MicrosoftはWindows標準アプリ(アクセサリー)の改良に努めており、昨今はコマンドプロンプト(のちにWindowsターミナルへ移行)やメモ帳、ペイントなど枚挙に暇(いとま)がない。筆者はWindows標準アプリとは別のテキストエディターやフォトレタッチアプリを使用しているため、さほど気にしていないが、「社内資料やプレゼン資料作成の画像加工に『ペイント』が欠かせない」というユーザーも少なくないだろう。Microsoftは現地時間2022年7月13日にWindows 11 Insider Preview ビルド25158をリリースしているが、合わせてカメラアプリとメディアプレーヤーを更新した。
まず、カメラアプリは外観や設定ページのUIをWindows 11ライクに変更し、紙資料やホワイトボードの読み取りに対応している。このあたりの機能はMicrosoft Lensで培った技術を実装したのだろう。二次元コードやバーコードのスキャン機能も備えた。ただし、画面右側で写真や動画など撮影モードを切り替えるあたり、アプリ自身の使い勝手を向上させるには至っていない。
UIは今後改善すると思われるが、果たしてカメラアプリの利用者は多いのだろうか。大半のユーザーは写真や動画の撮影にはスマートフォンを使っていると思われるので、PCとWindows標準のカメラアプリで撮影する場面が想像できない。ただ、ノートPCやWindowsタブレットでカメラアプリを使い、紙書類やホワイトボードの内容を取り込んだり、別PCに表示された二次元コードをPCで読み取ってMicrosoft Edgeでアクセスしたり――といった使い方には有用だ。
次はメディアプレーヤー。Microsoftは2022年3月の時点で、音楽CDの再生機能をメディアプレーヤーのバージョン11.2202.42.0でサポートしているが、バージョン11.2206.30.0はAAC/WMA/FLAC/ALAC形式でのCD取り込み機能を備えた。
今のサブスクリプション時代でも海外の音楽CD市場は活発なのかと調べてみると、一定のシェアを残している。IFPI(国際レコード・ビデオ製作者連盟)が発表した「Global Music Report 2022」によれば、2021年におけるグローバル音楽収入全体の19.2%をPhysical(レコードやCD)が占めていた。ちなみにサブスクリプションサービスは65%だ。
筆者はだいぶ前に音楽CDを処分し、PCの光学ドライブもすべて取り外している。検証用にポータブルDVDドライブは用意しているものの、利用する機会は年に1回あるかないか。音楽も自宅のNASに格納したFLACファイルをfoobar2000で楽しむ程度だ。
音楽CDの再生と取り込み機能があれば便利なのは理解できるが、アプリの肥大化という問題もある。昔のWindows Media Playerもバージョン6.4までは小気味よく動作したが、バージョン7以降は機能の肥大化(だけが理由ではないにしろ)によってサクサク感は低下した。また、動画ファイルの既定関連付けを「映画&テレビ」からメディアプレーヤーに変更し、メディア関連機能を一カ所に集約させようとしている点も、好ましくないと感じるユーザーはいるだろう。
カメラアプリもメディアプレーヤーもメインストリームの標準アプリとはいえないものの、何かのときにあると便利なのは確かだ。誰にでも分かりやすく、シンプルな機能で構成されることを期待したい。