夏本番となり、エアコンが欠かせない猛暑日が続きます。しかし、エアコンをつけたままだと空気が乾燥して、喉がイガイガしたり、むずむずしたり、喉の痛みに悩む人も多いのではないでしょうか。喉が痛くなってしまった場合の対策と予防策について医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センターの中路幸之助先生に教えていただきました。
――なぜエアコンで喉が痛くなるのでしょうか。原因を教えてください。
今年の夏は例年より気温が高い日が続いています。熱中症の予防にはエアコンの適切な使用は欠かせまん。夜間も気温は下がらずエアコンをつけて寝る方が多いと思います。エアコンの機能として、室内の水分を含む空気中ごと内部に吸い込む仕組みがあり、そのため室内は乾燥してしまいます。エアコンで喉が痛くなる原因は、この室内の空気の乾燥が主な原因と考えられており、この乾燥した空気を吸い込むことで、咽頭・喉頭・気管が水分の不足を来し、喉に痛みが発生します。
その他の原因として、冷房を使用するとエアコン内部は湿った状態になり、カビや菌が繁殖しやすい環境となります。エアコン内部にカビや菌が発生したまま運転すると、エアコンの風とともにカビの胞子や菌が室内に拡散されます。それらを吸い込むと、喉に付着して痛みの症状を引き起こす場合があります。カビは夏の時期に多く見られる「夏型過敏性肺炎」の原因であり、エアコン内部で繁殖したカビを吸い込むことも原因の一つで、夏型過敏性肺炎は喉の痛みほかに、咳や発熱など肺炎の症状が出現するため、抗生物質で治療します。
しかし、いったん治っても同じようにカビを吸い込めば再発するので注意が必要です。カビや菌を吸い込むとこれら喉や肺に悪影響がありますので、エアコンの手入れは季節の変わりめには定期的に行いましょう。
――基本的に痛みはどのくらいで治るのでしょうか?
個人差はありますが、概ね数日の経過で改善する場合が多いと思われます。普段鼻から息を吸わずに口から息をすうタイプの「口呼吸」をする人は口の内がより乾燥して症状が長引く可能性があります。いずれにしても、数日の改善が見られない場合は他の病気の可能性を考なければなりません。
長引く喉の痛みには、睡眠時無呼吸症候群、肺炎、鼻炎、などの病気が関与している可能性があり、内科・呼吸器科・耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。また鑑別すべき重要な病気に「喉頭炎」があります。放置しておくとど命にかかわる場合があり、「息苦しい」などの症状があれば早めの耳鼻咽喉科の受診が必要です。
――また、冷房で喉を痛めたと思ったら、新型コロナウイルスに感染していたというケースが増えているそうですが、病院に行くべきタイミングや注意が必要な症状を教えてください。
やはり症状が長引く場合や発熱や咳などの他の症状が伴う場合は要注意です。自己判断せずに、医療機関に連絡をとり新型コロナウイルスの検査をすることをおすすめします。またエアコンによる乾燥で傷ついた喉の粘膜にはウイルスが付着して炎症を起こしやすくなったり、ウイルスを体外に排泄する力が弱まると言われており悪循環を来しかねません。
――夏本番となり、冷房が欠かせない時期になります。エアコンから喉の痛みを事前に防ぐ方法はありますでしょうか?
まずエアコンのコントロールが肝要と考えられます。就寝時にエアコンを使う場合は、エアコンの風が直接体に当たらない様にし、脱水による喉の乾燥を予防しましょう。加湿器やマスク着用の着用や濡れたタオルなどをかけて寝るなどの加湿も一緒に行うこともおすすめです。また、扇風機などで室内の空気を循環させること、水分をこまめにとることも大切です。そのほか、使っているエアコンが湿度を調整できるタイプかどうか確認してみましょう。
――万が一喉が痛くなってしまったときは、痛みを和らげる方法について教えてください。
喉が痛くなった際の対症療法には外用薬と内服薬にわかれます。軽度な場合はうがい薬やスプレー・トローチが有効です。痛みが強い場合はトラネキサム酸やアセトアミノフェンなどの消炎鎮痛剤が効果があります。またハチミツ(1歳未満の乳児には食べてさせないでください)やレモン・大根なども有効と言われています。
――喉が痛い時に避けた方がよい食べ物/飲み物などあれば教えてください。
極端に辛いもや熱いのは喉に刺激があり避けるべきで、消化の良いものを食べましょう。その他、炭酸水は喉を直接刺激するため避けた方が良いですね。またコーヒーやアルコールはそれ自体利尿作用があり、脱水傾向となるためより喉が乾燥しやすくなるので避けましょう。
夏休みにお出かけの予定を立てている人も多いはず。体調を崩して予定が台無しにならないよう、正しい予防と対策で夏を楽しく乗り切りましょう。
監修ドクター:中路 幸之助先生
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター/米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医/日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医
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