この記事では、「牧歌的」の意味や読み方、例文を交えた使い方を解説します。「牧歌的」は使い方によっては皮肉や悪い意味にとらえられてしまう可能性もあるので、注意が必要です。また類語や対義語、英語表現なども紹介します。
正しい使い方を身に付けて、適切なタイミングで「牧歌的」を使いこなせるようにしましょう。
「牧歌的」の意味とは
「牧歌的」とは、まるで牧歌のように素朴で、情感にあふれた様子のことです。牧歌とは「羊飼い、牛や馬などの番をする者など、牧人がうたう歌」あるいは「牧人や農夫の歌のような、田園での生活をテーマとした曲や詩などの文学作品」のことなので、「牧歌的」とは「広がる田畑を連想させるような、飾り気がなく心に染み入るようなのんびりとした様子」ととらえるといいでしょう。
皮肉や悪い意味にも使われる?
「牧歌的」は基本的に、「素朴で心に訴えるものがある」という良い意味の表現です。しかし、田園とは田舎を意味する言葉でもあることから、使い方によっては遠回しに「田舎くさい」「やぼったい」「地味」「どんくさい」などの嫌みを言っているととらえられてしまう可能性もあります。文脈や使用する場面に注意し、誤解を招かないようにしましょう。
「牧歌的」の読み方
読み方は「ぼっかてき」です。
「牧歌的」の使い方と例文
「牧歌的」の使い方について、代表的なフレーズとその意味を解説します。例文も併せて確認しましょう。
牧歌的風景
「牧歌的風景」とは、牧歌がイメージされるような田園やのんびりした田舎の様子を表します。緑が豊かで素朴な人たちが暮らす、のどかな情景のことです。
- 草地に放牧される羊を描いた、牧歌的風景の絵画を部屋に飾った
- 電車を降りると、一面の田畑という牧歌的風景が広がっていた
牧歌的な生活・牧歌的な暮らし
「牧歌的な生活」「牧歌的な暮らし」とは、ゆったりと時間が流れる、ゆとりを大切にする生活のことです。仕事や時間に追われることなく、穏やかに毎日を過ごす暮らしを指します。
- 都会の暮らしに疲れた夫婦は、牧歌的な生活を求めて地方に移住した
- 今まで牧歌的な生活をしてきた母は、都会の暮らしに戸惑っていた
牧歌的な人
「牧歌的な人」とは、素朴でおおらかな性格、また温厚で平和主義な人のことを指す表現です。のんびりして、一緒にいて落ち着くようなタイプの人に対する褒め言葉として使える一方、使い方によっては「田舎くさい」「どんくさい」というような悪い意味に感じる人もいるので注意が必要です。
- 友人の結婚した相手は包容力のある牧歌的な人だった
- 牧歌的な彼女は、いつも穏やかなので一緒にいるだけで心が和む
牧歌的な曲・牧歌的なサウンド
「牧歌的な曲」「牧歌的なサウンド」とは、のんびりして田舎を思わせるような音楽のことを指します。アコースティックギターを使ったものやカントリーミュージックなど、テンポがゆったりとして心が穏やかになるような曲のことです。
- 牧歌的な曲を聴いていると心が癒やされる
- 落ち着いたカフェの雰囲気に牧歌的なサウンドがマッチしていた
牧歌的なファッション
「牧歌的なファッション」とは、落ち着いたデザインや色合いの服装、あるいはゆったりと素朴で、リラックス感のある服装のことを指します。
- プライベートの彼女は、ゆったりしたブラウスにロングスカートを合わせた牧歌的なファッションで現れた
- 気楽さとおしゃれさを両立させる牧歌的なファッションが、私の最近のお気に入りのスタイルだ
牧歌的な社風
「牧歌的な社風」とは、素朴で社員同士の仲が良く、良い意味でおおらかな会社のことを指します。社員間の争いもなく、人間関係の良い職場であることを表しているでしょう。
- 牧歌的な社風の会社に入社した新人は、会社の皆からかわいがられた
- その会社は牧歌的な社風だったから、権力争いなどはなかった
「牧歌的」の類語・言い換え
「牧歌的」の類語には以下のものがあります。よりニュアンスの近い言葉を選び、自分の気持ちを正確に伝えるようにしましょう。
のどか
「のどか」とは、漢字で書くと「長閑」で、のんびりとして穏やかな様子や、静かで落ち着いた性格や動作などを表す言葉です。「のどかな風景」というと、ゆったりとしてせかせかしていない田舎の風景を想像する人も多いでしょう。特に春の、晴れて過ごしやすい天気のことも指します。
素朴
