実用化が期待される宇宙エレベーターの優位性とは

--宇宙を視野に入れた技術ではロケットの存在も大きいと思いますが、皆さんが感じる宇宙エレベーターにしかない魅力を聞かせてください。

礒端さん:ロケットで宇宙へ行くには、多くの費用がかかり使用する燃料も莫大です。宇宙エレベーターならそのあたりを改善できます。ロケットは機体の大半を燃料が占めますが、宇宙エレベーターはレーザー光や太陽光など外部からのエネルギー供給を利用するため、基本的には燃料を積まないのでスペース的にも有利です。人やものの輸送でも大きく貢献できるはず。しかもバッテリーを交換するだけで行き来が自在なのも魅力です。

竹下さん:競技に絞っても、ロケットはレギュレーションに関わる項目が多岐にわたりますが、宇宙エレベーターでは「この寸法内・この重さに収める」くらいで条件が緩く、より自由な発想で取り組める可能性があります。自由度が大きい分、あれもこれもとなって結局はうまくいかないこともないとはいえませんが。

--今後、将来の実用を見据えたレギュレーションに移行していくかもしれません。宇宙エレベーターはどのような方向に進むと考えますか。

吉中さん:現在の私たちの活動は、重力下(地上)での実験・開発です。企業レベルの開発では、宇宙空間での作業を見据えた材料開発や、ロケット・人工衛星などとの合体に力点を置いているようです。

竹下さん:実装される宇宙エレベーターでは時速200kmでの走行を想定しているといわれます。自分たちがいまメインにしているのは、その数値に近づくことを目指した速度重視の機体です。一方でエレベーターはものを運ぶものなので、積載重量にもこだわった機体につくっていますので、最終的にはそれらをひとつにまとめられればと思っています。

KUSEPでのゴールは先輩たちを越えること

--最後に、各人が描くKUSEPでのゴールとその後の目標や進みたい方向を教えてください。

礒端さん:ここでの活動は4年目になりますが、研究室でも宇宙エレベーターの技術を産業応用する研究を行っているところです。今後は大学院へ進学し、継続して宇宙エレベーター研究に携わっていくつもりです。KUSEPでの経験もふまえて、いずれは航空宇宙系の仕事に就ければと考えています。

居川さん:まずは先輩たちのように、「自分たちのクライマー」を一からつくりたいと思います。とくにこれまでの機体を越える高効率のプログラムを開発したいですね。将来的には、得意な電気系とここで学んだ機械系の技術とを合わせた“二刀流エンジニア”を目指します。

吉中さん:先輩たちの機体を応用したものとはいえ、関わったクライマーが世界記録を達成したので、自分がメインで携わる機体で新記録を達成してからKUSEPの活動を終えたい気持ちがあります。その後は、機械・電気・制御の3つができるエンジニアとして仕事に就きたいと思います。社会に出てもなんらかの形で宇宙エレベーターに関わっていきたいですね。

竹下さん:僕個人としては、KUSEPでの活動を終えた後も、「竹下という人がつくったこのクライマーはすごいよ!」といわれたら、それで満足です。そんなクライマーを作りあげたいと思います。

  • KUSEPが今後どのような宇宙エレベーターの開発を行うのか、期待せずにはいられない

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