コロナ禍でZoomなどのネット会議ソフトを利用する機会が増えましたが、そこで実感するのが「ノートPC内蔵のWebカメラは性能がショボすぎる」ということ。画質はザラザラで顔色が悪く写るものが少なくないうえ、画面を見やすくしようとノートPCのパネルの角度を変えると自分の顔が切れそうになる…という使いづらさもあります。
そんな不満を解消する高性能Webカメラ「Insta360 Link」が、360度カメラやアクションカメラなどで知られるInsta360からいきなり登場。価格は45,800円ときわめて高価ですが、Webカメラの常識を覆す機能や画質に驚きました。
強力な追尾機能で人物の顔を追いかける
一般的な外付けWebカメラとはまったく外観の異なるInsta360 Link、大きな特徴が、3軸ジンバル付きのカメラを搭載していること。DJIの「Osmo Pocket」(DJI Pocket)シリーズが搭載するジンバルカメラと同等の機構で、カメラ部が自由自在に動く仕組みになっています。
この3軸ジンバルと内蔵のAIが可能にするのが、人物の顔を認識してカメラが自動的に人物を追いかけること。実際に試したところ、デスクから立ち上がったり左右に歩き回ってもしっかり顔を認識し、フレーム内に収め続けてくれました。デジタルズームを併用し、人物がカメラから離れてもズームしてバストアップに収める、という機能も持ちます。
人物があまり動くことのないネット会議でも、メリットがあると感じました。ノートPCの内蔵Webカメラを使った場合、パネルの角度やイスの高さによって人物の顔の位置が画面上や画面下に偏り、不自然な描写になることがあります。Insta360 Linkがあれば、パネルの角度にかかわらず人物が中心に配置されるので、好ましい描写をキープできます。無料で提供されるユーティリティ「Link Contoller」を使えば、カメラの向きやデジタルズームを手動で調整できます。
オートフォーカスは高速、画質も上々
もう1つ特筆できるのが、オートフォーカスの素早さ。位相差AFの技術が用いられており、素早くピントが合います。人物の前に商品を差し出すとサッとピントがそちらに写り、商品をフレームから外すとピントが人物の顔にサッと戻ります。商品レビュー系のYouTubeを制作している人には魅力的な機能といえます。
1/2インチの大型センサーを搭載しているだけあり、画質も優れています。一般的なノートPCの内蔵Webカメラと比べると、精細感の高さや肌の表現の自然な感じ、ホワイトバランスの忠実さなど、ひとまわり以上は優れていると感じました。
万人向けではないが、動画配信を1人でこなしたい人は注目
人物の自動追尾機能は、アップルのiPad ProやiPad Airが「センターフレーム」として搭載しています。こちらは、画像の一部を拡大するデジタルズームでの追尾となるため、画質がある程度悪くなるのと、追従できる範囲がそれほど広くないのが欠点。Insta360 Linkは、ジンバルが左右方向に240度前後まで広範囲に動き、どんなに動いてもデジタルズームのように画質が劣化したりゆがんだりすることはありません。これはデジタル処理では成し得ないポイントといえます。
このように優れた点が多いInsta360 Linkですが、悩ましいのが45,800円という価格。Zoomを高画質にしたい…程度に考える人にとっては確実にオーバースペックですが、動画配信を手がける人にとっては魅力的な存在になりそう。小型軽量でワンオペでも手軽に扱えるのに、ライバルと差を付けられる不思議な映像が得られるからです。
もちろん、普通のビジネスパーソンがネット会議に使ったら、「カメラは何使っているんですか?」と話のつかみが得られるかもしれません。実用性と話題性をもたらしてくれる新趣向の製品として、ガジェット好きな人も注目に値する製品だと感じました。