デル・テクノロジーズのビジネスノートPC「Latitude 7330 Ultralight」は、重さ1kg未満の軽量ビジネスノートPC。日本からのリクエストに加え、リモートワーク増加による持ち運びの容易な軽量PCのニーズが高まったことから誕生しました。今回、検証機をお借りしたので、使用感をレビューします。
デルの製品ラインはターゲット層によるブランド名、そして世代と画面サイズとグレードが数字で入ります。今回のLatitude 7330 Ultralightは、「企業向けノートパソコンのLatitudeシリーズ」、「画面が13インチで最上位グレードの7000シリーズ」であることを示します。現在のLatitudeシリーズには(コンシューマー向けのXPS的な)9000シリーズがあるので正確には最上位ではないものの、Ultralight製品はLatitude 7330 Ultralightが初めてなので「企業向けの軽量最上位製品」と言えるでしょう。
Latitudeのどのあたりが企業向けかというと、(届いた検証機の場合)CPUにIntelのCore i5-1245Uを採用しているところ。通常のCore iプロセッサーに企業向けの保守運用支援機能であるvProが含まれています。
企業PCの場合、管理性が大きく問われます。vPro(Enterprise)の場合はリモートで電源のON/OFFやBIOSレベルでのリモート操作が行えるので、調子を崩したパソコンに困ってもシステム管理者がパソコン本体の前に行くことなく、ある程度のメンテナンスが行えます。コンシューマー向けでもリモートサポートがありますが、Windowsの起動ができなくなるようなトラブルでもvProなら対応できますし、リモートでWindowsの再インストールも可能です。
検証機は、RAM 16GB/SSD 256GBと比較的裕福な構成です(注:原稿作成時点でオンラインストアで購入できるモデルはIntelのCore i5-1235U、RAM 8GB/SSD 256GBですが、営業を介しての発注ならばこのような選択が可能。ちなみにこの両者のCPUの違いですがCore i5-1245Uが従来のフルスペックのvPro Enterpriseに対し、Core i5-1235Uは第12世代Core i vProから投入されたvPro Essentials)。
デルによるサポート期間がオンラインストア購入時標準でProSupport36カ月と長いのも特徴です(最長60カ月まで延長可能)。ProSupportは電話による24時間対応のほか、標準で翌営業日にエンジニアが出向いてパーツ交換にも対応します。また、追加料金が必要になりますがProSupport Plusもあり、液体こぼしや落下が原因の故障にも対応するアクシデンタルダメージと機密情報が含まれるHDDの故障に対してパーツ返却を行わないサービスの追加が可能。さらに、こちらも追加料金がかかりますが、当日対応や休日でも対応するサービスや連絡から4時間以内に対応するオプションも用意されています。
2030年までの目標の1つをいち早くクリアした環境配慮性
Latitude 7330 Ultralightのもう1つのウリは環境配慮です。デルは2030年までのムーンショットゴール(到達は難しいが、成功すれば大きな成果となる壮大な目標。ケネディ大統領の「1960年度代のうちに人類を月に着陸させる」の宣言が語源)で「同等の製品を再利用orリサイクルする」、「梱包材の100%をリサイクル素材or再生可能素材にする」、「製品の半分以上がリサイクルor再生可能素材から作る」を目指しています。Latitude 7330 Ultralightの場合、梱包材のほとんどが紙でできているほか、本体を包んでいる袋も100%リサイクルPETでできており、いち早く目標を達成しています。
以前の製品でも紙パッケージだったよなぁと記憶を手繰ってみると、2022年5月にレビューした「Inspiron 5000(AMD) 14/16」のパッケージは、本体の上下にプラスチック製のクッション材を使っていました。 企業でパソコンを大量導入した場合、「大量のパッケージゴミが発生するのでは?」という懸念もありますが、デルでは大量導入用にリユース可能なパッケージを使用した「一括購入オプション」での納入を利用できます。拠点一括ならリユース可能なパッケージで購入、個々のリモート環境への送付なら紙パッケージと切り分けできるとみるべきでしょう。
他社の環境配慮製品では「一目見て環境配慮とアピールする作り」の製品もありますが、Latitude 7330 Ultralightはそのようなことを感じさせず、高級感を保ちつつ環境配慮しているところもポイントが高いと思います。
本体下部のバンパーには植物由来のバイオプラスチックを最大39%使用し、バッテリフレームに最大50%のリサイクルプラスチックを採用していますが、やはり目立たないもので、言われなければ気づかない、見えないでしょう。
今回、軽量化のために使われたのがマグネシウム合金。ノートパソコンのフレームにマグネシウム合金を使う製品は多いですが、Latitude 7330 Ultralightでは天板とキーボード、本体底部にもマグネシウム合金を使用することで「薄くても強い」を実現しています(Ultralightでないモデルはカーボンファイバーやアルミニウムを使用)。本体の塗装にも水性塗料を使用しており、環境に配慮しつつ高い質感があります。
2022年4月に行われた製品発表会では、「単に軽量なパソコンを作るだけならばもっと軽量にできなくもないが、『Latitudeの品質』を保たなけば意味がない」という趣旨の説明がありました。資料を見ると高温・低温テストや0.91mからの落下テスト、2万回のヒンジ開閉、1万回の電源ボタン、よく使うキー1000万回の押下などをテストしているようです。
実際の使用感とベンチ結果は?
