旅好きにはあまりにも長く感じられた、コロナ禍での海外旅行の中断。そんな冬の時代もようやく終わりを迎えつつあり、入国要件をコロナ前に戻す国も増えてきました。

一時期に比べるとずいぶん海外旅行が身近になってきたので、近いうちに海外旅行の再開を考えている人も少なくないでしょう。日本から比較的気軽に行ける国のひとつがベトナムです。

ベトナムは2022年5月に入国前のPCR検査を撤廃し、ワクチン接種の有無に関係なく、事前の検査なしで観光目的の入国ができるようになりました。そこで筆者も約2年半ぶりの海外旅行を敢行。いまのベトナムの入国審査はどのような感じなのか、現地はどのような様子なのか、「ベトナム旅行のいま」をレポートします。

※本記事は2022年7月19日時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。
※最新の情報は外務省 海外安全ホームページ等をご確認ください。

コロナ関連の入国制限を撤廃したベトナム

「本当に行けるかな?とドキドキしながら約2年半ぶりに海外航空券の予約をしたのが2022年5月中旬のこと。コロナ後はじめての海外旅行先に選んだのが、ベトナム・ハノイでした。

ベトナムは2022年5月15日、入国にあたっての新型コロナウイルスの検査要件を撤廃。これによって、原則としてコロナ前と同じ条件で入国ができるようになりました。日本国籍者の場合、入国日から15日以内の観光目的の滞在であればビザなしで入国できますし、ワクチン接種証明書や陰性証明書の提示も必要ありません。ワクチン未接種であっても、一切の検査を受けることなく観光目的の入国ができるようになっています。

2022年6月10日以降は「ツアーでないと観光目的の入国不可、その場合もビザや陰性証明書の取得が必須」という世界でも稀な厳しい入国制限を課している日本を見ていると、「本当に何の制限もなく行けちゃうの?」と思ってしまうかもしれません。

「ベトナムの入国要件がコロナ前に戻っている」旨のツイートをしたところ、「PCR検査など事前に対応したことはありますか?」といった質問を受けました。「コロナ前と同じ条件で入国できる」といっても、つい半信半疑になってしまう人もいるようです。

出発前に準備したこと

繰り返しになりますが、2022年7月19日現在、ベトナムへの入国にあたってワクチン証明書や陰性証明書の提示は必要ありません。ただ、観光目的での入国にあたっては新型コロナウイルス感染症の治療費をカバーする保険に加入しなければならないことになっています。

フライトの搭乗手続きや入国審査で保険加入を確認されることはありませんでしたが、新型コロナに限らず、旅先でのさまざまなリスクに備えて海外旅行保険には加入しておいたほうが良いでしょう。

特に、日本に帰国する際は現地で陰性証明書を取得しなければならないので、たとえ症状がなくても陽性になってしまうと予定通り帰国できなくなるリスクがあります。そうなるとさまざまな追加の費用もかかってくるため、感染症等に伴う「予定の変更」がカバーされるオプションが利用できる海外旅行保険に加入しました。

また、前述の通り日本帰国時には現地でPCR検査を受けて陰性証明書を取得する必要があります。これはベトナムではなく日本側の規制によるもので、2022年7月19日現在、どの国から帰国する場合であっても陰性証明書の取得が必須になっています。

陰性証明書の準備が間に合わず、予定通り帰国ができないということのないよう、いつどこでPCR検査を受けるのか、渡航前に目星をつけておいたほうがスムーズです。

ガラガラの成田空港

いよいよベトナム渡航当日、久しぶりの海外旅行とあって、成田国際空港に足を運ぶのも数年ぶり。なんとなく浮き足立ってしまい、3時間近くも前に到着しました。

空港に向かうスカイライナーの車内もガラガラなら、空港のターミナルもガラガラ。以前のように国内外の旅行者でにぎわう光景が戻ってくるまでには、まだまだ時間がかかることを否が応でも実感させられます。

今回利用した航空会社はベトナム発LCC(格安航空会社)のベトジェットエア。ターミナル自体はガラガラなのですが、近年日本に出稼ぎに来ているベトナム人が多いこともあってか、チェックインカウンターには長蛇の列ができていました。乗客の割合は8~9割がベトナム人といったところでしょうか。

荷物の重量をオーバーする人が相次いだこともあり、なかなか列が進まず……チェックインまでに1時間半ほど待ち、3時間も前に空港に来ていたにもかかわらず、意外にもバタバタの搭乗となりました。

ハノイ到着! あっさり入国審査通過

約6時間のフライトの後、無事ハノイのノイバイ国際空港に到着。筆者にとっては4度目のベトナム、2度目のハノイです。ドキドキしながら列に並んだものの、入国審査では特に何か聞かれることもなく、あっさりと入国スタンプが押されました。

イミグレーション通過後、2年半ぶりの海外旅行がようやく叶った嬉しさがジワジワとこみあげてきます。飛行機を降りてから入国まで、わずか10分ほどの出来事でした。

ハノイのノイバイ国際空港は成田に比べるとずいぶんコンパクトですが、成田よりも活気が戻っている印象。配車アプリのGrabでタクシーを手配して、市内のホテルへと向かいます。

ベトナム・ハノイの街の様子は?