「素朴」とは、ありのままや自然のままに近いことや単純なこと、気取ったところや飾ったところのない素直な性格のことを指します。例えば「素朴な料理」といえば味付けや調理に凝っていないシンプルな料理を、「素朴な性格」といえば裏表がなく素直な人を指します。
田舎風
「田舎風」とは、田舎という語でイメージされる様子、つまり都会から離れた、田畑が多かったりへんぴであったり、あるいは素朴でのどかである様子を表します。「田舎風スープ」など、名詞に付けて使われることの多い表現です。
ローカル
「ローカル」は、田舎っぽい様子や都会に対しての地方っぽさのことです。新聞のローカル紙やテレビのローカル局など、単に「その地方の」「局地的な」という意味もあります。
ただし、英語の「local」という言葉は「ある地方の」や「地元の」を意味し、「田舎の」という意味はないため注意しましょう。日本語の「ローカル」のニュアンスに近いのは「provincial」などです。
叙情的・抒情的(じょじょうてき)
「叙情的」「抒情的」とは、感情を豊かに伝える、述べる様子を表します。さまざまな感情を揺さぶられるような風景や作品などに対して、よく使用されます。
ひなびた
「ひなびた」は漢字で「鄙びた」と書き、田舎っぽい、いかにも田舎である様子のことを指します。そもそも「鄙」とは都会から離れた場所、田舎のことで、そこに「~のようになる」という意味であり「大人びる」などにも使われる接尾語の「びる」を付けています。
「牧歌的」の対義語
「牧歌的」の対義語には以下のものがあります。
忙しい(せわしい)・忙しない(せわしない)
「忙しい(せわしい)」は、用事が多くて休む暇もない、せかせかして落ち着かない様子などを表す言葉です。「仕事に追われて忙しい毎日」などのように使います。
意味を強める接尾語「ない」がついた「忙しない(せわしない)」も同様の意味です。
慌ただしい
「慌ただしい」とは、物事の移り変わりが早い様子やせわしなく落ち着かない様子、余裕がない状況や動作を指します。
目まぐるしい(めまぐるしい)
「目まぐるしい」とは、物事の移り変わりや動きが激しくて慌ただしく、目がちらちらする様子を指します。「目まぐるしく順位が入れ替わる」「世の中の変化が目まぐるしい」のように使います。
都会的
「都会的」とは、都会に見られるような傾向があることで、具体的には洗練されている様子や発展している様子などを指します。
アーバン
「アーバン(urban)」も都会的な様子のことを表す言葉で、他の語の前について「都市的な」「都会の」という意味を表すこともできます。例えば「アーバンウエア」なら、都会の街中を歩くための洗練されたファッションのことです。
「牧歌的」の英語表現
「牧歌的」の英語は、「idyllic(牧歌的な、すばらしい、美しい)」「pastoral(牧歌的な、田舎の)」「bucolic(牧歌的な、田舎風の)」などです。褒め言葉として牧歌的を使う場合は、ポジティブなイメージが強い「idyllic」を使うといいでしょう。
例文
-
How idyllic and lovely to have a picnic on the hills on a sunny day.
(晴れた日に丘の上でピクニックなんて、牧歌的でなんてすてきなんでしょう) -
Reading this pastoral novel which is written about the Showa era, made me think back to that time.
(昭和時代について書かれた牧歌的な小説を読み、私は当時に思いをはせた) -
More and more people are moving to rural areas after retirement, attracted by the bucolic lifestyle.
(牧歌的な生活に魅力を感じ、定年後に農村に移住する人が増えている)
「牧歌的」は自然のままでのどかな様子を表す言葉
のどかでゆったりとした、心に染み入る様子を表す「牧歌的」。良い意味での田舎っぽさを表す肯定的な言葉ですが、言い方や使い方によっては「田舎くさい」「やぼったい」などの皮肉のようになってしまうこともありますので注意が必要です。
「素朴で素敵だな」と思ったものに対してその感情を上手に表現できるように、「牧歌的」という言葉の意味や使い方をマスターしましょう。