生理学研究所(生理研)と生命創成探究センター(ExCELLS)は7月27日、蚊の温度・痛み受容体である「TRPA1」を活性化する温度の決定に重要なアミノ酸残基を明らかにしたことを発表した。

同成果は、生理研 細胞生理研究部門の富永真琴教授(ExCELLS兼務)、同・加塩麻紀子特任准教授らの研究チームによるもの。詳細は、生物学的プロセスの分子的および細胞的基盤に関する全般を扱う学術誌「Journal of Biological Chemistry」に掲載された。

蚊はヒトなどの動物の吐くCO2や発する臭い、体温を感知して近づいてくることが知られている。このうちの体温検知に関しては、温度感受性TRPチャネルの1つであり、温度と痛みの受容体であるTRPA1が用いられていることまでは分かっているが、TRPA1がどのようにして温度を感知しているのか、そのメカニズムはまだ良く分かっていないという。

これまで研究チームは、異なる生息地の蚊を比較し、TRPA1を活性化する最も低い温度(温度しきい値)が生息地によって異なっていることを報告しており、熱帯の蚊のTRPA1は、温帯の蚊のTRPA1より8度から10度ほど高い温度で初めて活性化することなどが明らかにされてきた。

TRPA1は多くの動物が持っており、ヒトの場合はワサビの受容体であり、温度や痛み刺激を感知することが知られている。熱帯の蚊は、高い環境温度を痛み刺激と感じないようにするため、高い温度でTRPA1が活性化するように進化していったと考えられている。しかし、どのようなメカニズムでその違いが生じるのかはわかっていなかった。

そこで研究チームは今回、TRPA1のどの部分が温度受容に重要なのかの調査を実施したという。