NECパーソナルコンピュータは、ゲーミングデスクトップPC「LAVIE GX」を7月5日に発表、7月14日より順次販売開始した。

昭和世代からするとパーソナルコンピューター「PC-9801」、「PC-8801」や、家庭用ゲーム機「PCエンジン」などでよくゲームをした記憶があるので、「NEC」と「ゲーム」の間には非常に近しいイメージがある。そういう意味では、LAVIE GXは原点に回帰したマシンといえるのかもしれない。

  • NECパーソナルコンピュータ「LAVIE GX」。黒い箱のような外観だ。直販価格は194,700円から

さてLAVIE GXはゲームに適したスペックもさることながら、ゲームコントローラー、ヘッドセットを同梱し、レトロゲームや「モンスターハンターライズ」とのコラボなども実施。あとはディスプレイさえ購入すれば、すぐにゲーム世界に没入できるマシンとして仕上げられている。

今回は基本スペックや外観、内部パーツなどをチェックしたうえで、実際のゲームをプレイした際の快適性などもレビューしていこう。

第12世代Core&外付けグラボの縦型ゲーミングPC

LAVIE GXはカタログモデルに、CPU、グラフィックボード、ストレージ容量の異なる下記の2モデルを用意している。

  • 「GX750/EAB」実売価格303,000円前後
    ……Core i7-12700F/GeForce RTX 3060/RAM16GB/SSD1TB

  • 「GX550/EAB」実売価格222,000円前後
    ……Core i5-12400F/Radeon RX 6400/RAM16GB/SSD512GB

OSは「Windows 11 Home 64bit」、CPUは「Core i7-12700F」(12コア[Pコア×8、Eコア×4]、20スレッド、最大4.90GHz)または「Core i5-12400」(6コア[Pコア×6]、12スレッド、最大4.40GHz)、グラフィックボードは「NVIDIA GeForce RTX 3060」または「AMD Radeon RX 6400」を採用。メモリは16GB(DDR4-3200、DIMM)、ストレージは1TBまたは512GB(PCIe Gen4 x4接続SSD)を搭載している。

なお直販モデルの「LAVIE Direct GX」は、メモリを8GB/16GB/32GB、SSDを256GB/512GB/1TB、HDDを1TB/2TB、グラフィックボードをNVIDIA GeForce RTX 3060/AMD Radeon RX 6400から選択できる。

  • パッケージには本体以外に、キーボード、マウス、電源ケーブル、ヘッドセット、説明書類、Xboxワイヤレスコントローラーが同梱されている

インタフェースはUSB 3.2 Gen1 Type-C×1、USB 3.2 Gen2 Type-A×1、USB 3.2 Gen1 Type-A×1、USB 2.0×4、3.5mmコンボジャック×1、ライン出力×1という基本端子は共通。ただしグラフィックボードが違うため、上位モデルがDisplayPort×3、HDMI×1、下位モデルがDisplayPort×1、HDMI×1と映像端子が異なっている。

有線LANはゲーミング仕様ということで2.5GBASE-T。ワイヤレス通信はIEEE802.11ax/ac/a/b/g/n対応無線LAN(最大2.4Gbps対応)、Bluetooth 5をサポート。Wi-Fiのアンテナは本体内に内蔵されている。

  • 本体前面には電源ボタン、3.5mmコンボジャック×1、USB 3.2 Gen1 Type-C×1、USB 3.2 Gen1 Type-A×1、USB 3.2 Gen2 Type-A×1を用意

  • 本体背面にはライン出力×1、USB 2.0×4、有線LAN(2.5GBASE-T)、HDMI、DisplayPort×3、電源端子、セキュリティーロックスロットを配置

本体サイズは170×308.6×370mm、重量は上位モデルが約6.5kg、下位モデルが約5.8kg。この差はグラフィックボードの違いによるものだ。

ゲームコントローラー付属、キーボード/マウスは通常仕様

本製品には「ゲーミングスターターセット」として、Xboxワイヤレスコントローラー、ヘッドセットが同梱され、レトロゲームがプレイできる「プロジェクトEGG」(2022年10月31日まで)や「モンスターハンターライズ デラックスエディション」(2022年8月28日まで)とのコラボキャンペーンも期間限定で実施されている。

同梱品は非常に充実。有線キーボード、マウスが同梱されており、あとはディスプレイを用意するか、HDMI端子を備えるテレビなどに接続すればすぐにゲーミングデスクトップPCとして利用可能だ。

ただしこの有線キーボードは「Nキーロールオーバー」などに対応したゲーム用ではない。マウスもノーマル仕様だ。「ゲーミングデスクトップPC」と謳うのであれば、キーボード、マウスにもこだわってほしかったところである。

