ランボルギーニの新型車「ウラカン テクニカ」を試しにスペイン・バレンシアを訪れると、試乗会場の「バレンシア・サーキット」(通称:リカルド・トルモサーキット)には同社CEOのステファン・ヴィンケルマン氏が。こうしたイベントには必ず自ら参加することを信条としているヴィンケルマンCEOは、はるばる日本から取材に訪れた我々のために、タイトなスケジュールにもかかわらずきちんとインタビューの時間を作ってくれた。ピット上にあるラウンジで行った対話の模様は以下の通りだ。
テクニカで狙う有終の美?
――まずはテクニカの立ち位置を教えてください。
ヴィンケルマンCEO:テクニカはウラカンが4WDから2WDに移行する流れの中で、新しいポジションを獲得しました。先に出した「ウラカン STO」がサーキットでのトップパフォーマンスを目指したのに対して、テクニカは全てのシチュエーションで「Fun to Drive」が実現できるクルマとして開発しました。
ストラテジーを変えたのは、レンジを拡大することで数(販売台数)が見込めるからです。来年から始まる電動化までの間に、コンベンショナルモデルの新しいものを作りたかった、そしてその最後を飾るクルマを創りたかった、というのもありました。
テクニカは「ラストウラカン」ではありませんが(2022年8月に「ウルス」のハイパフォーマンスモデル、同年12月にはウラカンのラストモデルを発表予定)、V10(V型10気筒エンジン)スーパースポーツとしてドライビングとサウンドが素晴らしいモデルになっています。
「ミウラ」が1,000台、「クンタッチ」(カウンタック)が2,000台、「ディアブロ」が3,000台と新モデルが出るごとに販売台数が増えていきましたが、「アヴェンタドール」は1.1万台、ウラカンでは2万台を達成しました。
――テクニカを購入するユーザーは?
ヴィンケルマンCEO:4WDのウラカンを持っているけれども、やっぱり2WDが欲しいというリピーターの方もいらっしゃいますし、スポーツカーから新たにスーパーカーに乗り換える方もいらっしゃいます。数が増えることは、ユーザーにとってもメーカーにとってもプラス・プラスの効果となっています。
――ネクストランボにつて教えてください。
ヴィンケルマンCEO:ハイブランドとして、V12やV10の後継(=電動化)を考える場合には、「デザイン」「スタイル」「パフォーマンス」「サウンド」という4つのエレメントがあります。中でも“音”については、電動化しても同じようなものが続けられるかどうか、可能性を今も研究中です。
最近ではランボユーザーが新しいジェネレーションに変わりつつありますから、ビジネスも変わる可能性があるんです。しかし、我々のカスタマーというのは、クルマを必要として買うのではなく、夢のクルマを求める方なのですから、これからも常にその解決策や対応策を考えていく必要があります。また、内燃機関とEVの共存も探っています。
「コル・タウリ」(電動化への道)としては2023年に最初のPHEV(プラグインハイブリッド車)モデルを発表、2024年には全てのレンジをハイブリッド化し、2025年にCO2の50%削減、2028年は最初のフルEV(電気自動車)モデルを登場させる予定です。スーパーカーとしてまだまだやることはありますし、さらに2プラス2のGTカーも計画しています。この流れは我々のカスタマーも理解してくれていますし、必ず達成しなければなりません。
――フェラーリやマクラーレンからは、電動化によってV6モデルなども登場していますが。
ヴィンケルマンCEO:まずはアヴェンタドールの後継としてV12+PHEVのモデルが登場します。V10の後継としてはまだ「I don't know」ですね。V8? V6? そのあたりについては、うーん、今はなんともお答えすることができません。
――「eフューエル」(e-fuel、合成燃料)については?
ヴィンケルマンCEO:日本の中古車は、何年くらい経過したものが多いのでしょうか。10年くらいですか? つまり、2030年にも内燃機関のクルマはたくさん残っているはずです。そのためにはeフューエルに対応する必要があるかもしれませんが、規模の小さな我が社としては、2つに対応するのは無理ですし、1つに集中したい。eフューエルは船や飛行機に向いているのではないかと思っています。
――環境対策について、現状は?
ヴィンケルマンCEO:生産しているクルマだけでなく、工場も毎年変わっています。あなたが2019年に視察した本社工場は、今ではサイズが拡大されているだけでなく、サステナビリティについてのモニタリングがサプライチェーンにまで広がっています。工場視察の際にも話題に上がった「パルコデ ランボ」(環境対策として植林などを行い、工場周辺に広がるランボルギーニ公園)で飼っているミツバチは今でも元気で、そこで取れたハチミツは退職者たちへのグッバイイベントなどでも配布されています(周囲から「いい会社ですねー」の声が上がる)。
ウラカンについては初代「LP610-4」を富士スピードウェイや米国コロラドのサーキット、サンフランシスコの街中、北海道の大自然の中で走らせた経験があるし、RWDの「LP580-2」(580HP)には2016年にヘビーウェットの鈴鹿サーキットで試乗した。2017年には640HPまでパワーアップした「LP640-4」のペルフォマンテに富士で乗り、2019年の「EVO」では、ランボ本社があるイタリア・サンタアーガタから北イタリアのアルプスのワインディングまで往復(一部はアイスバーン!)したことも。2020年に登場した「STO」(ほぼサーキットバージョン)は、最適な舞台である富士で体験していた。そして今回、テクニカにスペインで乗ることができた。
2022年12月に登場するラストウラカンには、どこで乗るのだろうか。ヴィンケルマンCEOの話を聞きながら、自然吸気の大排気量エンジンを搭載したウラカンの最終章がちょっと寂しいような、そしてとても楽みなような、複雑な気分に包まれた。