約2万円で買える手頃なSIMフリースマートフォン「moto e32s」が7月15日に発売されました。6月にはハイエンドモデル「motorola edge30 PRO」と日本オリジナルモデル「moto g52j 5G」を発売したばかりで、新機種ラッシュのモトローラ。エントリーモデルの実力に迫ります。
最近増えている「2万円スマホ」、購入条件によってはほぼ負担ゼロに
moto e32sは家電量販店やMVNOなどを通じて販売されるオープンマーケット向けの機種で、直販サイトでの価格は21,800円。MVNOの回線契約とセットであれば、割引が効いてもっと安く買えるケースもあります。本記事の執筆時点では、たとえばIIJmioの場合、他社からの乗り換え(MNP)と同時に購入すると1,980円の特価になります。
近年の日本のスマートフォン市場では割引規制のラインが引かれている兼ね合いで、MVNO向けでも大手キャリア向けでも、回線セットでほぼユーザー負担なしでの販売を狙える2万円台の機種は充実しています。
部材/物流コストの高騰や円安の進行などを考えると、これ以上安い価格帯、たとえば1万円台半ばで日本のユーザーのお眼鏡にかなう機種を作るのは厳しく、新品の定価ベースでは本機種のような2万円前後が最安クラスといえます。
生活のためのツールとしては十分使えるスペック
では、そんな最安クラスの機種でどこまで性能に期待できるのか、まずはスペックを見てみましょう。
- OS:Android 12
- SoC:MediaTek Helio G37(オクタコア/2.3GHz×4+1.8GHz×4)
- メモリ(RAM):4GB
- 内部ストレージ:64GB
- 外部ストレージ:microSDXC対応(最大1TB)
- ディスプレイ:6.5インチ液晶 90Hz対応 1,600×720ドット(HD+)
- アウトカメラ:約1,600万画素 F2.2(メイン)+約200万画素 F2.4(マクロ)+約200万画素 F2.4(深度)
- インカメラ:約800万画素 F2.0
- 対応バンド:LTE Band 1/2/3/5/7/8/19/20/26/28/38/40/41、W-CDMA Band 1/2/5/8、GSM 850/900/1,800/1,900MHz
- SIM:nanoSIM×2
- Wi-Fi:IEEE 802.11a/b/g/n/ac
- Bluetooth:バージョン5.0
- バッテリー:5,000mAh
- 急速充電:15W
- 外部端子:USB Type-C、イヤホンジャック
- 防水/防塵:IPX2/IP5X
- 生体認証:指紋認証、顔認証
- サイズ:約164.0×74.9×8.5mm
- 重量:約185g
- カラー:スレートグレイ/ミスティシルバー
- 価格:21,800円
同価格帯の機種と比べた長所としては、画面の動きをなめらかにする90Hz駆動に対応していること、多少の雨に降られる程度なら安心の防滴性能があることに注目。
また、エントリーモデルでは5,000mAh程度の大容量バッテリーを搭載する機種自体はさほど珍しくありませんが、大きなバッテリーを搭載しつつも厚さ8.5mm、重さ185gと比較的スリムに仕上げている点は美点です。
一方で物足りない点があるとすれば、5Gには対応しない4G端末であること、画面解像度は低めでフルHDに満たないこと、CPU性能やメモリ容量は控えめなことなどが挙げられます。
大半の要素をバランス良く満たせる3万~4万円台のミドルレンジ機とは異なり、エントリー機では機種ごとの得意・不得意が出やすいので、自分が求める性能・機能とマッチするかどうかを吟味して選びたいところです。
たとえば、価格の近いRedmi Note 11(シャオミ/24,800円)に搭載されているQualcomm Snapdragon 680と比べると、MediaTek Helio G37の処理速度は見劣りします。前提としてどちらもゲームプレイには適さないのですが、そこまで負荷の大きい用途ではない日常的な利用シーンでも、SNSアプリやWebブラウザなどで情報収集ツールとして積極的にスマートフォンを使う人なら十分体感できる程度には差があります。
それでも、発展途上でスマートフォンの進化が速かった数年前からすれば、最安クラスの機種でも不足なく使えるレベルには達しており、生活必需品としてなるべく安く購入したいということであればまったく問題ありません。
ソフトウェアの面では、他のモトローラ製スマートフォンと同様に、メーカー独自のカスタマイズが控えめでAndroid標準の挙動に近いシンプルな作りです。
使いきれないほどの多機能ぶりに混乱することがないのはもちろん、手の込んだカスタマイズが施されている機種にありがちなマイナートラブル(バックグラウンドアプリの強制終了、通知が届かないなど)も少なく、性能面も含めて、連絡ツールとして割り切った使い方の人には無駄なく使える良い道具になりそうです。
カメラも高性能ではないが十分良く撮れる
スマートフォンを選ぶ上で重視する人も多いカメラ機能については、極端に彩度やコントラストを強調した“映え”重視の写りではなく、素朴で素直な写りだと感じました。必要に応じてフィルターや画像加工を施す土台としても扱いやすいでしょう。
アウトカメラの構成は、約1,600万画素 F2.2(メイン)+約200万画素 F2.4(マクロ)+約200万画素 F2.4(深度)。高性能なイメージセンサーやレンズを採用しているわけではないので、やや逆光に弱かったり、明暗差の激しい場面で白飛びしやすかったりと価格相応の弱点はありますが、十分使える印象です。
バランス良好で使いやすいエントリーモデル
総合的な評価としては、目玉機能となるような尖った特徴がある機種ではないものの、ある程度割り切った仕様にせざるを得ない場合が多い低価格帯の機種としてはそつなくまとめられており、比較的バランスが良くおすすめしやすい機種です。
5,000mAhの大容量バッテリーを搭載しながら本体の重さや厚さにあまり影響していないので、電池持ち重視の人も操作性重視の人も納得できるでしょうし、低価格機では省略されやすい生体認証(指紋認証/顔認証)もしっかり搭載しています。
CPU性能やメモリ容量、画面解像度(HD+)などを考えると、SNSなどでの情報収集や動画視聴などスマートフォンをよく使う人ならもう少し予算を増やして3万円クラスの機種を選んだ方が満足度は高いかと思います。しかし、たとえばお子さんのスマートフォンデビュー用に買い与えたり、業務用の連絡ツールとしてメインのスマートフォンと使い分けたり、「これで十分」な利用目的がはっきりしているならコストパフォーマンスの高い選択肢です。