メーカー NECパーソナルコンピュータ
型名 GX750/EAB GX550/EAB
型番 PC-GX750EAB PC-GX550EAB
CPU Core i7-12700F(12コア20スレッド、最大4.90GHz) Core i5-12400(6コア12スレッド、最大4.40GHz)
メモリ 16GB DDR4-3200 DIMM(8GB×2、最大32GB)
SSD 1TB(PCIe Gen4 x4接続) 512GB(PCIe Gen4 x4接続)
グラフィックス NVIDIA GeForce RTX 3060 AMD Radeon RX 6400、インテル UHD グラフィックス 730
OS Windows 11 Home 64ビット
LAN 2.5GBASE-T
無線 IEEE802.11ax/ac/a/b/g/n対応無線LAN(最大2.4Gbps対応)、Bluetooth 5
インタフェース USB 3.2 Gen1 Type-C×1、USB 3.2 Gen2 Type-A×1、USB 3.2 Gen1 Type-A×1、USB 2.0×4、DisplayPort×3、HDMI×1、3.5mmコンボジャック×1、ライン出力×1 USB 3.2 Gen1 Type-C×1、USB 3.2 Gen2 Type-A×1、USB 3.2 Gen1 Type-A×1、USB 2.0×4、DisplayPort×1、HDMI×1、3.5mmコンボジャック×1、ライン出力×1
セキュリティ セキュリティーロックスロット
サイズ 170×308.6×370mm
重さ 約6.5kg 約5.8kg
同梱品 マニュアル、電源ケーブル、有線キーボード、有線マウス、ゲーミングスターターセット(ヘッドセット、Xboxワイヤレスコントローラー、USB-Cケーブル)、マニュアル
  • 右側面。奥行きは308.6mmと比較的コンパクト

  • 左側面。実測80×170mmの冷却口が開けられている

  • 本体上面

  • 本体底面。背景紙の上に置いたらゴム足のあとがすぐに付いてしまった。一般的なゴム足より軟らかいようだ

  • 同梱されているテンキー付きのUSB接続キーボード。左Ctrlキーの左にFnキーが配置されており、ゲームでは左Ctrlキーを多用するのでかなりプレイしづらかった。キー配置カスタマイズソフトで入れ替えたほうがいい

  • 「KeyboardCheck」で同時押しできるキーの数を調べてみたが、最大で6つまでのキーしか認識しなかった。とは言え、筆者が「フォートナイト」などをプレイしていて、特に不都合は感じなかった

  • 同梱されているUSB接続マウス。細かなスペックは公表されていない

  • XboxワイヤレスコントローラーとUSB-Cケーブル。ワイヤレス接続する際には単3形アルカリ乾電池2本をセットする必要がある

  • ヘッドセットはボリュームとマイクのオンオフスイッチ付き。音質は低音がかなり強め

  • 説明書、ちらしは膨大な量だ

メンテナンス性は良好、拡張性は低め。買ってそのまま使える

つぎにLAVIE GXのメンテナンス性、拡張性を確認しよう。製品公式サイトに「本体内部を効果的に冷却するエアフロー設計」と記載されているとおり、比較的コンパクトな筐体ながら中身はすっきりとしている。

  • 背面のネジ2本をはずすと、左側面の金属パネルを開けられる

裏面配線などが施されているわけではないが、ケーブルは綺麗にまとめられており、前面からの空気を背面へとスムーズに導いていけるようにレイアウトされている。空間は広く確保されているのでメンテンナンス性はよさそうだ。

ただし拡張性はかなり厳しい。まずメモリのDIMMスロットは2基しかないので、16GBから32GBへと増量する際には入れ替えが必要で、最大容量も32GBとなる。SSD用のM.2スロットは1基だけなので、ストレージを増量する場合は換装、もしくはSATA接続のSSDまたはHDDを装着するしかない。

  • マザーボードにはメーカー名などの記載は見当たらない

  • 「HWiNFO64 Pro」で取得したシステムの概要。マザーボードは「NEC 3766」と表示された

拡張スロットはPCI Express x1スロットが1基空いているが、グラフィックボードに干渉するので直接挿すのは難しそうだ。実際、スペック表には「空き:0」と記載されている。

もちろんサイズや消費電力が許容範囲であればCPUやグラフィックボードを換装することはできるだろう。しかし、LAVIE GXは基本的にはそのまま使うゲーミングデスクトップPCと考えたほうがよさそうだ。

  • CPUファンはAsia Vital Components製

  • DIMMスロットは2基。最大メモリ容量は32GBとなる。メモリはサムスン製「M378A1K43EB2-CWE」が搭載されていた

  • SSDは「KBG5AZNV1T02 LA KIOXIA」、Wi-Fiは「インテル Wi-Fi 6 AX201」を搭載

  • グラフィックボードは「NVIDIA GeForce RTX 3060」を搭載

  • 拡張スロットはPCI Express x16スロット×1、PCI Express x1スロット×1を用意。PCI Express x1スロットにはカードは刺さっていないが、グラフィックボードに干渉するため利用できない

