藤井聡太王位へ豊島将之九段が挑戦する、お~いお茶杯第63期王位戦七番勝負(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)の第3局が7月20・21日(水・木)に兵庫県神戸市の「中の坊瑞苑」で行われました。結果は84手で藤井王位が勝利し、七番勝負の成績を2勝1敗として、白星を一つ先行させました。
■クラシックな角換わりに
本局は豊島九段の先手で角換わりに進みます。しかし両者が選んだのは最新型の駒組みではなく、従来型のクラシックな角換わり相腰掛け銀でした。
豊島九段は玉を固める方針なのに対し、藤井王位は後手番ながら果敢に仕掛けていきます。後手は以下のやり取りで銀桂交換の実利を得ましたが、先手も仕掛けを逆用する形で反撃の拠点を作ることに成功します。この辺り、藤井王位はやや指しにくさを感じていたようです。
後手が先手陣に角と銀を打ち込んだ局面で封じ手となりました。先手は打ち込まれた駒で次に大駒を狙われる展開が予想されるので、それにどう対応するかという局面です。
豊島九段の封じ手は飛車を一つ寄って受け切りを目指すものでした。しかし結果的には飛車を引いたほうがよかったようで、それならば豊島ペースの展開になっていたのではというのが感想戦の結論でした。
■3時間超の大長考
封じ手から数手進み、藤井王位が玉を早逃げした局面で豊島九段は長考に沈みます。先手は2枚の成駒で迫っていますが、玉の早逃げの効果で後手玉は堅く、次に来るであろうさまざまな藤井王位の反撃筋に対して対策を立てながら攻めの方針を定める必要があります。考え甲斐のある局面です。
考慮が一時間を超え、昼食休憩を挟み、昼食休憩が終わった後も豊島九段の手は動きません。さらに一時間以上が経過しました。豊島九段が成算のある手順を見つけられていないことが徐々に伝わってきて、重苦しい空気に包まれます。
豊島九段が着手したのは14時53分。なんと3時間3分の大長考です。結果として、ここでは既に先手に思わしい順がなかったようです。優位に立った藤井王位は徐々にリードを広げていきました。
最後は自陣の飛車を歩と刺し違え、その歩を生かして先手玉を即詰みに打ち取るという、作ったような寄せ手順をみせて勝利しました。
ここから中盤に入る七番勝負ですが、星取りだけではなく、まずは後手番をブレイクした藤井王位がその点でも優位に立ったと言えそうです。
第4局は少し間をおいて、8月15・16日(月・火)に佐賀県嬉野市「和多屋別荘」で行われます。この充電期間を生かすのはどちらでしょうか。次局にも大いに注目です。
相崎修司(将棋情報局)