LED照明は効率的で省エネにつながるため、普及が進んでいます。蛍光灯をLED照明に交換することで電気代の削減につながることはよく知られていますが、明るさの「質」が求められる場所があります。博物館や美術館、そして新たに注目されているのが学校です。

今回、高い演色性(※)で文字などがはっきり見えるパナソニックの一体型LEDベースライト「iD」シリーズ(映光色)を採用した、学校法人 福田学園(以下、福田学園)を取材しました。

※演色性:照明の色再現性を示す指標で、「Ra」(平均演色評価数)で表記。自然光のもとで見る色を、どれくらい再現しているかを意味します。「Ra」に続く数字が大きいほど演色性が高く(自然光で見る色に近い)、たとえば「Ra100」を持つ照明下では、物体の色が自然光と同じように見えるということです。

  • 学校法人 福田学園(大阪府)

学校の建物を蛍光灯からLEDに変更し、大幅な省エネを実現

福田学園は、大阪保健医療大学、大阪工業技術専門学校、大阪リハビリテーション専門学校(夜間)を運営しており、現在は1,288名の生徒が在籍しています。2017年に、パナソニック エレクトリックワークス社(以下、パナソニックEW社)が校内照明のLED化を提案しました。

福田学園 学園本部 法人室課長の溝畑允康さんは「大学の授業では日中に照明を使い、夜間の専門学校では夜も照明を使っているので、経費の削減が急務でした」と、当時の状況について振り返ります。

  • 2017年にリニューアルした1号館

  • 2017年に一度目のリニューアルを行い、2021年のリニューアル時には照明の質にもこだわりました

  • 福田学園 学園本部法人室課長 溝畑允康さん

そこでまず、1号館を蛍光灯からパナソニックの一体型LEDベースライト(一般タイプ)に変更。最初のLED化によって省エネ効果を実証できたことから、2021年には2号館のLED照明もリニューアル。2017年と大きく異なる点は、当時にはなかった新しい「映光色」LED照明を採用したことです。

パナソニックEW社 マーケティング本部 佐藤拓さんは「学校環境に合ったLEDを採用することで、他校と差別化を図る提案をしました」と語ります。

  • パナソニックEW社 マーケティング本部 佐藤拓さん

専門性が高い大学や専門学校、明るく教室を照らす

大阪保健医療大学と大阪リハビリテーション専門学校ではリハビリなどを学び、座学のほかにも臨床実習といった時間も多い学校です。また、大阪工業技術専門学校では建築やデザイン、ロボットなどを学び、図面や模型を作りながら細かい作業を行っています。

こうした授業では、一層の明るさや見やすさが求められるということもあり、当時発売したての一体型LEDベースライト「iD」シリーズ(ライトバー)の「映光色」が採用されました。LEDベースライトの総数は約1,400台ですが、そのうち「映光色」が800台を占めています。「映光色」は高い演色性(Ra93)と明るさ、省エネを両立し、さらに価格も少し抑えた照明です。

「映光色」は本来、魅力ある店舗空間づくりのために開発されたそうです。パナソニックEW社の西岡英士さんは、「現在はネットで買い物をするお客さまが増え、実店舗の来客数が年々減少しています。お客さまに来ていただくには、魅力ある店舗づくりが必要となり、商品の色味がキレイに出る照明、再現性が高い照明が求められていました。しかし、既存品の『高演色』ライトは高額で導入のハードルが高いという声がありました」と話します。

  • 「映光色」照明下では、モノの見え方が一般タイプのLED照明とは異なり、鮮やかになるとのこと

  • パナソニックEW社 ライティング事業部 マーケティングセンター 西岡英士さん

それまでのLED照明ラインナップは、「一般」タイプと「高演色」の2種類でした。後者の「高演色」タイプは、Ra95という高い演色性です。一般タイプはRa83と低め。そして、一般タイプと高演色の中間に位置するのが「映光色」タイプで、Ra93と高い演色性を持っています。

