女性のみならず男性にとっても、好みの香りの香水がなかなか見つからないという人も多いことでしょう。デパートの香水売り場を訪れテスターを使って様々な香りを試すのも大変です。ロレアルグループのイヴ・サンローラン・ボーテは科学的なアプローチでその人にピッタリ合った香水を提供する試みを始めました。それは脳波を使った香水選びです。
「YSL Scent-Sation」は店舗での香水選びを大きく変えるカウンセリングシステムです。もはや何十種類もの香水を嗅ぎ比べる必要はありません。わずか25分の診断を受けるだけで自分に最もふさわしい香水を選んでくれるのです。
YSL Scent-Sationではまず最初に個人の好みを調べるために8つの質問に回答します。そしてベースとなる複数のフレグランスの中から、その回答に応じて6つの香りが選択されます。それぞれには何の香りかは記載されておらず、先入観無しで香りを試すことになります。
次に専用のヘッドギアを装着します。このヘッドギアはオーストリアのブレイン・コンピュータ・インタフェース開発企業であるエモーティブ社と共同開発したもの。光沢感あるヘッドギアはIT製品というよりもヘアセットに使う何かしらのツールのようにも見えます。YSLのロゴも入った専用品となります。
ヘッドギアが正しく脳波を測定するためには正確な位置に装着する必要があります。そのためカウンセリングスタッフは特別な教育を受けているとのこと。ヘッドギアを接続したタブレットのアプリでは、センサーが正しく装着できたかを確認できます。なおこのカウンセリングシステムは店舗での展開が考えられているため、完全な自動化ではなくカウンセラーと対話もしながら香水選びを進めることができます。
ヘッドギアは軽量なので装着しても違和感はありませんでした。装着が終われば準備は完了です。
ヘッドギアをつけたままカウンセラーが手渡してくれるテスターの6つの香りを1つずつ嗅いでいきます。1つ1つの香りは自分で好きかなとか、この匂いは何の匂いだろう、などと頭の中ではいろいろな思考が流れます。それらの香りごとに異なる反応、すなわちその時の脳波を読み取り、個人の好みを科学的に診断してくれるわけです。嗅覚では判別しにくい自分の好みも、脳波ならより正確に判断してくれるでしょう。
そして6つの香りを嗅ぎ終わると解析が始まり、それぞれの香りに脳がどのように反応したかがグラフ化されます。このグラフが自分の香りの好みのパターンであり、自分だけのプロファイルとして保存しておくこともできます。
最終的にはそのプロファイルからイヴ・サンローランの香水3種類が「おすすめ」として提示されます。そのうち2つはプロファイルに最も適したもの。もう1つは別性またはユニセックス向けのもの。すなわち女性がこのカウンセリングを受けると2種類は自分にぴったりのもの、もう1種類は男性向けまたはユニセックス向けの香水で適したものがお勧めされるのです。
このシステムは性別関係なく利用でき、女性向け、男性向けのように性別にこだわらない香水をお勧めしてくれる点も優れていると言えます。店舗での香水選びの場合、すべての香りを試すことは難しいですし、自分とは別性の香水を選ぶこともしにくいでしょう。
好みのプロファイルは恋人や友人とシェアできますから、プレゼントに香水をもらうときの参考にもなります。またプロファイルを元にちょっと異なる香りの香水にチャレンジしてみる、といったこともできるでしょう。生活環境が変わったり年齢と共に好みが変わる場合もありますから、数年おきなど定期的にカウンセリングを受けるのも良さそうです。
常に好みの香りを教えてくれるのならイヴ・サンローランの香水を買おう、と思うユーザーも増えるでしょう。「香り」の判断に科学的なアプローチを取り入れたYSL Scent-Sation、今後は他のコスメ製品へのIT技術の応用が進むかもしれません。