的負担を軽くすることができます。直葬・火葬式の相場は、20~30万です。

ちなみに、葬儀では会葬者から香典を受け取れますので、その分、実際の持ち出し金額は少なくなります。また、葬儀費用とは別に、お寺などに納めるお布施も必要となります。同調査によると、お布施の平均費用は22万4,000円でした。

<お墓や仏壇の費用>

家族が亡くなったあと、お墓がなければ購入を考える必要があります。株式会社鎌倉新書の「第12回お墓の消費者全国実態調査(2021年)」によると、一般墓(先祖代々が入ることのできるお墓)の平均購入価格は、169万円でした。

ただし、お墓には一般墓の他にも種類があります。たとえば、「樹木葬」は墓石の代わりに樹木を使うことで、一般的なお墓よりも費用を抑えることが可能です。同調査では、樹木葬の平均購入価格は71万7,000円でした。ちなみに、樹木葬は基本的に、後継ぎを必要としない「永代供養」となり、一人または夫婦で利用するケースがほとんどです。

また、「納骨堂」も一般墓よりは安価になる傾向があります。納骨堂とは、建物の中で故人の遺骨を保管してくれる場所のことです。納骨堂の平均購入価格は、91万3,000円となっています。

そして、お墓と同様、仏壇がない場合は購入を検討する必要があるでしょう。伝統的な仏壇である「唐木仏壇」の相場は70~100万円、「金仏壇」の相場は100~150万円です。

伝統的な仏壇以外にも、最近では手頃な価格の仏壇も多く登場しています。洋風でリビングにも合う「モダン仏壇」の相場は50万円前後、コンパクトなサイズの「上置き仏壇」の相場は30万円前後となっています。

<相続の費用>

亡くなった家族の遺産を相続する場合にも、その手続きに費用がかかります。まず、相続手続きのためには何種類もの書類が必要です。一つ一つの書類の発行料は数百円程度ですが、取得すべき書類が多く、取り寄せるための郵送の費用などもかさみがちです。

また、相続する財産の種類ごとに手続き費用は異なり、手続きを依頼する専門家も変わります。たとえば、不動産登記の相続手続きなら、司法書士に依頼することができます。司法書士に支払う費用は、5~10万円程度です。

預貯金、有価証券の相続手続きは行政書士、弁護士、司法書士などに代行を依頼でき、費用は1件2~10万円が相場です。自動車の相続手続きは行政書士、司法書士に代行を依頼でき、費用は2~5万円ほどになります。

なお、現金や不動産など遺産の総額が相続税の控除額を超えると、相続税がかかります。相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。これを超えた金額を相続する場合には、相続税が発生します。

■かかるお金の総額はいくら?

では、身内が亡くなった時は総額でいくら費用がかかるのでしょうか。家族葬を行い、お墓は納骨堂を選択、仏壇は上置き仏壇を購入、預貯金の相続手続きの代行を依頼したと仮定した場合、費用の総額はおおよそ240万円となる計算です。

ただし、実際にかかる費用は選択する葬儀の種類、お墓、仏壇の有無などに大きく左右されます。また、葬儀で香典を受け取ること、遺産を相続する可能性があることなども考慮しておきましょう。

なお、家族が亡くなった時の葬儀などの費用は、まず喪主が立て替え、後ほど、相続時に故人の預貯金から清算する流れが一般的です。しかし、2019年からは「預貯金の仮払い制度」が開始し、一定額までは相続決定前であっても故人の口座から引き出し可能となりました。1つの金融機関からの仮払いの上限は150万円ですので、これだけ引き出すことができれば、葬儀を行うのに困らないでしょう。

一方、自分が亡くなった時に備えるためにも、最低限、葬儀が行える金額を残しておきたいものです。前述のとおり、家族葬であれば100万円程度で葬儀を行える可能性があります。他にも費用がかかることを考えれば、150万円程度残せると安心でしょう。

■いざという時の確認、準備をしておこう

身内が亡くなると、葬儀などで大きな費用が発生します。また、自分が亡くなった時にも、家族には同程度の負担がかかることになります。「家族や自分に万が一のことがあったら」とは考えたくないものですが、いざという時慌てることがないよう、費用の確認や準備はしっかり進めておきましょう。