東京理科大学(理科大)は8月9日、4種類の紫外戦(UV)硬化樹脂を対象に、「UVナノインプリントリソグラフィ」における数nm幅の微細なトレンチ(溝)への充填過程について分子動力学シミュレーションを行い、充填の成功に必要な主な分子的特徴を明らかにしたと発表した。

同成果は、理科大 先進工学部電子システム工学科の安藤格士准教授らの研究チームによるもの。詳細は、ナノマテリアルに関する全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Nanomaterials」に掲載された。

従来、半導体プロセスの微細化にはDUVやEUVを用いた露光装置が用いられてきたが、製造時に大量の電力を消費するという課題があった。これまで、量産適用されてきたDUVやEUVを用いた露光技術以外にも、X線リソグラフィなど、さまざまな技術が考案されており、そうした中の1つに省電力で微細加工が可能なナノインプリントリソグラフィ(NIL)があり、特に、UVナノインプリントリソグラフィはプロセス速度や加工面積に優れ、半導体製造や生命科学分野などで実用化されつつあるという。

課題は、充填プロセスにおいて加工に用いる樹脂が鋳型に付着したり、基板から剥がれ落ちたりといった樹脂の機械的特性による欠陥であり、研究チームのこれまでの研究において、4種類の樹脂を対象にして実施された、充填過程の分子動力学シミュレーション解析の結果では、粘度10mPa・sの樹脂では2nmおよび3nmのトレンチ(溝)をうまく充填できる一方、より粘度が高い93mPa・sの樹脂ではうまく充填できないという結果を得ているという。

そこで今回は、その先行研究とは異なる樹脂を対象に、新たな充填プロセスの分子動力学シミュレーションを実施することにしたとするほか、今回の研究と先行研究で得られたシミュレーションデータを用いて、UV硬化型樹脂における分子の形状、コンフォメーション、分布の解析を行い、樹脂の分子特性がUVナノインプリンティングの充填プロセスに与える影響についての検討が行われた。