八芳園(東京・白金台)では7月26日、リアルとオンラインのハイブリッド型 交流イベント「第2回 交流の未来」が実施された。いま人は何を求めて交流し、そこから今後、どのようなモノ・コトを生み出していくのだろうか――。業界の垣根を越えた関係者が次々と登壇し、これからの時代における"人の交流のあり方"について話し合った。
■デジタルと交流のシナジー
「デジタルと交流のシナジー」と題したセッションにはSansanの一方井辰典氏と、ジョイゾーの四宮靖隆氏が登壇。モデレーターを八芳園の原田貴誌氏が務めた。
名刺管理サービスを提供するSansanではコロナ禍前よりリモート環境を整えつつあったが、コロナ禍の現在も完全にリモートワークに振り切ることはなく、300人ほどいる社員には(基本的に)出社を推奨していると言う。「Sansanっていうシステムベンダーと、お客様という関係のなかで、お客様が実際にどういう交流を望んでいるかを大事にしています。同じサービスを使い、同じ環境にいて、同じエリアで仕事をしている、そんな方と会話をしたい、交流をしたいというお声をいただくことが増えた気がするんです」と一方井氏。
八芳園の原田氏も「オンラインを使い始めてみると、当初は『あれもこれもオンラインで良いのでは』という反応がありますが、ある一定の期間を経ると、今度は『やっぱりリアルって大事だよね』という意見も出てくる。オンラインでは伝えきれない温度感、目線ってやっぱりあると思うんですよね」。これにSansanの一方井氏も同意。今後も企業はオンとオフを使い分けながらコミュニケーションを作っていくだろうと予想した。
ジョイゾーは、サイボウズkintoneのアプリ開発支援などを行っている企業。原田氏から「交流」における自社の取り組みについて聞かれたジョイゾーの四宮氏は「コロナ禍でオフィスを縮小する流れのなか、あえて1.5倍ほど広いオフィスに引っ越しました」と明かす。その理由は「オフィスに、社員同士が交流できるワークプレイスの役割を持たせたかったから」だと言う。その結果、リモート中心だったメンバーも週1~2で出社するようになり、リアルで会話することで仕事の効率も上がり、ストレスが下がったと言う。
未来の交流について話がおよぶと、ジョイゾーの四宮氏はメタバースに期待感を示した。同社ではバーチャルオフィスのような取り組みを進めていると言う。これにSansanの一方井氏は同意しつつ、コミュニケーションの効率化により人と人が交流する時間は今後さらに短縮されるだろう、そのため短時間でいかに多くの情報を引き出せるかという次元にフェーズが移って来るのでは、と私見を述べていた。
■自然環境とDXが生み出す交流の未来
最後のセッション「自然環境とDXが生み出す交流の未来」には、SQUEEZEの舘林真一氏と、グリーンディスプレイの望月善太氏が登壇。モデレーターを八芳園の井上義則氏が務めた。
SQUEEZEは、ホテル経営のデジタル化・DXを推進する企業。八芳園の井上氏から「2050年のホテルやイベントスペースは、どんな風に変わっているのでしょうか」と話を振られると、SQUEEZEの館林氏は「すでに海外では言われていることですが、よりBYODでできることが増えていくのではと思います」と回答。Bring Your Own Device(BYOD)とは、個人のスマートフォンなどを持ち込んで操作すること。例えばホテルに宿泊したとき、利用者は自身のスマートフォンでテレビ、電気、IoT家電の操作・調整などはもちろんのこと、音や匂いまで設定できるようになり、次回以降に同じ系列のホテル(諸外国店も含む)に泊まったときには、前回の設定のまま宿泊できるメリットを得られる。ホテル側にとっても、ファシリティ(設備)に投資せずに、ソフト面からパーソナライズしていけると解説する。
植物を用いて商空間をデザインする企業、グリーンディスプレイの望月氏は「我々は植物を通して人はどういう気持ちになるか、を大切にしています。自然のものを使って、人の気持ちを後押ししてあげたり、安らいだ気持ちになってもらったり。DXが進んでいけば、できることも増えてくると思うんです。DXとは省人化ではなく、デジタルの力で従来なら実現できなかったことをできるようにしていくこと。音楽、匂いなんかと共に、人の気持ちを良い方向に向けていく、そうしたきめ細かいサービスを提供できたらと考えています」。
このあとも、ホテルとモビリティの関係、クラウドコンシェルジュについて、植物とサステナビリティ、果てはバイオマス発電について、など様々な観点から話は進行していった。
最後に八芳園の井上氏は「本日は経営者の立場から、おふたりにお話をいただきました。既存のサービスの課題点について、なぜこうなっているのか、デジタルの力があればこう改善できるのでは、またデザイン、コミュニティの力があればこんなこともできる、そんな気づきをたくさんもらいました。リアルで参加している、あるいはオンラインで参加の若い皆さんにも、色んな疑問を感じていただき、そのうえでテクノロジー、クリエイティブ、コミュニティの力でどう解決していくべきかを考える良い機会になったのではないでしょうか」とまとめた。