冷蔵庫の定位置といえばキッチンでしたが、コロナ禍で加速した生活スタイルの変化や食生活の多様化に合わせて、セカンド冷蔵庫を置く家庭が増えています。ストック量の増加という目的だけでなく、リビングや寝室といった個室に小さな冷蔵庫を置いておけば、いつでも冷えた飲み物やおつまみを楽しめますよね。
ただ製品を見渡してみると、個室に置くにはデザインがいまひとつのものが多く、実際に設置してみると急に所帯じみた印象になることも……。冷蔵庫のデザインにもバリエーションが増えて欲しいと思っていたところ、日立グローバルライフソリューションズ(以下、日立)からスタイリッシュな冷蔵庫「Chiiil」が登場しました。
カラバリは10色、奥行きが薄く使いやすい容量
Chiiilの定格内容積は72L。家具に合わせやすい奥行き42cmという薄型ボディは、幅が55.9cm、高さが75cmです。重さは29kgあります。棚の上に置くような小さな冷蔵庫ではなく、床置きの小型冷蔵庫です。
本体カラーが10色展開なのも注目ポイント。ベーシックカラーには、ホワイト、ノルディック、ダークグレーの3色を設定しています。そこに、カスタムカラー(受注生産品)として、グレージュ、トープ、グラファイト、オーク、モス、ブリック、ウェンジという7色をラインナップ。
スモーキーな色が多く、マットな質感でどれも落ち着いている印象です。10色からカラーを組み合わせる楽しみがあり、選ぶときにワクワクしました。今回はダークグレーとグラファイトの2台をお借りしました。
そう、Chiiilは2台を横に並べたり縦に重ねたりと、複数台を配置できるのです(縦に置く場合は別途部品が必要となり、工事を依頼しなければなりません)。2台を横に並べる場合は、右開き・左開きの両方を選んで観音開きのようにすることも。設置場所と使い方によって選択が広がります。
実物を見ると、その高級感に驚きました。こういった冷蔵庫は扉のカラーだけを変えていることが多いのですが、天面のテーブルも同じカラーでそろえています。
一般的に冷蔵庫を設置するときは、放熱のために本体の背面と壁との間にすき間が必要です。しかし、Chiiilは放熱機構を本体下部に設けているため、壁にピタッと設置できるように工夫されています(本体の左右に放熱スペースが必要)。
裏側も出っ張りが少なく、電源コードも横向きに出ているので壁ギリギリまで寄せても大丈夫。電源コードの付け根がジャマになりません。細かいところまでていねいに作り込まれている印象です。
Chiiilを試用した期間は来客が多かったのですが、みなさん冷蔵庫だとは気付かず、キャビネットか何かだと思ったようです。「えっ、冷蔵庫なの!?」と驚かれることもしばしば。薄型で美しく、家具のような雰囲気のChiiilは、どんなインテリアにも合わせやすい冷蔵庫です。
飲み物を入れるのにちょうどいいサイズ感で使いやすい
庫内はダークな色で統一しており、収納したビンなどを引き立ててくれます。庫内照明もあえて明るすぎない、温かみのある優しいオレンジ色で落ち着いています。棚は完全に透明ではなく少しブラウン味があり、これもまた高級感を出しているところです。
床に置く小型冷蔵庫は一般的な冷蔵庫よりも冷蔵室が床に近いため、立ったまま扉を開けると中が見えにくいかも――と思っていましたが、Chiiilは奥行きが狭く、棚も透けているので全体が見渡しやすく、中身が一目でわかります。
庫内は広々。上段の高さは約12cmで、350mL缶が立てたまま入ります。奥行きも広く、2Lのペットボトルを横にして入れられました。上段はおつまみなども入れやすいスペースです。
中段の高さは約21cmで、500mL缶が2列で入ります。下段には500mL缶、500mLペットボトル、1L紙パックを立てたまま入れられます。
下段は高さ自体は取れますが、下段の奥は冷却機構などが配置されている関係で奥行きが狭くなっており、飲み物を並べられるのは手前の横一列です。
中段の棚がセパレート式になっているので、手前の棚を奥に収めると下段に2Lペットボトルや一升瓶、ワインボトルなどが入るようになります。その場合、中段も奥行きが狭くなるため缶などは一列に並べる形に。扉の内側にポケットなどはありません。
冷蔵庫としての温度帯は、「冷蔵」と「セラー」の2種類から選びます。「冷蔵」の温度は、「強め」が約2度、「標準」が約4度、「弱め」が約6度です。「セラー」の温度は、「強め」が約8度、「標準」が約12度、「弱め」が約16度となります。
いつも冷やしておきたいお酒や飲み物、スイーツ、軽食などに向いているのは「冷蔵」。冷やしすぎたくない飲み物、コーヒー豆、チョコレートなどは「セラー」がおすすめです。個人的には冷たい飲み物が好きなので、「冷蔵」の「強め」で使っていました。キンキンに冷えた飲み物をすぐ取り出せるのは便利です。
日立の製品には、「冷凍」「冷蔵」を切り替えられる「ぴったりセレクト」機能を搭載したストッカーもありますが、Chiiilの切り替えは「冷蔵」と「セラー」のみ。2台のChiiil並べて、1台を冷蔵庫、もう1台を冷凍庫として使いたくても、それはできません。暑い夏場は氷を使うことも多いので、製氷スペースだけでも欲しかったところです。
お手入れはとても簡単。掃除する部分がとても少ないからです。棚は外すことができ、奥まで手が届きます。下段もトレイになっているので、外してサッと洗えました。
部屋の模様替えなどでChiiilを移動するときは、重さが29kgあるので、一人で持ち上げるのは危険です。必ず2人で作業するようにしましょう。
使い勝手よく、デザインも文句なし
近ごろますます気になる電気代を大型の冷蔵庫と比較してみました。日立の上位モデルで大容量タイプの「R-HXCC62S」は、定格容量が617Lで年間消費電力量は270kWh/年。Chiiilの定格容量は73Lで年間消費電力量は198kWh/年。
容量に対して、Chiiilの年間消費電力量はそれほど低いわけではありません。電気代に関しては、Chiiilを使うことで毎月ざっと500円ほど加算される見込みで、想像より少し高いな……という印象です。
とはいえ、やはり近くに冷蔵庫があると何かと重宝します。リビングに置いておけば、飲み物を取りにキッチンに行く必要もなく、来客時もすぐに冷たい飲み物やスイーツを出すことができます。Chiiilは動作音も静かなので、寝室にも置けるでしょう(音に対する感覚は人それぞれですが)。
何より、ほかにはないカラーと質感が魅力です。これまでのセカンド冷蔵庫はあくまでサブ扱いで、デザイン的にはビジネスホテルにあるような白いタイプが一般的でしたが、Chiiilはどんなインテリアにもなじみます。天面にモノを置けるのも便利。置くモノによって印象がガラリと変わるので、色々試したくなりました。
Chiiilの実勢価格は80,000円ほど。小型冷蔵庫としては高価ですが、細かいところまでていねいに作り込んでいるので、相応の価格だと思いました。スタイリッシュなセカンド冷蔵庫を探している家庭にオススメしたい冷蔵庫です。