キングジムの「ポメラ」といえば、ファンも多い文書作成ツール。一見小さなパソコンのようですが、液晶画面はモノクロ。さらに、できることは文書作成のみという潔さが特徴で、WEB閲覧やSNS、メールのチェックもできません。ただし、その分サクサクと動作し、さらにバッテリーの持ちも抜群。コンパクトでパソコンよりも持ち運びしやすいというメリットもあります。
文字を書くことを生業とする愛用者も多く、筆者も6年ほどポメラDM200(2016年10月発売)のヘビーユーザーです。そんなポメラの上位モデルに新製品DM250が登場! ポメラを愛する“ポメラニアン”としては使わないわけにはいきません。
新ポメラDM250の進化点をチェック
新モデルDM250のサイズは、幅263×奥行き120×高さ18mmと、従来製品DM200と同じ。デザインも、本体色が黒からグレーに変わったくらいで、ほとんど見た目の違いはありません。
ただし、内部はほぼ一から設計し直しているとのことで、重さは約620gと少々重くなりました。旧モデルとの違いは40gほどなので「重くなった」と感じるほどではありませんが、最近は630g台の超軽量13インチノートPCも出てきているだけに、初めてポメラを触るユーザーは「思ったよりズッシリする」と感じるかもしれません。
とはいえ、この重量のおかげで、膝上での使用が安定するので、デメリットばかりともいえないのです。
充電周りがより便利に、待望のType-C対応
旧機種とのわかりやすい変更点はバッテリーまわり。まず、従来は充電端子にUSB Type-Bを採用していましたが、新製品ではType-C端子に変更となりました。このため、DM250はバッテリー駆動時間が24時間と、旧機種より6時間も使用時間が延びているにも関わらず、充電時間は約4時間。旧機種より1時間も短くなっています。
充電確認用のLEDも搭載されました。従来製品は、ちゃんと充電されているかどうか、本体を開いてチェックする必要がありましたが、新モデルは本体を閉じた状態でも充電が確認できます。筆者の家ではたまに、ケーブル側の不調でケーブルを挿していても充電されないことがあるので、この機能は地味ながら個人的にかなり嬉しいポイントでした。
このほか、文章入力中にバッテリー残量の「%」と、入力文字数が、画面下ステータスバーに表示されるようになりました。
従来までは「文章入力に集中できるように余計な情報を表示しない」という意図か最低限の情報しか表示されませんでした。とはいえ、筆者のようなライター常に文字数を把握しておきたいもの。今回はそんな筆者のようなユーザーにとって嬉しい進化でした。
ただ、ユーザーによって表示させておきたい情報は異なるので、今後は表示させる項目を自分で選べるようになると嬉しいですね。ちなみに「余計な情報は何ひとつ表示したくない」という人は、入力文章以外をすべて隠す「全画面表示」にすることも可能です。
文字入力が強化! ゴミ箱機能で安心感アップ
ポメラはテキスト入力ツールということで、文字入力機能も強化しています。日本語変換ソフトには従来から引き続き「ATOK for pomera[professional]」を搭載。もともと、入力した文章の文脈を判断して、かしこく日本語変換してくれるソフトでしたが、新モデルではさらに校正支援機能が追加されました。
たとえば「ふんいき」を「ふいんき」と間違えて入力すると「ふんいきの誤り」とすかさず訂正してくれます。このような打ち間違いだけではなく、「物議を呼ぶ(正しくは物議を醸す)」といった誤用されやすい慣用句の間違いまで正してくれます。
ATOKといえば、確定した文章の文字変換をし直せる「確定アンドゥ」が特徴的ですが、DM250ではこの確定アンドゥが連続使用できるようになったのも注目ポイントです。こちらも長文を入力するときは力を発揮してくれる機能です。
文章の入力しやすさ以外も強化されています。たとえば、従来までは1ファイル10万字までだった保存文字数が、倍の20万字に拡張されました。一般的な単行本の文字数が10万字ほどなので、長文を書きたいユーザーにはとっては嬉しい変化になりそうです。
さらに、従来は128MBだった本体メモリは1.3GBまでアップ。基本的にポメラはテキストデータしか作れないので、筆者は従来の128MBでも不満はなかったのですが(漢字ひらがななら1MBで約50万文字保存可能)、とはいえ容量が増えれば安心感はあります。
また、DM250は、大容量を活かして新しくオートバックアップ機能とゴミ箱機能も搭載しました。間違ってデータを削除したり、上書きをしても修復が可能になったのです。
細かな使い勝手までパワーアップしたDM250ですが、唯一気になるのが外部メモリーのSD/SDHCカードの最大容量が32GBのままであること。最近は安価なSDXCカードも増えているので、正直この価格帯のポメラならSDXCカードにも対応して欲しいところです。
Androidにも対応したぞ! ポメラリンク
ポメラで入力したテキストデータは、パソコンやスマートフォンに移動して利用する人がほとんど。
DM250はデータ移動にスマートフォン用の専用アプリ「pomera Link(ポメラリンク)」があり、ポメラで作成したテキストデータをQRコードに変換してスマートフォンで読み取ることができました。従来までこのアプリはiOS専用だったのですが、DM250ではAndroid 9以降にも対応しています。
さらに、DM250をWi-Fi接続し、アプリ上で本体内のデータを確認、保存する機能も新搭載しました。Wi-Fiの接続に少しタイムラグはありますが、スマートフォンへのデータ移動はかなり簡単です。ポメラで執筆した文章を、ブログやSNSなどにアップロードしたい人にとっては便利になったのではないでしょうか?
