作家の窪美澄氏が20日、小説『夜に星を放つ』で第167回直木賞を受賞し、同日、都内のホテルで会見に臨んだ。
窪氏は「実感があまりなくて、身体的な反応が感情より先走っていまして」と第一声。「汗が止まらず、飲んだ水がおいしいことおいしいこと。こんなにおいしいお水を飲んだのは生まれて初めてなんじゃないかというくらいでした。だから、今すごく嬉しいんだと思います」と喜びを表現した。
「頂いておいてなんなんですけど、直木賞を目標にしたことはあまりなかった」という窪氏。しかし、「候補に入れていただいてから、段々その気になっていく自分がちょっとおかしいというか……小説家としてはすみのほうで生きてきた人間なのに、今こうして会見で皆さんの前に立っているというのが冗談なんじゃないかなというような気がしています」と現在の心境を打ち明けた。
「“今後こうしていきたい”という抱負があれば、教えてください」と聞かれると、「私はデビューが遅咲きで、44歳で最初の本が出たので、残された時間が(デビューが早い)他の作家さんよりも短いんですよね。ですので、残された時間でいかに良質な作品を残すかというのが課題だと思っていますので、直木賞という賞を頂いて、その名に恥ずかしくないような作品を次々と書いていきたいと思っております」と意気込んだ。
また、窪氏は「私の人生はちょっと変わっている。44歳でデビューしましたが、昔の作家だったら心中して死んでいるような年齢。そこから小説家になることができて、あんまり神様とか信じてないんですけど、もしも神様みたいな人がいたら、『なかなか粋なことをやるじゃん!』って言いたいですね」としみじみと語った。
なお同会場には、『おいしいごはんが食べられますように』で第167回芥川賞を受賞した高瀬隼子氏も登壇。「本当に嬉しいんですけど、会場に来るまで全然実感がなくて。タクシーで担当編集者の方に「ウソかもしれない」と言いながら、ここまで来ました(笑)。まだびっくりしています」と率直な感想を語っていた。