実際に色々と触ってみました。本体は13.3インチで、サイズは幅306.5×奥行き199.95×高さ16.96~18.36mmです。重さは967g~。検証機はもう少し重かったものの988gと1kg切りなので、片手でラクラク保持できます。ブラック系の塗装は落ち着いていて、いかにもビジネスマン向けと言えるでしょう。
キーボードは左右一杯まで配置していないこともあり、キーピッチが18mmとやや狭い印象がある一方、1.5mmと最近のノートパソコンとしては十分なストロークを持っています。実際に入力してみると、フルストロークのデスクトップキーボードに慣れている人は違和感が少なそうだと感じました。打鍵感は少々重めで、軽快な入力感よりも確実な入力向けにチューニングされている印象です。
電源ボタンへの指紋認証機能と、キーボードバックライトのオプションがありますが、検証機にはどちらも含まれていませんでした。個人的に、指紋認証は入れたほうがいいと思います。
英語キーボードを選択可能なのも企業向けならではでしょう。最近のデル製品は電源ボタンがキーボード面の右上に配置されており、結果としてDELキーがその位置にないのですが、電源ボタンは硬めなのでミスは起きにくいと思いますし、指紋認証ならば適切な位置と言えます。
ディスプレイは1,920×1,080ドットのフルHDです。輝度は最大400nitと明るく、テュフ・ラインランド認証取得のComfortView Plus。常時ブルーライト低減で目にも優しいのが特徴です。
インターフェース類は、左がUSB Type-Cとヘッドセット、右がUSB Type-A/CとHDMIと少なめですが、左右のType-CはThunderbolt 4.0 / DisplayPort 1.4対応で、Type-AもUSB 3.2 Gen 1対応、HDMIも2.0対応です。超高速転送のThunderbolt 4.0端子の信号を左右に送り出すのは設計ハードルが高いのですが、どちらからでも電源供給ができるは利用メリットが大きいでしょう。
Windows Hello関係ですが、UltralightはIRカメラの設定がないので顔認証は不可。電源ボタンの指紋認証や接触型ICカードリーダーがオプションで用意されています(検証機にはすべてありませんでした)。バッテリは3セル、41Whと、本体サイズを考えれば妥当なところだと思います。
Latitude 7330 Ultralightには専用のツールが含まれています。そのうちのDELL Power Managerは電源周りのカスタマイズが可能。1時間で80%までの急速チャージを行うDELL Express Chargeがよくアピールされていますが、持ち歩きを行わない人向けの「主にAC利用」を選択すれば、バッテリの劣化を抑える充電になりますし、充電開始、終了のパーセンテージを細かく指定できるカスタムもあります。また、放熱性と騒音の設定を行うサーマル管理もここで行います。
もう1つ特徴的なツールがDELL Optimizerです。今回のバージョンからAIを取り入れた自動設定が可能となっており、ユーザーが指定するアプリケーションをより快適に動作させるモード、有線と無線のネットワークを協調させて動作させ、速度向上、安定した帯域が必要なWeb会議向けに優先して帯域を割り当てる機能、PCを使っている状況に合わせて充電ポリシーをダイナミックに変更する機能、内蔵マイクと相手の不必要なノイズをニューラル推論専用のIntel GNA 3.0を活用して軽減する機能が入っています。のぞき見を検知して画面を暗くしたりぼかすIntelligent Privacy機能もありますが、IRカメラが必要なようでUltralightでは対応しません。
なお、DELL Optimizerが自動的に変更した場合、履歴が残りますので、後日どのような変更が適応されたかも確認できます。
パフォーマンスに関してはPCmark10、3Dmark、CinebenchR23、FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークと比較的定番のものを使用しました。1つお断りしておくと、今回届いた検証機はWindows 10 Proで、Windows 11ではありません。第12世代 Intel Coreプロセッサは、PコアとEコアのヘテロジニアス構成なのでWindows 10ではその真価を発揮できない可能性がありますが、企業向けのLatitudeはWindows 11のライセンスを持ちながら社内事情でWindows 10を選択する可能性があるため、このような構成が可能となっています。
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONは、軽量品質で1,280×720のフルスクリーン表示のスコアが3072と普通ですが、画質レベルや解像度を上げると「ゲーム困難」の表記となりました。
3DMarkでもTimeSpyスコアが747、グラフィックスのスコアが653、CPUスコアが4114と内蔵グラフィックが足かせになっています。PCMARK10は総合値が4400、Essentials:9506、Productivity:6553、Digital Content Creation:3713という結果でした。
Core i5なのでCPU的にはそんなに不自由しないと思いますが、Iris Xeグラフィックスと言ってもDDR4メモリでDDR5よりも帯域が少なく、3Dグラフィックスを多く動かすゲームタイトルはあまりよくありません。Thunderbolt対応の外部グラフィックスをつければ解決すると思いますが、そこまでしてゲームをする必要性は薄いでしょう。
Latitude 7330 Ultralightは企業向けノートパソコンとして不可欠な管理運用性と高いサポートレベルを保ちつつ、小型筐体に上質な素材を使って軽量化を果たしたモデルです。一方でこれから求められる環境性にも配慮が行われています。
CPU内蔵グラフィックスということもあり、3D性能はあまり高くないためデザインやGPU演算を求める部署にはあまり向きませんが、一般ビジネス用途で持ち出しの多い部署に向いている製品。保守はオンサイトサポート主体で、道具としてのパソコンを使うユーザー向けと言えるでしょう。
なお、Latitude 7330 UltralightのRAMサイズは導入時に決められ増設等が行えません。オフィスアプリや多くのwebブラウザタブを開くような人は今回の検証機のような16GBメモリを発注するのが望ましいと思います。