データをパソコンで利用したい筆者のようなユーザーは、従来通りSDカードや、ポメラに直接USBケーブルをつないでデータ移動させることになります。今後はぜひパソコン用無線連携ソフトも出して欲しいところです。
そもそもなぜポメラが必要なのか?
筆者はDM200から、ほとんどの取材にポメラを愛用していますが、よく言われるのが「なんでポメラなの? パソコンのほうが便利じゃない?」というもの。実際、筆者もポメラ DM200を使用するまではそう思っていました。
ポメラの魅力はなんといっても文字入力の手軽さです。本体が小さいのでパソコンほどカバンを選びませんし、膝上からはみ出ないサイズなので机のない場所での入力もしやすいです。
文字入力しかできないので、本体を開くと即座に、前に編集していた文章編集画面が立ち上がるのも便利。パソコンのように「文字編集用のソフトを起動」「編集したいファイルを選択」という手間が必要ありません。また、機能が少ないために起動時間も短く、ちょっとした移動時間でもサッと起動して使えます。
新製品のDM250を含めたDM200シリーズは、文章入力のしやすさも魅力。まず、コンパクトなボディなのにキーボードがとにかく使いやすい。キーピッチは17mmと広めで、打鍵感もコンパクトなボディに対してしっかりしています。筆者はノートPCも所有していますが、文字入力の気持ちよさはポメラのほうが上。さらに、DM250はDM200と打鍵感はほぼ同じながら、静音性が高くなっています。
日本語変換ソフトにATOK for pomera[professional]を採用し言葉の使い方を間違えにくく、横書きのほか縦書きにも対応。DM250ではシナリオモードも搭載するなど、文章入力をさまざまな面からサポート。ヘビーに文章入力をするユーザーほど、一度使い慣れたら手放せなくなるはずです。
個人的にDM200シリーズは頑丈さも大きな魅力だと感じます。前モデルのDM200は6年間ケースにもいれずカバンに放り込んで毎日雑に使っていました。しかし、キートップは打鍵しすぎてテカテカになったものの、外部の使用感はほとんどありません。
ヘビーユースするなら買い換えはアリ!
DM250を初めて見たとき、正直「前モデルDM200とほとんど変わっていないのでは?」と感じてしまうくらいデザインはそのまま。
最初はマイナーバージョンアップかと思ったのですが、実際に使ってみると「これこれ!ここの部分が不便だった!」という、実にポイントを突いた改良がされていました。とくに充電確認用のLEDと、画面下に常時表示される文字数カウンター、そして確定アンドゥの連続使用は今となっては手放せません。
ただし、本体は直販価格で60,280円と、安いノートパソコンが購入できる価格です。ライターである筆者のように文字入力時間が長いなら「アリ」と感じますが、通勤途中にちょっとブログ用の文章を入力したい……くらいの用途だとちょっと割高に感じるかもしれません。
とはいえ、わかりやすい改良だけではなく、正規表現を使った検索機能など使い込むほどに便利さが実感できる機能も数多く搭載しました。DM200が発売された6年前、これはポメラの決定版だという声がありましたが、今回まさに決定版に近づいたと感じます。