現生トカゲ類と比較し竜脚類恐竜の食性を解明
久保氏によると、今回の分析では、歯の化石表面から検出された摩耗痕について、切断レベル差などさまざまなパラメータを用いデータ化。このうち約77%を占める傷の深さを示したパラメータと、約17%の傷の密度を示したパラメータについて、主成分として分析を行ったとのことだ。
また、同様の調査を現生する数種類のトカゲでも実施。卵食や軟体動物食、地上植物食など、その食性ごとに分類の上データの抽出を行い、竜脚類恐竜の化石データと比較した。
これらの分析の結果、久慈に生息した竜脚類の食物は、貝の殻よりも柔らかく卵の殻や肉よりも硬いことが判明し、植物を食べていたという推定が妥当だと示されたと結論付けたという。
また、竜脚類の化石が発掘された地層である玉川層の花粉化石の解析から、久慈の竜脚類が食べていた植物はシダ植物や裸子植物だった可能性が高いとしている。
併せて久保氏は、竜脚類恐竜化石は現生する植物食のトカゲに比べ傷の密度が高かったことから、現生のトカゲ類に比べ食物を噛む頻度が高かった可能性を示唆したが、これについては現時点で断言することはできないとした。
久慈における動物相の食物網を復元へ
久保氏によると、レーザ顕微鏡を用いたマイクロウェアの3D検出は比較的新しい手法で、哺乳類に関する調査には利用されているものの、爬虫類の調査への活用例は世界中でも少ないという。
久保氏を含むチームは、ワニなどの生物についても同手法での研究を進めすでに論文作成に入っているとのことで、「今後は、久慈層群で発掘されたほかの分類群の歯化石についても分析を進め、食性の復元を行う。将来的には、久慈における当時の動物相全体について、食物網の復元を目指している」と語った。
加えて、今回の研究を獣脚類(肉食恐竜)や鳥脚類(発達した顎や歯をもつ植物食恐竜)にも適用し、恐竜全体の食性進化について解明を進めるとのことだ。
なお、今回の研究で用いられた竜脚類恐竜の歯の化石8本は、7月17日より久慈琥珀博物館にて一般公開される予定だという。