給与を受け取る時に、所得税や住民税がいくら引かれているのか分からない、収入は上がったが思いのほか手取りの金額が増えていないといった方は少なくないのではないでしょうか? 1年間のお金の使い方次第で、税金の負担を少なくすることや、節税対策をしながら効率的にお金を増やすことが可能です。 今回の記事では、所得税・住民税の税額計算の仕組み、主な節税対策の方法について解説します。
税額ってどうやって決まるの?
税額はどのように決まっているのでしょうか。税額の計算を知るためには、まず所得税と住民税に関して理解を深める必要があります。
今回は、年収500万円(給与所得)の独身の方のケースで解説します。
所得税の場合
所得税は、年間に得た所得に対する税金です。所得税計算の大きな流れは、下記の通りです。
・総所得金額-所得控除=課税所得金額
・(課税所得金額×税率)-税額控除=源泉徴収税額
①課税所得金額の計算 課税所得金額は、1年間の所得の合計額から所得控除を差し引いた額です。
所得控除は、全13種類あります。このうち、会社員の方は、「給与所得控除」や「社会保険料控除」で差し引くことができます。社会保険料控除は、医療保険料、年金保険料、介護保険料、雇用保険料、労災保険料に関する控除のことです。今回は、社会保険料控除を70万円と仮定して計算をします。後述の節税対策を行う場合、こういった所得控除を上手に活用することがポイントです。
年収500万円(給与所得)の独身の方を例に計算すると、以下の計算式になります。
総所得金額(500万円)-基礎控除(48万円)-給与所得控除(144万円)-社会保険料控除(70万円)=課税所得金額(238万円)
※給与所得控除の計算:500万円×20%+44万円=144万円
②源泉徴収税額の計算 源泉徴収税額は、所得税を算出する時に使う金額です。
税率・税額控除額は、一律ではなく、課税所得金額によって変わってきます。
例えば、課税所得金額が238万円の場合、税率10%・税額控除97,500円です。以下のような計算式になります。
(2,380,000円×10%)-97,500円=140,500円…A
この場合、140,500円が源泉徴収税額(所得税での負担額)になります。
住民税の場合
住民税の金額は、「所得割」と「均等割」の合計額です。
・所得割・・・前年の所得に税率をかけて計算 ・均等割・・・前年の所得が一定以上だと一律で課税
①所得割の計算 給与所得から所得控除を差し引いて千円未満を切り捨てたものが、住民税の計算の元になります。 上記の所得税の計算を例にあてはめると、以下の計算式になります。
※都道府県民税4%、市区町村民税6%=合計10%
・都道府県民税 2,380,000円×4%=95,200円
・市区町村民税 2,380,000円×6%=142,800円
・控除後、都道府県民税4% 95,200円-2,000円=93,200円→93,000円(百円未満切捨)…B
・控除後、市区町村民税1% 142,800円-9,504円=133,296円→133,000円(百円未満切捨)…C
所得割額:B+C=384,000円
②均等割の計算 均等割額:A×10%=14,050円
住民税額 384,000円+14,050円=398,050円
節税対策とは
節税対策とは、税金の負担を軽くするために行う対策のことです。日本の税制は、「超過累進税率」で、所得が高い方には高い税率を課す仕組みです。逆に言えば、課税される所得が低ければ、それだけ負担する税金が安くなり、節税につながると言えます。年収500万円以上の方は、節税対策をしていくと、税金の負担も軽減され、特にメリットがあります。
10万円以上節税出来る方法は?
以下の制度や金融商品を活用することで、所得控除(税金の計算上で所得を減らす)ができ、節税できます。ここでは、10万円以上節税が出来る方法をご紹介していきます。
ふるさと納税
ふるさと納税は、自分の好きな地方自治体に寄付をすることで、所得控除のひとつである「寄付金控除」を受けることができる制度です。控除の上限額の範囲内であれば、寄付をした金額が翌年の住民税額から控除されます。
自治体からは、寄付をした金額に応じて、自己負担2,000円で名産品などを入手できるお得な制度です。
個人型確定拠出年金(iDeCo)
個人型確定拠出年金は、老後の資産形成を目的とした制度です。金融機関(銀行や証券会社など)を自分で選択して加入します。毎月積み立てをしながら、運用商品を選択し、60歳まで運用します。
掛金は、全額「社会保険料控除」で、運用で得た利益(運用益)に対して課税されないため、節税効果も大きいです。
ただし、積み立てたお金は60歳まで引き出しが出来ない点や、運用商品によっては、運用実績に応じて元本割れしてしまう可能性もあるため、注意が必要です。
保険料控除
生命保険に加入し、保険料を支払っている方が活用できるものが「保険料控除」です。保険料控除は、以下の3種類です。
・一般生命保険料控除・・・死亡時や高度障害時の万が一の場合に備える生命保険の保険料に対する控除
・介護医療保険料控除・・・病気やケガ、介護などの保証をする医療保険や介護保険に支払う保険料に対する控除
・個人年金保険料控除・・・個人年金保険に加入し、積み立てた保険料に対する控除
注)個人年金保険料控除を受けるためには、以下の要件をすべて満たし、かつ「個人年金保険料税制適格特約」を付加することが必須です。
・年金受取人が契約者、その配偶者のいずれかであること
・年金受取人=被保険者であること
・保険料払込期間が10年以上あること
・年金種類が確定年金や有期年金の場合、年金の受け取り開始年齢が60歳以上、かつ受取期間が10年以上あること
各保険料控除毎に最大で、所得税4万円の控除が適用されるため、所得税で最大12万円の控除を受けることができます。
医療費控除・セルフメディケーション税制
医療費控除は、1年間で自分または、配偶者や親族のために支払った医療費が一定額を超えた場合に活用できます。
ただし、配偶者や親族は納税者本人と生計を一にしていることが条件です。
医療費控除額の計算方法は、以下の通りです。
・医療費控除額(上限200万円)=実際に支払った医療費の合計から民間の医療保険などで補填された額を引いた金額-10万円
・総所得金額が200万円以下の場合、10万円ではなく、総所得金額の5%が控除されます。
控除対象の医療費には、出産費用や入院費用なども含めることができます。
セルフメディケーション税制は、薬局やドラッグストアなど、自分で選び、対面で購入できるOTC医薬品(薬局・薬店・ドラッグストアなどで処方せん無しに購入できる医薬品)の購入費用のうち、12,000円を超える部分を所得控除の対象にすることができます。所得控除の上限額は、88,000円です。
利用する際の注意点は、以下です。
・上述の医療費控除とセルフメディケーション税制を併用できないこと。
・予防接種や健康診断の受診など、健康のための取り組みを行っていることが要件であること。(自分自身で健康管理を行い、軽い症状などOTC医薬品を利用して健康を管理するセルフケア推進が目的であるため。)
まとめ
今回のコラムでは、年収500万円の会社員の独身の方を例に、所得税・住民税計算の仕組みや、節税対策について解説しました。1年間で投資の収益がある方や、副業などで会社以外での収入がある方は、一般的に、税計算がより複雑になります。また、ご結婚されている方や、お子さんがいらっしゃる方の場合に活用できる控除もあります。ご家庭の状況に応じて、効果的な節税対策も変わってきますので、税理士と相談をして対策をしていくとよいでしょう。
この記事を執筆したファイナンシャルプランナー
倉知洋平(くらちようへい)
所属:株式会社マネープランナーズ