具体的には、種々の「オリゴフェニレンジボロン酸エステル」と二核金(I)錯体の反応によって、三角形大環状錯体が収率70%で生成されることが見出されたほか、三角形大環状錯体の角を切り出した金錯体と、それをフッ素でマーキングした金錯体を反応させたところ、Ph基と(C6H4-4-F)基が速やかに交換され、[Au2Ph(C6H4-4-F)(dcpm)](AuC-HF)が生成することが見出されたという。これによって、金-炭素結合が迅速に交換可能な動的共有結合性を持つことが見出され、三角形大環状錯体の生成には、この動的共有結合性による熱力学的支配が関与することが明らかにされたとする。

  • 今回の研究の概要図

    今回の研究の概要図 (出所:理科大Webサイト)

さらに2種の異なる大環状金錯体を混合することで、金-炭素結合の交換反応を起こし、異なるオリゴフェニレンリンカーが組み込まれた三角形大環状金錯体を形成させ、脱金属反応を経ることによって、さまざまな数のフェニレンユニットを持つ[n]CPPの混合物を得るという新規合成法も開発された。これを「再組織化法」と命名し、金-炭素結合が示す動的共有結合性の応用法として示したとする。

  • 今回の研究で明らかにされた[n]シクロパラフェニレンの生成機構

    今回の研究で明らかにされた[n]シクロパラフェニレンの生成機構 (出所:理科大Webサイト)

なお、今回の研究で明らかにされた金-炭素結合が作り出す新しい動的共有結合は、さまざまな機能性CPPや関連するナノフープの合成を可能にするだけでなく、金-炭素結合を使った金属有機構造体(MOFs)など、より高次元の構造体の合成に応用することが期待されると研究チームでは説明している。