今回の研究では、UV硬化樹脂として「N-ビニル-2-ピロリドン」(NVP)、「1,6-ヘキサンジオールジアクリレート」(HDDA)、「トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート」(TPGDA)、「トリメチロールプロパントリアクリレート」(TMPTA)が選択された。重合開始剤として、「2、2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン」(DMPA)を用いて4種類の樹脂を準備し、UVナノインプリンティングの充填プロセスの分子動力学シミュレーションが行われた。

その結果、HDDA、NVP/TPGDA/TMPTA、TPGDAを含む粘度10mPa・s以下の樹脂では、幅2nmおよび3nmのトレンチを充填することに成功したという。ただし、TMPTAのように嵩が高くて高粘度の樹脂では、幅2nmおよび3nmのトレンチを埋めることができなかったとする。

  • TPGDAの充填シミュレーション結果

    TPGDAの充填シミュレーション結果。時間経過に伴う全体の体積変化(左)と、3nm幅(中央)および2nm幅(右)のトレンチでのシミュレーション終了時のスナップショット。2nm幅のトレンチへの充填プロセスは、今回のシミュレーション終了時には完了しなかったが、レジストは有限の時間内にトレンチを充填することが判明した (出所:理科大Webサイト)

分子動力学シミュレーションから得られた動径分布関数と回転半径の解析が行われた結果、TMPTAの回転半径は、動径分布関数の最初のピークが発生する距離の半分より小さいことが示された。この結果は、動径分布関数と回転背景は、低粘度フォトポリマーの選択と設計に役立つ指標であることを示唆しているとした。

また、直鎖状のポリマーであるHDDAとTPGDAの形状比較が実施されたところ、TPGDAはコンパクトな状態を形成する可能性が高く、より柔軟で多くのコンフォメーションを取ることが判明。この柔軟性のため、TPGDA分子では重合反応にかかわる末端官能基が同一分子内で近づくことができ、分子内架橋が起こりやすくなることが考えられるという。またこのシミュレーション結果であれば、実験で観察されたUV硬化HDDAとTPGDAベースの材料間における硬度の違いを説明することができるとしている。

なお、今回の研究成果は、UVナノインプリントリソグラフィによる微細パターン形成に向けた、樹脂の選択・設計の指針となる有用な情報を提供するものであり、半導体製造の効率化に寄与することが期待されると研究チームでは説明している。