中国のBYDが日本の乗用車市場に参入する。日本法人ビーワイディージャパンを通じて2023年に3車種の電気自動車(EV)を発売する方針で、まずはSUVの「ATTO3」を投入する。販売については、日本全国に約100カ所のディーラー網を整備していく予定。なぜ今、BYDは日本市場に参入するのだろうか。
世界3位の自動車市場でEVシフトが進むから
中国・深センに本社を構えるBYDは1995年にバッテリーメーカーとして創業。自動車メーカーとしては乗用車のほか、EVバスやEVトラックなどの商用車も含む新エネルギー車(NEV、ハイブリッド車からEVまでを含む)を開発、生産、販売している。グローバル販売台数は右肩上がりで、2022年上半期は計64万台強を売ったという。
日本の自動車市場にはEVバスで2015年に参入。京都で5台を受注したのを皮切りに、これまでに計65台を納めた。日本のEVバスに占めるBYDのシェアは70%以上だ。
では、乗用車市場への参入を決めたのはなぜか。BYDジャパンの劉学亮社長によると、コロナ前にはBYD本社を毎日のように日本の企業、団体、学生が訪れ、「BYDのEVはいつ、日本に来るのか」との質問を受けていたとのこと。さらに、2022年6月に調査会社と組んで実施したアンケートでは、日本の消費者の30%がEV購入の意向を持っているとの結果を得られたことから、日本参入を決めたそうだ。EVは「買うか買わないかではなく、いつ買うかの時代になった」というのが劉社長の考えだ。
BYDジャパン執行役員の東福寺厚樹さんに日本参入の背景を聞くと、こんな話が聞けた。
「日本は欧州や中国と比べEVの普及が遅れていますが、2050年のカーボンニュートラルを国際公約にしていますし、2035年には新車販売に占めるガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車の比率をゼロに近づけるとの方針を示していますので、今後は電動車に対するニーズが拡大していくと見ています。市場規模としても、日本の自動車市場は世界3位。そこがEVシフトをしていくわけですから、早くから参入し、お客様に選択肢のひとつとして認めてもらうことが重要です」
日本での販売目標台数は示さなかったBYDだが、「毎月100台単位で売っていければ嬉しい。生産枠は押さえてあります」と東福寺さん。豪州やシンガポールではBYD製EVの受注が好調だそうで、日本法人としては他国向けと「生産枠を取り合っている」のが現状だという。
テスラやヒョンデのようにオンライン販売を基本にしてクルマを輸入するスタイルではなく、日本でディーラー網まで整備するというBYD。本気度は高そうだが、実際にクルマが売れるかどうかは未知数だ。日本参入第1弾となるSUV「ATTO3」の価格は2022年11月ごろに発表予定だという。