演色性を高くすると、明るさを示す光束(ルーメン)の数値が低くなるのですが、「高演色」タイプよりも「映光色」タイプのほうが光束は高く、演色性を維持したまま高束をアップできるLED照明となっています。

  • 左が一般色タイプ、右が映光色タイプ。映光色タイプで照らした毛糸の玉は、色が鮮やかに見えました

  • 高演色タイプ、映光色タイプ、一般タイプの比較表。映光色はバランスがよく、価格も抑えめ

また、日本産業規格「JIS Z 9112」の演色性による区分は、クラスが4段階に分かれています。「1」は事務所や工場、「2」は色を扱う仕事や医療機関や店舗など、「3」は美術館や博物館、「4」は印刷工場や色検査をする場所に適しているとされます。一般タイプはクラス「1」ですが、「映光色」はクラス「2」で、JIS Z 9112規格でも高い演色性を実現していることがわかります。

  • 「映光色」タイプのLED照明は、日本産業規格「JIS Z 9112」の演色性による区分はクラス「2」

気になる価格は、同じ条件で「一般」タイプが2,8150円、「高演色」タイプが3,2150円、「映光色」タイプが3,0150円です。一般タイプと比較すると「高演色」タイプは4,000円ほどアップしますが、「映光色」タイプは2,000円アップですみます。特に学校や店舗などは多くのLED照明を設置するので、差額はより大きくなります。

消費電力を見てみると、蛍光灯と比較して53.2%の削減。ランニングコストは61.2%の削減という試算です。福田学園でも省エネ効果はもちろんですが、2021年のリニューアルによって、モノや人がより鮮やかに見える照明に進化したのです。

目にやさしい明るさで文字くっきり

実際に「映光色」タイプを体感した感想としては、特に暗くなりがちな夜間の生徒や教員から好評とのこと。「手元が明るくなった」(生徒)、「夜間の実技や演習は全体的に暗くなっていたが、明るい雰囲気でできるようになった」といった声が寄せられました。

今回の取材では校内も見学。天気のよい日中は校舎に外光が入るため実感しにくかったのですが、カーテンを閉めると、自然な明るい色ではっきりと掲示物などを見ることができました。実際に「一般」タイプLED照明の部屋と比くらべてみると一目瞭然です。一般タイプでは何となく暗く感じるのですが、「映光色」タイプLED照明の部屋は自然な明るさで、目も疲れにくい印象でした。

  • 2021年にリニューアルした3号館

  • 映光色のベースライトがずらりと並んでいます。確かにとても明るい!

  • 文字がハッキリと見やすく、目が疲れにくいと感じました

  • 学生ラウンジは「映光色」タイプの中でもあたたかみのある色。ゆったりと生徒たちがくつろいでいました

  • 廊下などは「一般」タイプを採用。教室や実習室、ラウンジなどが「映光色」タイプとなっています

いいとこどりの「映光色」タイプですが、2021年に発売されたばかりということもあって、2021年の納入台数は約2,000台(そのうち福田学園が800台)。現時点では認知度がいまひとつですが、パナソニックEW社の近畿電材営業部として2025年に約18万台という目標を掲げています。学校に向けては、近畿地区(2府4県)にある約6,200校のうち、1割に当たる約620校に「映光色」タイプの展開を考えているそうです(1校あたり300台として計算)。

「近畿エリアにはまだまだ蛍光灯が残っていますので、現状では近畿エリアを中心に営業活動をしています。よりよい環境づくりのために、学校でも取り入れていただけるように活動し、いずれ全国展開を目指していけたら」(西岡さん)

実際に校内のあかりを体験してみて、学校との相性はよいのではないでしょうか。現状では、「映光色」タイプは店舗などでの展開が多いかもしれませんが、学校や老人ホームなどにも広まってほしい照明です。これまでは省エネ性や長寿命が注目されてきたLED照明、今後は明るさの「質」も求められる時代になりそうです。