実験の結果、がんの増殖性・接着性ともに良好であることが確認され、これらの成分のすべてが、がん細胞株の生存・増殖に必須であることが考えられたと研究チームでは説明している。

また、肺がん・肝臓がん・子宮頸がん・乳がんなど、さまざまな臓器・組織由来のがん細胞株を用いたテストが行われたところ、DA-X培地はがん細胞種を選ばないユニバーサルな培地として利用可能であることが確認されたともしているほか、その分子メカニズムの解析から、DA-X培地が細胞膜のコレステロール量を最適化することで、良好な接着性・生存性をもたらしていることが判明したという。

  • 従来の無血清培地、DA-X培地においての各臓器・組織由来のがん細胞株の比較

    (左)従来の無血清培地、DA-X培地においての各臓器・組織由来のがん細胞株の比較。(右)DA-X培地コンディションは細胞膜のコレステロール量を最適化することで、さまざまながん細胞株の培養を可能にする (出所:近畿大学/NEWSCAST)

研究チームでは、この知見をもとに、子宮頸がん細胞株に対してコレステロール生合成阻害剤を添加したところ、細胞株が速やかにその接着性を失い、培養皿から剥離し、最終的にはほぼすべての細胞が細胞死を引き起こすことを確認したとする。この結果を踏まえると、今回の研究成果はコレステロールをターゲットとした抗がん剤の開発に対しても利用可能であると期待されるとするほか、まだ不明な点が多いがん細胞の増殖や生存における、コレステロールや脂質の役割を解明するための解析基盤となるものとしている。

なお、研究チームではこうしたがん研究のほか、環境負荷のない動物の骨格筋細胞を培養した食肉の代替品「培養肉」の生産技術を確立するためにも重要な技術になるとしており、今後は、そうした応用分野への活用も視野に入れた研究を進めていくとしている。