「原罪(げんざい)」とは、キリスト教の教えの一つで、わかりやすくいえば「人類の祖が神に背いて犯した罪」という意味とされています。本記事では「原罪」のより詳しい意味や、イエス・キリストとの関係、「贖罪(しょくざい)」や「大罪(たいざい)」との違いなどを詳しく解説します。

普段の生活においても、ビジネスにおいても、いろいろな宗教の人と接する機会は多いでしょう。この機会に、「原罪」について理解を深めましょう。

「原罪」とはキリスト教の教えの一つ

  • 本記事では、「原罪」の意味をわかりやすく解説していきます

    本記事では、「原罪」の意味をわかりやすく解説していきます

「原罪」とは、キリスト教の教えの一つです。具体的には、旧約聖書の創世記に記載されている「最初の人間であるアダムとイブが、神に背いて禁断の木の実を食べたこと」を指します。禁断の木の実とはエデンの園にあった知恵の木の実で、神から「絶対に食べてはいけない」と禁じられていたものです。

そしてキリスト教では人間がアダムとイブの子孫であるとされているため、この「原罪」がすべての人間に、罪への傾向性として引き継がれたと教えているのです。なお「原罪」は「宿罪(しゅくざい)」ということもあります。

「原罪」を償ったイエス・キリスト

キリスト教では、イエス・キリストが十字架に磔(はりつけ)にされて処刑されることで、その犠牲をもって、アダムとイブが犯した原罪を償ったと解釈しています。これを「罪の贖い(あがない)」といいます。「贖う」とは、「罪の償いをする」という意味の言葉です。

キリスト教では、神との契約を守れずに罪を背負っている人間が、神によって救われることはないとされています。イエス・キリストは自力で償いをすることができない人間の代わりに、「罪の贖い」によって、神と人間との和解をもたらしました。このイエス・キリストを救い主として受け入れるのであれば、神に救われる資格を特別に得られるといわれており、「罪の贖い」は、キリスト教の考え方の中心とされています。

「原罪意識」の意味とは

「原罪を意識する」ことの意味で、「原罪意識」という使い方をされることもあります。

また、実際に罪を犯していなくても、罪を背負っているような気持ちになる感覚を指すときにも使われます。

「原罪」と聖母マリアの関係とは

  • 聖母マリアと「原罪」の関係性は、特にカトリック協会において重視されています

    聖母マリアと「原罪」の関係性は、特にカトリック協会において重視されています

イエス・キリストの母である、マリアと「原罪」について解説します。

カトリックの祝日にもなっている「無原罪の御宿り」とは

「無原罪の御宿り(むげんざいのおやどり)」とは、キリスト教のカトリック教会において、「イエス・キリストの母マリアは、その母であるアンナの胎内に宿ったときから原罪を免れていた」という考え方を指します。

なぜなら、マリアはイエスを身ごもることを予定された、祝福された存在であるためです。この「無原罪の御宿り」は、複数の絵画の主題としても描かれています。

またカトリック教会では、毎年12月8日を「無原罪の御宿り」の日として定めており、イタリア、スペイン、ポルトガル、オーストリアなどの国々では公式な祝日に制定されています。

「原罪」と「贖罪」の違い

「原罪」と「贖罪」はどちらもキリスト教用語ですが、異なる意味の言葉です。キリスト教用語では、前述のようにイエス・キリストの死によって人間の「原罪」を償ったことを「罪の贖い」といいますが、これを「贖罪」とも呼んでいるのです。なおイエス・キリストは、贖罪のために神によって地上に使わされたとも考えられています。

ちなみに「贖罪」は「罪滅ぼし。善行を積む、金品を差し出すなどにより罪や過失を償うこと」という意味で、一般的な用語としても使用されています。

「原罪」と「大罪」の違い

  • キリスト教には、「大罪」という概念も存在します

    キリスト教には、「大罪」という概念も存在します

「大罪」とは、「重い罪」という意味で広く使われている言葉です。

キリスト教の主にカトリック教会では、罪の源となる悪や欲望の概念を「七つの大罪」と呼んでいます。下記がその内容です。

  • 嫉妬(しっと)
  • 傲慢(ごうまん)
  • 怠惰(たいだ)
  • 憤怒(ふんぬ)
  • 強欲(ごうよく)
  • 色欲(しきよく)
  • 暴食(ぼうしょく)

このように、「原罪」とはまた別の概念であることがわかります。なお、キリスト教における「大罪」は、あくまでも道徳的な概念や神に対する罪(sin)で、一般的な犯罪行為(crime)とは異なるため注意が必要です。

「原罪」の使い方と例文

  • 「原罪」の使い方と例文もチェックしておきましょう

    「原罪」の使い方と例文もチェックしておきましょう

「原罪」を使った例文をご紹介します。

  • 人は生まれながらにして、原罪という罪への傾向性を持っている
  • キリスト教では、アダムとイブが犯した原罪がすべての人間に影響していると教えている

「原罪」の英語表現

  • 「原罪」の英語表現も覚えておきましょう

    「原罪」の英語表現も覚えておきましょう

「原罪」の英語表現は「original sin」です。例文は以下の通りです。

  • According to Christian doctrine, it is the original sin of man.
    (キリスト教の教えによれば、それは人間の原罪です)

仏教には「原罪」の考え方はない?

  • 仏教には「原罪」の考え方はあるのでしょうか?

    仏教には「原罪」の考え方はあるのでしょうか?

仏教にはアダムとイブが登場しないので、キリスト教における「原罪」の概念とまったく同じものはないといえるでしょう。キリスト教用語の「原罪」は「宿罪」ということもありますが、「宿罪」は仏教用語では前世に犯した罪のことをいいます。

なお、仏教では「罪」とは戒律や仏法に背く行為のことを指し、罪業(ざいごう)ともいいます。「自業自得」ともいうように、自らの行為、つまり「業」によって報いを受けるというのが、仏教の基本的概念の一つとされています。

「原罪」はキリスト教の教えで、人間が生まれながらにして持つ罪のこと

今回は、「原罪」の意味や使い方、英語表現などについて解説しました。キリスト教における「原罪」の考え方は難しい部分もありますが、知識の一つとして覚えておくといいでしょう。「贖罪」や「大罪」との違いも確認しておくと、「原罪」への理解もより深まります。