政府肝入りの半導体人材育成計画

韓国の尹錫悦大統領は、選挙で「半導体人材10万人育成」を打ち出していたが、就任直後、「半導体は、国家安全保障資産であり韓国産業の核心であるので、半導体人材養成に政府の力を集中せよ」と強調したことに呼応し、産業通商資源部、教育部、科学技術情報通信部、雇用労働部(いずれも国家行政組織)は合同で7月19日付で、韓国の半導体産業の発展に向け、人材15万人を10年間で育成する計画を発表した。

韓国産業界では今後、半導体産業の拡大により、現在17万7000人前後の業界人材が、10年後の2031年には30万4000人まで増えると見ており、そうした人材ニーズにこたえるために今回の半導体人材育成計画を韓国政府が立案した模様である。2021年、文在寅政権(当時)が「K-半導体戦略」を唱えた際は3万6000人の育成を計画していたが、それより4倍以上増えたこととなる。

新たな半導体人材15万人のうち4万5000人は、既存の大学の半導体関連学科の定員を拡大して養成するが、残りの10万5000人は、他の学科の学生を対象に半導体融合過程を履修するよう誘導し、契約学科の定員も拡大するとしている。同国の教育省では、半導体学科の定員を一般大学(学部)2000人、大学院1102人、短期大学1000人、職業系高校1600人の計5700人増やすとしている。ただし、首都圏の大学も増員となるため、地方大学が激しく反発、実現には相当な難航が予想されるほか、教員不足の指摘も出ているという。

教育省は、これとは別に2023年から2026年までに20ほどの大学を選抜し「半導体特化大学」に指定、5年間一時的に規制を緩和し、財政を支援する予定としている。20の大学による半導体教育と基礎研究を遂行できるよう「ソウル大学半導体共同研究所」を拠点にして圏域別半導体共同研究所を設置し協業体系を構築、各研究所は各自の強み分野を特性化する方針だ。教育省は「半導体を教える教員が不足している」という指摘を踏まえ、産業界の専門家を兼任・招聘教授として活用し、教授要件を緩和するという案を出している。

このほか、官民共同で10年間に3500億ウォンの研究開発資金を準備して優秀な修士・博士人材を育成する「韓国型SRC(Semiconductor Research Corporation)」も運営するとしている。SRCはノースカロライナに本部を置く米国の官民半導体研究コンソーシアムであり、大学の研究を助成する目的で設置されている。韓国政府は半導体企業が寄贈した遊休・中古装備を教育・研究現場に積極的に投入するとしているほか、中小・中堅の素材・部品・装備企業の労働力不足解消に向けた素材・部品・装備契約学科も設立するともしている。