作家の高瀬隼子氏が20日、小説『おいしいごはんが食べられますように』で第167回芥川賞を受賞し、同日、都内のホテルで会見に臨んだ。
高瀬氏は「本当に嬉しいです」と第一声。その一方で「本当に嬉しいんですけど、会場に来るまで全然実感がなくて。タクシーで担当編集者の方に「ウソかもしれない」と言いながら、ここまで来ました(笑)。まだびっくりしています」と率直な感想を述べた。
また、「小説家になるのが子どもの頃からの夢だったので、デビューできてすごく嬉しいんですけど、この世界で生き残っていきたい、書き続けたいという気持ちが強くある」と胸の内を明かしながら、「(芥川賞は)新人に与えられる賞。“ここから頑張れ!”という意味で受賞させていただいたと思うので、書き続けていきたい。頑張ります」と決意を新たにした。
「文学の世界を志す人たちへのメッセージはありますか?」と聞かれると、高瀬氏は「おこがましいといいますか、言えるような立場ではないんですけど」と前置きしながら、「私自身デビューするまで毎年新人賞に投稿していた身。その時の自分に声をかけるとして、『頑張れ』と言われても『頑張ってるし』と思いますし、かける言葉が見つからない(笑)」と回答。その上で「好きだったら書き続けてしまうと思うので、書き続けてしまう限り書き続けたらいいと思います。すみません、ちょっと偉そうな感じになってしまって……」と恐縮しつつ、メッセージを送った。
そして最後に、「小説家になるのがずっと夢だったんですけど、その夢の中に“芥川賞をとるぞ!”ということは思いついてもいなかったんですね。デビューしてもうすぐ3年になるのですが、芥川賞はすごすぎて自分とは無縁なものという感覚があったので、今もよく分からないというか、びっくりし続けています。でも、これをきっかけに読んでくださる方が増えると思うので、一番嬉しいのはそのことです。書いた本はやっぱり読まれたいと思っていますので、読んでくださる方が増えたら嬉しいなと思います」と締めくくった。
なお同会場には、『夜に星を放つ』で第167回直木賞を受賞した窪美澄氏も登壇。「実感があまりなくて、身体的な反応が感情より先走っていまして」「汗が止まらず、飲んだ水がおいしいことおいしいこと。こんなにおいしいお水を飲んだのは生まれて初めてなんじゃないかというくらいでした。だから、今すごく嬉しいんだと思います」と喜びを表現していた。