日本マイクロソフトは2022年7月19日、日本国内向けにサブスクリプションサービス「Microsoft 365 Family」の提供を開始した。最大6人の家族が同時に最大5台までのデバイスで(インストールするデバイスは何台でも可)、Microsoft WordやMicrosoft Excelに代表されるMicrosoft 365 Appsや、各人が1TBのクラウドストレージを利用できる。家電量販店やECサイト、Microsoft Storeで購入可能だ。
パートナーや子どもがMicrosoft 365 Appsを使用する場合、従来は個々に「Microsoft 365 Personal」を契約する必要があった。当然、1人につき年間12,984円の費用が発生する(もっと安くなる場合もある)。2人なら年25,968円、3人なら年38,952円……。対して今回のMicrosoft 365 Familyは、年間18,400円で済む。著しくコストメリットが大きい。
Microsoft 365 Familyは特に新しいサービスではない。米Microsoftは現地時間2020年3月30日にサブスクリプションサービスの構成変更を発表し、同年4月21日から日本を除いた海外向けにMicrosoft 365 Familyの提供を開始している。当時、日本だけ除外された大きな理由は商用利用権の有無だ。Microsoftは、Microsoft 365 PersonalおよびMicrosoft 365 Familyを家庭向け製品に位置付け、ビジネス用途はMicrosoft 365 Business Standardなどの利用を推奨している。
ひるがえって日本は長年の利用形態から、「自宅でも会社でも利用できるOffice」が求められてきた。2014年10月から提供を開始した「Office 365 Solo(現Microsoft 365 Personal)」も、日本国内のみ商用利用を認めている。つまり「世界的に商用利用NGだが、日本だけOK」というズレが生じていた。このあたりをクリアできず、今に至ったのだろう。また、Microsoft OfficeをプリインストールしたPC本体が重用されるのも、日本独特の慣習だ。
Microsoft 365 Familyで気になる商用利用権だが、Microsoftは「Microsoft 365 Consumer SubscriptionのOfficeサービスおよびソフトウェア」にて、Microsoft 365 Personalについては「お客様のみ使用できる。Microsoftサービス規約に記載されている非商用目的の制限は、日本に居住するお客様、または日本に居住していたときにサービス/ソフトウェアに対するサブスクリプションを取得したお客様には適用されない」と、前述のズレを明確化している。だが、Microsoft 365 Familyに対しては利用可能人数とデバイス数しか明示していない(最終更新日が2020年4月のため、日本向けMicrosoft 365 Familyを考慮していない可能性はある)。
もうひとつ、商用利用権の有無を判断する材料となるのが価格差だ。米国では年間99.99ドル(2022年7月中旬時点の為替レートで約13,800円)だが、国内は前述のとおり年間18,400円。為替レートを考慮してもその差は大きい。Microsoftおよび日本マイクロソフトが商用利用OK/NGのズレを価格に反映させているという見方もできるだろう。いずれせよ、日本マイクロソフトによる説明があるまでは、「Office Personalは商用利用OK、ではFamilyは?」との状況が続く。
ただ現在は、消費者向けエディションの商用利用にこだわる時代でもない。企業内や官公庁内で利用するドキュメントは情報漏えいを未然に防ぐため、IRM(Information Rights Management)によって内容のコピーや転送を抑制している。昨今はリモートワークの機会も増えたこともあり、業務に利用するPCは会社が従業員に貸与し、セキュリティリスクからBYODを避ける企業も少なくない。あくまでも自宅PCはMicrosoft 365 PersonalまたはFamily、業務PCは企業がライセンス契約したMicrosoft 365 BusinessやMicrosoft 365 E3/E5を使用するのがシンプルである。
やや話題がそれたが、Microsoft 365 Familyが「お得」であることに変わりはない。筆者もMicrosoft 365 Personalのライセンス契約が8月で切れるため、Microsoft 365 Familyへ移行するか否か熟考したいと思っているところだ。