2022年7月19日に将棋棋士の藤井聡太竜王が二十歳の誕生日を迎えました。
藤井竜王は14歳でプロ入りすると、そこから負けなしの29連勝という記録を打ち立てて一躍時の人となりました。そこから二十歳となるまで、将棋界に新たな歴史を作り続けてきました。
15歳で全棋士参加棋戦優勝
16歳で新人王獲得
17歳で史上最年少タイトル獲得
18歳で史上最年少九段
19歳で史上最年少五冠達成
今から5年前、『平成29年版将棋年鑑2017』掲載のインタビューで「自分はどこまで行くと思うか」という質問に対して、藤井竜王は「できれば棋士として、羽生先生が七冠と取られた頃と同じレベルまで行きたい。中国の囲碁棋士で今、世界最強と言われる柯潔九段もまだ十代だし、自分も20歳までに一つのピークを作りたい」と答えています。
将棋界の最高峰のタイトルである竜王を含む五冠を達成したため、客観的には「ピークを作った」と言って間違いないと思いますが、自分に厳しい藤井竜王ですから、本人はこの結果でも満足していないかもしれません。
『令和4年版将棋年鑑2022』では二十歳を迎えるにあたって「今年二十歳になるということで、お酒は飲んでみたいですか?」という質問をしてみましたが、これに対する回答は藤井竜王らしい独特のものでした。
「積極的に飲みたいということはないんですけど、形上飲んではみる、と思います」
簡単に言ってしまえば「飲みたいわけではないが、いったん飲んでみる」ということなのですが、「形上飲んではみる」という表現が面白いです。
将棋の解説でも「形からしてここはこう指すもの」という表現を使います。自分の駒の配置を考えて、その手を指すのが自然なときに使用する言い回しです。
なので、「形上飲んではみる」というのは「お酒を飲むのが自然な年になったので、一回は飲んでみる」というニュアンスになるでしょうか。
インタビューのやり取りには続きがあります。
――お酒を飲むのが自然な席なら飲んでみる、ということでしょうか。
「いや、その前にお酒を飲むのが得意かどうか、好きかどうかがわからないので、それを確認したいという感じです」
藤井竜王、お酒に対しては慎重なようです。
10代で将棋の8つのタイトルのうちの5つを手中に収めた藤井竜王。
20代でどこまで高みに登り詰めるのでしょうか。
将棋の棋士のピークは20代と言われますが、これからの10年で藤井竜王がどんなパフォーマンスを見せてくれるのか、とても楽しみです。
島田修二(将棋情報局)