  • SATA接続の3.5インチHDDを一基装着可能なスロットが用意されている

  • 電源はAcBel製500Wの「PCK010」(80PLUS PLATINUM)を採用

  • 冷却ファンは前面下部と背面上部に装着されている

CPU性能を最大限に発揮させるためにはBIOS設定が必要

最後にパフォーマンスをチェックしよう。まずは、CPUベンチマーク「CINEBENCH R23.200」、総合ベンチマーク「PCMark 10 v2.1.2556」、3Dベンチマーク「3DMark v2.22.7359」、ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 8.0.4a」を実施した。下記がその結果だ。

■CINEBENCH R23.200
CPU(Multi Core) 15677 pts
CPU(Single Core) 1838 pts
■PCMark 10 v2.1.2556
総合 8113
Essentials 11487
App Start-up Score 18460
Video Conferencing Score 7695
Web Browsing Score 10671
Productivity 10298
Spreadsheets Score 12408
Writing Score 8548
Digital Content Creation 12252
Photo Editing Score 14413
Rendering and Visualization Score 16922
Video Editting Score 7541
■3DMark v2.22.7359
Time Spy 9229
Fire Strike 20228
Wild Life 50749
Port Royal 5022
■CrystalDiskMark 8.0.4a
1M Q8T1 シーケンシャルリード 3509.377 MB/s
1M Q8T1 シーケンシャルライト 2921.809 MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルリード 2418.649 MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルライト 2387.235 MB/s
4K Q32T1 ランダムリ-ド 972.537 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト 745.307 MB/s
4K Q1T1 ランダムリ-ド 55.415 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト 257.392 MB/s

ベンチマークをスタートした時点ですぐ気になったのだが、CINEBENCH R23のCPU(Multi Core)のスコアが明らかに低い。「Core i7-12700F」を搭載しているPCであれば2万を超えているマシンもあるのだ。

そこでいろいろ設定を調べたところ、BIOSの「Power」に「Intelligent Cooling」という項目を見つけた。デフォルトでは「Balance Mode」になっているが、これを「Performance Mode」に変えたところ、CINEBENCH R23のCPU(Multi Core)が15677ptsから19859ptsへと約1.27倍に向上した。

処理性能と静音性のバランスを考えて、LAVIE GXはあえて「Balance Mode」に設定されているのだろう。CPU性能を最大限に引き出したいのなら「Performance Mode」に切り替えよう。ファンの音は大きくなるが、ヘッドセットを装着してゲームしていれば気にならないはずだ。

  • デフォルトでは「Intelligent Cooling」が「Balance Mode」に設定されている

  • 「Intelligent Cooling」を「Performance Mode」に変更すると、CINEBENCH R23のCPU(Multi Core)が15677pts(左の結果)から19859pts(右の結果)へと向上する

次は実際のゲームでどのぐらいのパフォーマンスを発揮するのか見てみよう。「Intelligent Cooling」はデフォルトの「Balance Mode」に戻し、「フォートナイト」、「エーペックスレジェンズ」、「PUBG:BATTLEGROUNDS」をWQHD(2,560×1,440ドット)解像度でプレイして、「MSI Afterburner」でフレームレートを計測している。

  • ディスプレイは27型WQHDディスプレイ「Lenovo G27qe-28モニター」(2,560×1,440ドット)を使用した

結果は下記のとおりで、「フォートナイト」は平均75.6fps、「エーペックスレジェンズ」は平均118.4fps、「PUBG:BATTLEGROUNDS」は平均163.7fpsとなった。どれもフレームレートが60fpsを大きく超えているので、ストレスなくプレイできる。これ以上のフレームレートが必要なら、解像度をFHD(1,920×1,080ドット)に下げればいい。

  • 解像度はWQHD(2,560×1,440ドット)。グラフィック品質はすべてデフォルト、またはリセットし、フレームレート制限と垂直同期をオフにしている

  • フォートナイトのフレームレートは平均75.6fps、最小58.7fps、最大101.2fps

  • エーペックスレジェンズのフレームレートは平均118.4fps、最小98.3fps、最大144.7fps

  • PUBG:BATTLEGROPUNDSのフレームレートは平均163.7fps、最小131.7fps、最大187.2fps

処理能力と静音性を両立したNECらしい真面目なゲーミングPC

LAVIE GXはAAAタイトルをWQHD(2,560×1,440ドット)解像度で快適にプレイできるゲーミングデスクトップPCだ。処理能力と静音性を両立している点もNECらしい真面目な作りである。最近の円安のために価格は決して安くはないが、安定性の高いゲーミングデスクトップPCをフルセットで購入したいという方にとって、検討に値する1台といえよう。