そこで研究チームは今回、最近行った系統的レビューの結果から社会認知に関連する神経回路を詳細に検討し、左上側頭溝を刺激することにより、統合失調症患者の社会認知機能障害が軽減されると推定。実際に、統合失調症患者に対し、tDCSを1回20分・1日2回を5日間、合計10回の施行を試みることにしたとする。
刺激前と最終刺激の1か月後に、心の状態推論質問紙(SCSQ)とヒント課題を用いて、心の理論のスコアを測定し、tDCS施行前後での変化が解析されたところ、左上側頭溝を刺激部位としたtDCSで、心の理論のスコアが有意に改善したことが判明したという。研究チームでは、特定臨床研究(臨床研究法に準拠)により得られたデータとしては、世界で初めて示されたものだと説明している。
なお今回の研究成果については、統合失調症患者の社会機能的予後を向上させる新規治療法の創出のみならず、社会認知機能障害の病態の理解も促進するものだとしているほか、tDCSは経頭蓋磁気刺激など、ほかの低侵襲性脳刺激法と比べて安価かつ簡便に施行できるため、日常診療で広く用いられることが期待されるともしている。