藤井聡太竜王への挑戦権を争う第35期竜王戦(主催:読売新聞社)の決勝トーナメント準々決勝、佐藤天彦九段―高見泰地七段戦が7月26日(火)に東京・将棋会館で行われました。結果は140手で佐藤九段が勝利し、準決勝へ進出しました。

第35期竜王戦の決勝トーナメント表

本局は高見七段の先手で相掛かりに進みます。4七と5七へ二枚銀を並べたのが高見七段独自の構想でした。対して7筋の位を確保している佐藤九段は、先手の角の動きに制限をかけたのが主張です。

中盤、高見七段は▲2四歩の合わせから飛車を活用して▲3四飛と横歩を取り、一歩得となります。ですがその代償として、横歩取りのジレンマとも言える、飛車の動かし方が難しくなる展開が生じました。結果的に先手は飛車が不安定な状態にあるのが常に懸念として付きまといました。以下の進行を見ると後手の飛車も先手の桂に追われる形で、やはり不安定に見えるのですが、後手の飛車は相当に取られにくいというのが対局者の共通する見解です。形勢は何とも言えませんが、この辺りから常に先手側にのみ不安材料があるという進行になったようです。「中盤以降は手将棋ですね」とは佐藤九段の言葉です。

89手目、高見七段は▲6六歩と自陣の歩を突きました。△同歩と取らせてから▲5五銀と4六の銀を出ることで、この銀の可動域を広げて、攻めに弾みをつける狙いです。以下△4二角に▲9七角とのぞいた局面が受けにくいのではと見ていたそうですが、ここでの△7五歩が好手でした。角筋を止めながら、7六にいる自分の飛車にヒモをつけた一石二鳥の一手です。飛車にヒモをつけたおかげで、先ほどの▲6六歩△同歩の交換を逆用し、後手は次に△5七歩成▲同金△6七歩成という飛車の素抜きを含みにした狙いが生まれました。▲6六歩では単に▲5五銀と出る手も有力でした。

以下は先手の無理攻めを誘う展開となり、その結果として入手した駒を生かして反撃に出た佐藤九段が勝ち切りました。

この結果、準決勝は佐藤九段―広瀬章人八段戦と、永瀬拓矢王座―山崎隆之八段戦というカードになりました。1組の3名及び竜王経験者である広瀬八段と、上位者が順当に残ったという印象です。挑戦争いもいよいよ大詰めですが、最後に笑うのは誰でしょうか。

相崎修司(将棋情報局)

ベスト4に駒を進めた佐藤天九段(右)(撮影:相崎修司)
ベスト4に駒を進めた佐藤天九段(右)(撮影:相崎修司)