安定した低金利が続く住宅ローンの変動金利。最優遇でauじぶん銀行が0.2%台、新生銀行、PayPay銀行が0.3%台の金利引き下げキャンペーンを展開しているほか、今月に入ってからはソニー銀行も変動金利を引き下げるなど、各銀行の金利引き下げの動きは過熱しています。

なぜこのような状況になっているのか、低金利はいつまで続くのか、住宅ローン比較サービス「モゲチェック」の塩澤崇COOに聞きました。

  • ※画像はイメージ

■住宅ローンをWebで比較する人が増加、固定金利の高止まりも背景に

――各銀行が住宅ローンの変動金利を引き下げるキャンペーンを続々発表しています。いま、銀行間の競争が過熱しているのはなぜなのでしょうか?

大きな理由としては、コロナ禍もあり、住宅ローンをウェブで比較する人が増えているからだと思います。住宅金融支援機構が毎年調査している「住宅ローン選びに役立った情報源は何か?」のアンケート結果を見ると、この10年で「インターネット」と「不動産営業マン」の差が縮まっています※。

不動産営業マンが身振り手振りで商品説明するのとは異なり、ウェブ上では細かいローン商品の差別化はしづらく、どうしても金利競争になりがちです。ですので、集客を強化するために金利を引き下げざるを得ない状況にあると考えています。

また、固定金利が高止まりしているため、固定金利ではなく変動金利を第一に検討する人が依然多い状況です。ですので、金利引き下げも変動金利がメインとなっているのでしょう。

※2012年の調査では「不動産営業マン」と回答した割合が45%、「インターネット」と回答した割合が12%だったのに対し、2021年では「不動産営業マン」が40%、「インターネット」が26%と差が縮まっている。

■変動金利は「0.3%台」の戦いに突入

――具体的にどういった銀行が、どれくらい金利を引き下げているのでしょうか?

最近、金利を引き下げた銀行は、モゲチェックで把握している中では下記の通りです。ネット銀行を中心に低金利を訴求しています。

<新規借り入れ・借り換え両方>

  • auじぶん銀行:0.410%→0.289%
  • ソニー銀行:0.457%→0.397%(新規借り入れ)/0.507%→0.447%(借り換え)

<借り換えのみ>

  • PayPay銀行:0.380%→0.330%
  • 新生銀行:0.450%→0.350%
  • りそな銀行:0.430%→0.370%

※適用には条件があります。詳しくは各銀行のウェブサイトをご覧下さい。

――低金利に加え、物価の上昇などもあり、借り換え需要も増えていますか?

モゲチェックの借り換えサービスを申し込むユーザーは、非常に増えています。毎月1,000名~1,500名程度の利用者があり、物価上昇があまり見られなかった昨年との比較では2倍近い増加です。各銀行の金利引き下げキャンペーンもあり、今後もユーザーニーズが強い状況が続くと考えています。

■変動金利の低金利は当面続く

――変動金利の低金利の流れはいつまで続くと考えていらっしゃいますか?

変動金利は日銀のマイナス金利政策と密接に結びついています。7月20日の日銀金融政策決定会合で黒田総裁は「持続的なインフレ2%達成まで粘り強く金融緩和を続行する」と宣言しており、当面は変動金利も低いままでしょう。

なお、住宅ローンの借り換えメリット額(借り換えでお得になる金額)は、ローン返済が進めば進むほど目減りしていきます。ですので、家計改善が気になる方は今すぐ借り換えに動かないと損です。まずは借り換えのシミュレーターを活用し、いくらお得になるか、目安を把握することをお勧めします。

塩澤崇(しおざわ・たかし)/株式会社MFS 取締役COO

2006年に東京大学大学院情報理工学系研究科修了後、モルガン・スタンレー証券株式会社にて住宅ローン証券化ビジネスに参画。モーゲージバンクの設立やマーケティング戦略立案、当局対応を担当。2009年、ボストン・コンサルティング・グループで、メガバンク・証券・生保の国内営業戦略・アジア進出ロードマップ等の経営コンサルティングに従事した後、2015年9月より現職。