具体的には、初診でのDSWPD患者30名のうち、睡眠衛生指導では改善せず、かつ再診となった23名についての報告が行われた。年齢は14~46歳(平均23.5歳)、男性15名・女性8名で、全例に夜間の不眠症状と朝早い時間の覚醒困難が認められた。また、18名(78.3%)は、過去に通常用量のラメルテオン(8mg)を処方された経験があったが、いずれも効果不十分あるいは眠気の持ち越しや倦怠感などの問題により、初診時には服用していなかったとする。

初診時の平均睡眠スケジュールは平日が3:21~11:03、休日が3:45~12:30だった。体内時計/クロノタイプの指標として知られるMSFsc(生理的な睡眠時間帯の中間時刻)は7:41。初診時は平均18:10(中央値18:00)に、平均0.653mg(中央値1/14錠)のラメルテオンが投与され、うちいくつかの症例では投与直後の眠気/倦怠感のためにさらに減量が行われ、最終的に平均投与量は0.571mg(1/7~1/50錠)となった。

その結果、平均約40日後の時点で、平均睡眠スケジュールは平日が0:17~8:43、休日が0:30~9:27、MSFscは4:46と、約3時間の前進が見られたという。

治療前には全症例で、学校や職場への遅刻/欠席が生じていたが、治療後、60.9%の症例は学校や職場への遅刻が消失し、「著効」と判断された。残りの26.1%の症例は部分奏効と判断され、13.0%の症例では明らかな改善が見られず「無効」と判断されたとする。

  • メラトニン当量換算でのMT2受容体刺激能比較

    メラトニン当量換算でのMT2受容体刺激能比較。体内のメラトニン(青線)、ラメルテオン1錠の作用(点線)、ラメルテオンの代謝物のM-IIの作用(赤線) (出所:東京医科大Webサイト)

ラメルテオンの適切な減量投与を行えば、翌朝への持ち越しを減少させられるため、体内時計を早め、DSWPDの症状改善につなげられるというメカニズムが、今回の結果から考えられたという。

またラメルテオンの服用のタイミングとしては、人によってまたは日によって異なる「就寝前」として処方してしまうと、それが何時になるか予測できず、生体リズムを逆に不安定化させる恐れがあることも考えられるとしており、服用タイミングの指定は「就寝前」ではなく、体内時計を前進させることができる、夕方の具体的時刻を指定することが、重要である可能性が考えられたと研究チームでは説明している。

なお今回は臨床試験ではなく、症例報告であり、ランダム化や対照試験などは実施されておらず、今回の投与方法による真の効果や有意性は不明だという。また、ラメルテオンの今回の投与方法は厳密には適応外である可能性があるため、同様の投与や、それ以外の適応外使用は推奨されるものではないとしている。