脂肪族炭化水素に富む有機物は、30℃以上の温度になると分解するという研究報告があることから、脂肪族炭化水素に富む有機物の存在から、リュウグウは30度以下の温度しか経験していないと考えられると研究チームでは説明する一方、どのような種類の有機物が該当する領域に含まれるのかは、今後の研究によるとしている。
有機物や水が地球にどのように運ばれたのかについては、今も明確になっていないが、リュウグウ粒子中の粗粒の含水ケイ酸塩鉱物は、有機物や水の供給源の1つである可能性があるという。粗粒の含水ケイ酸塩鉱物に含まれる有機物は、細粒の含水ケイ酸塩鉱物に含まれる有機物よりも、分解などに対し強いと考えられるため、そのままの状態で地球に運ばれたことも考えられるとしているが、リュウグウ粒子の水素同位体は地球と比べて重い成分に富むため、リュウグウのような小惑星のみが地球への水の供給源とはいえないともしている。
また、初代「はやぶさ」が持ち帰った小惑星イトカワの粒子からは、太陽風由来の軽い水素同位体組成を持つケイ酸塩鉱物が見つかっていることから、さまざまな水素同位体組成を持つ成分が混じり合うことで、地球の水ができた可能性があるとする。
なお、今回の研究成果から、「リュウグウ粒子はかつて太陽系外縁で形成され、水と有機物を多数含んでいた。このような始原的な小惑星は、後に太陽系の内側まで移動し、地球に水や有機物を供給した」という仮説が立てられたとのことで、今後、リュウグウ粒子のさらなる分析や、2023年に地球にサンプルが届く予定である小惑星ベンヌの研究により、この仮説の検証ができると考えていると研究チームではコメントしている。