夏休みが始まり、学生など若者のネットの利用時間やネットを通じた出会いなどが増加すると予想される7月。ByteDanceが運営するモバイル向けショートムービープラットフォームアプリ「TikTok」は、青少年の安心・安全な利用を最優先課題とし、人気クリエイターとコラボした安全啓発キャンペーンを7月19日から8月12日まで実施している。
自画撮り被害防止などをテーマとする今回の安全啓発キャンペーンの開催に伴い、7月19日には「TikTok Japan メディア説明会」が開催。同キャンペーンや同社の健全なプラットフォームの運営を目指す取り組みが紹介された。
公募クリエイターがNPOのワークショップに参加
自画撮り被害防止とネット詐欺防止を掲げる本キャンペーンには、人気お笑いコンビ「ラバーガール」やお笑いトリオ「ぱーてぃーちゃん」、TikTokの人気クリエイター・りーさ、岡野タケシ弁護士が参加。TikTok動画で被害防止に向けた啓発メッセージを発信する。
@fujicochan いつも動画をみてくれているみんなに伝えたいこと。#大切なひとを守ろう #tiktok安全推進 #tiktokpresents #pr ♬ オリジナル楽曲 - りーさ
また、そのメッセージをより多くのユーザーに届けるべく、TikTokは今回初の試みとして参加クリエイターを公募。さらに5名のTikTokクリエイターがこの啓発活動に加わっている。
「5名のクリエイターさんには、弊社が主催するNPO法人ぱっぷす様の勉強会に参加してもらい、自画撮り被害の実態や対策などについて理解を深める場を設けました。今回、より多くのユーザー様が自画撮り被害の啓発に参加できるよう、アプリ上の動画投稿で使用可能な2種類の専用ステッカーも用意しています」(TikTok Japan安全推進チーム・石谷祐真氏)
メディア説明会では、NPO法人ぱっぷす相談員・内田絵梨さん、イラスト投稿が人気のみりんさん、音楽ユニット・モフモフモーさん(ととちゃん・みみちゃん)によるトークセッションが実施された。
「ぱっぷす」はリベンジポルノや自画撮り被害など、デジタル性暴力の被害者や性風俗従事者の相談・支援を軸に、ロビー活動や広報啓発を行っている団体だ。「『ぱっぷす』にはいろんな事例や相談が寄せられますが、性被害や性暴力の問題は発信が難しい。TikTokで発信ができると、この問題を考えてくれる方が非常に増えていくんじゃないかなと期待しています。『ぱっぷす』でも何本か動画を投稿していますが、実際にTikTokを見て相談してくれる方も多いです」と内田さん。
TikTokで活躍するクリエイターの2組は、自画撮り被害防止の啓発動画制作に向けたワークショップに参加。「ぱっぷす」から被害の実態などのレクチャーを受けたという。
みりんさんは「びっくりして怖くなりました。でも、私も中学生の頃に周りでこういう話あったの思い出して。実は身近な問題だったんですよね。たくさんの方に周知していきたいし、被害が起こる前に防ぎたいなと思いました」と、感想を述べた。
「インフルエンサーの方と直接お話して、方向性を共有できる場所があったらいいなとTikTokの方に伝えたところ、トントン拍子でこうした機会を用意していただきました。伝えることに長けているお2組のような方々に話を聞いてもらえて、その思いを動画で投稿してもらえることは素晴らしいことですし、本当に嬉しく思います」(内田氏)
TikTokでは今後、各NPO団体とクリエイターが連携を深めるワークショップを継続的に実施していく方針とのこと。TikTokという若者が日常的に親しんでいるプラットフォームで、影響力あるクリエイターが社会的なメッセージを発信する意義は大きいようだ。
モフモフモーのみみちゃんは「私たちのフォロワーの子が自然と今回のテーマについて考えられるように、いつもの雰囲気を壊さずに、自分たちらしく伝えることで、みんなにメッセージを届けたい。保護者の方にも興味を持ってもらうことも大切かなと思っています」と、意気込みを語っていた。
青少年保護に関する機能アップデートを紹介
ByteDance 執行役員で公共政策本部長の山口琢也氏は、TikTokの安心・安全に楽しめるアプリ環境維持のための「ルールの整備」「ツールの整備」「ユーザーへの教育啓発」「安全に関する連携の推進」といった取り組みについて解説した。
「まずルールの整備について、コミュニティガイドラインと、コミュニティガイドライン実施レポートの公表でふたつ更新事項があります。前者は危険行為とオンラインチャレンジに関するポリシーの強化などで、プラットフォーム上で禁止されている悪意あるイデオロギーの種類も明確化しました。これはとくにウクライナ情勢に対応するものです」
コミュニティガイドライン実施レポートでは、コンテンツ投稿に関する制限を定めたコミュニティガイドラインに基づき、投稿削除やアカウント停止といった措置の実態を公表している。
「2022年の第1四半期に関しては、ウクライナ戦争に焦点を当て、4万1191本の違反動画を削除するに至りました。そのうち87%がいわゆる有害情報に関する我々のポリシーに違反しているというもので、78%は実際にユーザーの目に触れる前に予防的に特定し、削除しています」
もうひとつの更新事項「ツールの整備」では、16歳未満へのDM機能の無効化やペアレンタルコントロールでの機能を紹介。健全なTikTok利用を推進すべく、誹謗中傷防止や視聴時間管理の新機能を搭載したと語った。
「誹謗中傷防止の機能として、リシンク機能・再考機能を搭載しました。投稿するコメントに、コミュニティガイドラインに違反するような不適切なワードが含まれている場合、メッセージを通知して、コメントの編集・書き直しができる機能です。この通知が表示されたユーザーの10人中4人以上が、コメントを書き直すという行動につながっています。また、視聴時間の管理の新機能としては、休憩時間の設定があります。一定時間を使っていると休憩を促すメッセージを出し、自分の視聴時間を確認する画面を搭載しました」
近くTikTokではコンテンツレベルシステムを導入する予定。単語や「#(ハッシュタグ)」によるフィルタリング的な処置を自分で設定でき、「おすすめ」に表示されるコンテンツの制限が可能になる。
「現在、実装準備中ですが、ユーザーがコンテンツに表示される『興味ない』ボタンを押すことで、関連動画が『おすすめ』に表示されることを防止します。コミュニティガイドラインというTikTok全体のコンテンツレベルシステムがありますが、こちらはゲームや映画などの年齢制限のように使っていただくイメージの仕組みです」
2018年からNPO9団体が参加する「セーフティパートナーカウンシル」を3ヶ月に1回のペースで開催しているTikTok Japanは、今後もNPOなどの専門家の知見を迅速にセーフティへ反映させていくという。