長年、各メーカーが製品を充実させているコンパクト・エフェクターのジャンルに、フェンダーが新作「Hammertone Series」をぶち込んできたのはみなさんご存じの通り。扱いやすいサイズ感と前評判の高さで気になっていた人も多いはずだ。今回は、、前回に引き続き、「Hammertone Series」シリーズの空間・モジュレーション系5種類のレビューをお届けしよう!
今回は、空間・モジュレーション系5種類のレビュー!
Hammertone Chorus
このコーラスはデプス、レイトの二種類のノブで音作りをするタイプになる。したがってサウンドメイクはシンプルになるが、パネルにある二つのミニスイッチによって、得られる効果に違いが出てくる仕様となっているのが特徴。「TYPE」のミニスイッチは上中下と3段階に切り替えられ、それによって基本的なモードが変更されていく。「TONE」のスイッチではモジュレーション効果が切り替えられる。
コーラスの効果を文字で表現するのは難しいが、いわゆる“揺れ”が派手なタイプではなく、繊細で自然な効果が得られるエフェクターという印象。選んだモードによって、繊細さやナチュラルさが変わる印象で、好みのセッティングは割と見つけやすいほうだと思う。“ゆれゆれ”が欲しい人には不向きだが、アルペジオやストロークプレイのサウンドに自然な広がりを与えたいというニーズにはとても向いているタイプになる。この辺は各人の好みによるところも多いので、動画を参考に自分で弾いて確かめてみて欲しい。
Hammertone Flanger
フランジャーらしいモジュレーション感やストリーム感のあるサウンドを表現するエフェクターになる。マニュアル、レイト、デプスのノブでサウンドをコントロールするほか、当機にもミニスイッチがついており、「RES(レゾナンス)」、「TYPE」を切り替えることも可能。これらの組み合わせによって、さまざまな効果が得ることができる。
いわゆるヴァン・ヘイレンタイプのフランジャーのような、ド派手な回転感ではないものの、音揺れを生かしたストロークプレイに向いたサウンドメイクから、王道的な使い方までそつなくこなせる印象が強い。他のエフェクターと違い、好みのサウンドを見つけるのに、トライアンドエラーが必要になると思うが、それだけ対応幅の広さを持った製品といえる。使いこなせれば印象的なサウンド作りに大きく貢献してくれるエフェクターになるだろう。
Hammertone Delay
タイム、フィードバックのノブによるサウンドコントロールと2種類のミニスイッチでさまざまな種類のディレイが再現できるエフェクター。サウンドメイク自体はシンプルだが、得られる効果の幅が広いのも魅力で、「TYPE」スイッチの切り替えで、デジタルディレイ、アナログディレイ、テープエコーの3つのモードが選択できる。
それぞれのキャラクターは明確に分かれているので、使い勝手は相当よい。また、基本となっているディレイサウンドの品質がとても高く、ハイエンド製品と比べても遜色のない残響音が得られるのがとても印象的だ。
また、「MOD(モジュレーション)」スイッチにより、コーラス効果を付加することもでき、裏蓋を開けるとアクセスできる「スピード」「デプス」のトリムポッドで得られる効果をコントロールすることも可能だ。ある程度、耳の肥えたプレイヤーが手にしても納得の品質で、入門者から上級者までおすすめしたいエフェクターに仕上がっていると感じた。
Hammertone Space Delay
HAMMERTONEの中でも個性派なエフェクターがスペースディレイになる。このエフェクターに関しては細かいことは考えず、「MOD」スイッチをオンにして、「PATTERN」スイッチで選べるリズムパターンを選択して使ってもらいたい製品になる。
残響音がリズムを刻みつつ音揺れしながら減衰していく様子はまさに“スペース感”漂う効果が出ており、ギタープレイに斬新な余韻を与えてくれるのが大きな特徴。これまでにない効果が簡単に得られるので、ただのディレイだけでは物足りないという人や、自分のプレイにエッセンスを追加したいと思っているギター弾きにぴったりの製品となっている。ワンポイントとして使うだけでも非常に効果的なエフェクターなので気になる人は要チェックだ。
Hammertone Reverb
タイム、ダンプのコントロールノブと、ホール、ルーム、プレートの3つのモードが選択できる「TYPE」スイッチ、減衰の仕方が変化する「TONE」スイッチでサウンドメイクするのが、このreverb。
こうやって解説するとセッティングが複雑に思えるかも知れないが、実際に音を出しながらやってみるととてもシンプルに狙ったリバーブサウンドを得ることができる。最初にTYPEで好みのモードを選んでからノブでコントロールし、最後にTONEスイッチをオンオフして好みの減衰の仕方を選ぶのが最短距離だと思う。
出てくるリバーブサウンドはさすがフェンダーというべき品質で、誰が聞いても納得の余韻を得ることができる。そもそもメーカー的にリバーブは得意分野ということもあって安定感はさすがの一言。初心者からベテランまでおすすめしやすい製品といえる。
【動画】レビュー動画はこちら
全9種テストしてみての感想
前回も触れたが、どのエフェクターも高品質でコストパフォーマンスの点で高い競争力を持った製品に仕上がっていると思う。全9機種を試してみて、個人的に最も気に入ったのはファズとリバーブ。この二つがあればかなり遊べるので、シンプルな構成で演奏したいときはこれらを選びたいと感じた。また、システム的にはオーバードライブ、ディストーション、ディレイも組み込んでおきたいアイテムで、これだけあれば相当幅広いジャンルの音楽に対応できると感じさせてくれる仕上がりだった(※もともとライター中山はモジュレーション系をあまり使わないタイプなのだ)。
最後になるが、フェンダー社からお借りした時点でエフェクター9台がボードにセットされていたこともあり、その状態のままレビューしたが、トゥルーバイパス方式は非常に効果的に作用していて、音ヤセなどは一切感じなかった。今皆さんが持っているシステムに追加してもまったく問題ないと思うので、気になる製品があった場合はどんどん試してみるとよいだろう。9台の個性的なエフェクターに触れてみれば、必ず気になるアイテムが見つかるはずだ。このシリーズはチェックしておいて損はないぞ!