飛行機内や空港内ではマスク着用義務があるため、自宅を出てからここまではずっとマスク着用。ハノイ市内はどんな様子でしょうか。

一時は厳しいマスク着用義務があり、マスクを外して記念写真を撮っただけで罰金処分を科された人もいたというベトナムですが、行ってみるといまではずいぶんと緩くなっていることがわかりました。

筆者が滞在中に利用した(訪れた)場所で、絶対にマスクをしなければならないのは公共交通機関(バス)と病院くらい。あくまでも筆者の主観ですが、それ以外の場所では「着けたい人は着ければいい」といった雰囲気で、個人の裁量に任されている印象を受けました。

もともと排ガス対策でコロナ前からマスクを着けていた人が多いバイク乗りを除き、街中では7~8割の人がマスク未着用。不特定多数の人と接触するサービス業従事者は比較的マスク着用率が高いものの、ホテルやレストラン、カフェでも、マスクを着用しているスタッフもいれば、そうでないスタッフもいて、必ずしも職場全体で統一されていないようでした。

とあるカフェではスタッフ5人中1人がマスク着用、とあるホテルではレセプショニストはマスクを着けているものの、ドアマンや清掃スタッフなどはマスクを着けていないといった具合です。外国人観光客を見ても、アジア人観光客は4割ほどがマスクを着けていましたが、欧米人観光客はほぼノーマスクです。

どの国の観光客が多い?

日本に比べるとある程度観光客が戻ってきていて、ずいぶん日常を取り戻しつつあるベトナム・ハノイですが、やはり以前コロナ前に訪れたときに比べると、外国人旅行者の姿は圧倒的に少ない印象です。

その中で比較的多いのは、フランス人・ドイツ人・アメリカ人をはじめとする欧米人と韓国人。日本人はたまに見かける程度で、中国人観光客はほぼゼロでした。やはり欧米人は自国の入国制限がコロナ前に戻っているところが多いので、日本人に比べると、以前と変わらない感覚で海外旅行を楽しむ人が増えてきているようです。

宿泊したホテルのスタッフに聞いてみたところ、「肌感では外国人観光客は4割ほど戻っている」とのこと。ただ、近隣にあった6軒のホテルのうち、4軒はコロナ禍でつぶれてしまったそうです。「4割」というのも、あくまでもそのホテルのスタッフの感覚であって、平均してみるともっと少ないのではないかと感じました。

日本のガイドブックに載っていたのに、いまでは跡形もなくなってしまっているカフェやレストラン、ショップも何軒もあり、コロナ禍の爪痕の深さを感じます。

ベトナム入国前のコロナ検査が不要となったのは2022年5月15日のこと。そのニュースを知って「ベトナムに行きたい」と思ったとしても、休暇の調整などにしばらく時間がかかることから、本格的に外国人観光客が戻ってくるまでにはもう少し時間がかかりそうです。

また、現在は仕事や学業以外での中国人の海外渡航は極めて難しい状況になっているので、中国人がいつ海外旅行を再開するかという点も、ハノイを訪れる外国人観光客の数を大きく左右するはずです。

「意外と簡単に海外旅行ができるんだなぁ」

今回、外国人旅行者の入国要件が大きく緩和されたベトナムを訪れた率直な感想は「意外と簡単に海外旅行ができるんだなぁ」というものでした。

確かに、トラブルがないよう事前に入国要件を調べたり、日本帰国前に現地でPCR検査を受けたりと、コロナ禍の海外旅行ならではの面倒な点はありますし、プラスアルファの費用もかかります。一方で、外国人観光客が少ないぶん、観光地の混雑も少なく、普段着に近い現地の様子が見られたり、グレードの高いホテルに割安な料金で泊まれたりと、コロナ禍の旅行ならではのメリットがあったのも事実です。

もちろん、現地でPCR検査を受けて陽性になってしまう可能性があることを覚悟しておく必要はありますが、その覚悟さえできれば「案ずるより産むが易し」なのかもしれません。

現地で陽性にならなかったから言えることかもしれませんが「ベトナム行きを決めて本当に良かった!」と心から思えた旅でした。