7月15日には「HOPPIN’GARAGE Thanks & Cheers!」商品発表会が実施され、商品に込められた思いなどが関係者から語られた。
サッポロビールは、企業のがん経験者・支援者の有志が参加するプロジェクトで開発された新作ビール「HOPPIN’GARAGE Thanks & Cheers!」(サンクスチアーズ)の事前予約を開始。8月16日に数量限定で発売する。 7月15日には「HOPPIN’GARAGE Thanks & Cheers!」商品発表会が実施され、商品に込められた思いなどが関係者から語られた。
人生のようなほろ苦さと、爽やかな後味のビール
「HOPPIN’GARAGE Thanks & Cheers!」は、サッポロビールが育種した伝説のホップ「ソラチエース」を使用し、がんサバイバーの思いをつないでつくられた、ほろ苦さと爽やかな後味が特長のクラフトビール。
がん経験者による『生きている喜びを心から実感できるビール』をテーマに開発された商品で、その開発には一般社団法人CSRプロジェクトを中心にカルビー、サッポロビール、電通などのがん経験者の有志が参加した。
一般社団法人CSRプロジェクト代表理事の桜井なおみ氏は、同団体が運営する「WorkCAN’’s」(ワーキャンズ)の取り組みについて説明した。
「『WorkCAN’’s』では、ピアサポートというがんなどの病気の患者の方や、生きづらさを抱える人たちのコミュニティ活動もしています。一般的なピアサポートは病院内、あるいは患者会の中で行われますが、企業で働くことを共通事項として考え、さまざまな体験で繋がり、支え合うプロジェクトです」
桜井氏も30代でがんに罹患したがんサバイバーだ。2006年にがんの治療を経験したことが活動のきっかけとなっており、働く世代のサバイバー同士が業界や会社の垣間を越えて繋がることを掲げている。
「2020年9月8日に39名のメンバーが集まり、企業内ピアサポーターの養成研修会を開催したことを契機に、さまざまな形で合同研修会を重ね、直近では先月9日に第6回目を開催しました。当初4社から始まりましたが、現在は約50社で活動しています。今回のビールプロジェクトにも通じているかと思いますが、いろんな病気の捉え方を共有し、疾病や世代の垣根を越えた、新たな価値創造に踏み込んでいきたいと思います」(桜井氏)
サッポロビールの村本高史氏は、WorkCAN’’sによる共創プロジェクト「WorkCAN’’s Beer Project」について紹介。同氏は頸部食道がんのサバイバーで手術により咽頭を全摘。食道発声法を習得している。
本プロジェクト立ち上げの背景のひとつとして、コロナ前の2019年に実施したというがんサバイバーを中心とする飲み会について語った。「発案者は社内のがんサバイバーでした。「がんを経験すると飲んではいけないと思われて、飲み会に誘ってもらえなくなる。がん経験者がお酒を飲みながら色々なことを語る場があってもいい」という声で企画され、飲み会は大盛況のうちに終わりました。がんとお酒は一見、結びつきにくく、遠ざけられがちな面もあるからこそ、「生きている喜びを実感できるビールをつくりたい」と思いました」
がん罹患後の飲酒の可否は主治医の判断に従う必要があるが、お酒が飲めるサバイバーも少ないとのことで、本プロジェクトでは昨年5月から今年2月まで計4回のオンラインワークショップを実施。のべ250名の参加者のアイデアや意見を取り入れながら、ビールの味わいやデザインの開発を進めた。
「このビールのコンセプトは『Thanks & Cheers! であいに感謝、いのちに乾杯』ということで、人生のようなほろ苦さと、爽やかな後味・香りが特長のビールです。缶体には今まで出会った大切な人たちに思いを馳せ、人生を振り返るようなコピーを配しています。がんだけではなく、さまざまな苦しさや悲しみを抱えた人たちに届き、明るい気分になるきっかけになったら嬉しく思います」(村本氏)
サッポロビールの「ソラチエース」で複雑な味や香りを表現
同商品はサッポロビールのクラフトビールサービス「HOPPIN’GARAGE」の枠組みを活用して開発されている。
「HOPPIN’GARAGE」は魅力的な人々の人生ストーリーと、同社の醸造技術を掛け合わせことで多様性あふれるビールを生み出し、客との共創によるビールづくりを展開するサッポロビール初のD2Cブランド。フラッグシップビール「ホッピンおじさんのビール」を通年販売するほか、新たなビールの楽しみ方や体験を提供するため、2ヶ月に1回、人生ストーリーをもとに生み出した新作ビールを発売している。
「『HOPPIN’GARAGE』の特長は我々が『ストーリーブリューイング製法』と呼ぶビールの作り方です。通常の商品開発はマーケティングリサーチなどを通して一定規模のニーズを見つけることがスタートになりますが、『HOPPIN’GARAGE』では、ビールと共に届けたいストーリーを探し、サッポロビールの醸造技術者やデザイナーさんを交え、ビールづくりに取り組みます」とは、サッポロビールの土代裕也氏。
「2ヶ月に1回、新作ビールと一緒に元になったストーリーをまとめた冊子などが届く、『ホッピンおじさんの定期便という雑誌の定期購読のようなイメージのサービスも展開しています。当社ではビールはやはり乾杯が似合うお酒と思っておりまして、そこに象徴されるように人と人を繋ぐ力、出会いをよりインプレッシブしていく力がビールにはあると考え、この活動を展開しています」(土代氏)
「Thanks & Cheers!」は同サービスの新作として販売。HOPPIN’GARAGEストア限定の定期便トライアルセット「Thanks & Cheers!&ホッピンおじさんのビール12本(各6本)」(4,620円・送料込)には、「WorkCAN’’s Beer Project」のワークショップ参加者の思いを綴ったストーリーブックとマグネットステッカーを同梱する。
「『HOPPIN’GARAGE』でも250名の方と一緒にビールを作ることは本当に初めてでした。やはり皆さんひとつとして同じストーリーはなく、どうコンセプトに落とし込むか、皆さんと一緒に苦労してきました。サッポロビールの『ソラチエース』というさまざまな味わいと香りを持つホップを使い、複雑な味や香りを表現しています」(土代氏)
そんな一言で言い尽くせない気持ちや味わいを、全ての風景が柔らかなグラデーションで包み込まれ、美しい光が溶け合う時間帯であるマジックアワーの空をモチーフに、缶体をデザインした。
自らの経験を活かし、がんに罹患した従業員のケアや復職支援に携わるカルビーの武田雅子氏は、その味わいについて「一人ひとりのストーリーを共有しながらビールづくりにまとめていくことは大変でしたが、それを全て包み込むようなビールができました。コクと苦味があって、それでいて重たくなく、とてもいい香りのビールで、本当にサッポロビールさんの技術に感謝です。こう仕上げるのかと本当に感激しました」とコメント。
社内コミュニティなどでがんサバイバー支援にあたる電通の月村寛之氏は、「こうしたオープンかつコレクティブなモノづくりを、ビールというわりと古典的なもので実現できたこと自体すごく新しいと思います。250人の方々の思いが詰まったビールが商品として世に出ていくことで、誰に飲まれて、愛され、育っていくのかを見守っていきたいです」と、メッセージを送っていた。
「HOPPIN’GARAGE Thanks & Cheers!」はHOPPIN’GARAGEストアやアマゾンマーケットプレイスで購入可能。発売を記念してTwitterキャンペーンも実施する。