具体的には、立体視力が正常な参加者29名を対象に、右眼と左眼に提示する画像をわずかに横または縦にずらした形で見せるという実験が行われた。この実験で注目されたのが、画像のずれを打ち消すように自動的に、意図せずに眼が水平方向または垂直方向に動く現象だという。この眼の動きとさまざまな脳部位での活動との関連を調べることによって、両眼を異なる方向に動かすための脳内ネットワークを明らかにすることが目標とされた。

実験の結果、眼が動き始める前、つまり眼の動きの指令を作り出すタイミング(視覚映像の提示開始からおよそ100ミリ秒後)では、水平と垂直方向の眼の動きの間で、視覚のための脳部位、小脳、前頭部分の脳活動パターンに共通性があることが判明したとする一方で、眼が動くタイミング(視覚映像の提示からおよそ250ミリ秒後)では、映像に対して水平と垂直方向に眼を揃えるための脳内ネットワークは異なることを示唆する結果が得られたとする。

  • 両眼の間で異なる動きを作り出す脳内メカニズム

    両眼の間で異なる動きを作り出す脳内メカニズム。両眼でずれのある画像を見たとき、約100ミリ秒後に広範囲な脳活動が生じ、さらに約150ミリ秒後に眼が動く (出所:プレスリリースPDF)

なお研究チームでは今後、斜視など、両眼を揃えることに困難を持つ人々の脳活動データを測定することで、斜視矯正のための新たなリハビリテーションおよびデバイスの開発に役立つことが考えられるとしている。