国土交通省は、障害当事者団体・鉄道事業者・国土交通省の3者による意見交換会の議論を踏まえ、「駅の無人化に伴う安全・円滑な駅利用に関するガイドライン」を策定し、このほど公表した。

  • JR九州では、今年3月から新たに29駅が終日駅係員不在の無人駅に(写真は久大本線南久留米駅)

鉄道利用の減少や人手不足から、無人駅は近年増加傾向にある。こうした中、障害当事者から安全かつ円滑に無人駅を利用するための要望が寄せられていたことを受け、2020年のバリアフリー法改正審議の議決時に、無人駅の利用に関するガイドライン化を求める付帯決議がなされていた。これにもとづき、同年11月に意見交換会が設置され、議論を経てガイドラインを策定したという。

公表されたガイドラインは、障害当事者による無人駅の利用について、「ハード対策・ソフト対策一体の環境整備を行うことが重要」と基本方針を示しており、自治体・地元企業等との連携や委託を通じた駅運営も有効な取組みであるとした。具体例として、郵便局に駅窓口乗車券販売業務を委託している例(JR東日本)や、駅ににぎわい施設を併設し、自治体がきっぷ販売を担っている例(JR四国)を紹介している。

  • ガイドラインが描く望ましい無人駅のイメージ(出典 : 国土交通省報道発表資料)

視覚・聴覚・車いす等の障害特性に応じた情報提供も重要とし、運行情報ディスプレイ、カメラやモニター付きの自動券売機、遠隔監視システム、音声読み上げ機能を有する駅構内図、お問い合わせAIチャットボットなどを具体例として挙げた。異常時の情報提供として、ディスプレイや案内放送に加え、SNSによる情報発信と運行情報にアクセスできる二次元バーコードの利用を例示している。介助を必要とする人が事前連絡する手段として、インターネットの活用と専用アプリを通じた利用者情報の社内共有も推奨している。

また、視覚障害者・盲導犬セミナーを実施している小田急電鉄や、オンラインと対面で手話教室を実施している交通エコモ財団を例に出し、障害当事者の参加による体験会・訓練会、障害当事者を講師とする講習会、バリアフリー教室などを開くことも、無人駅の機能向上に資するとした。